メンバーとの集合写真(中央筆者)

私の居住する大観寺は南米最大の都市、サンパウロ市から北東に車で2時間ほどのペドラベラ市の山間にあります。また、近隣の保養地であるブラガンサパウリスタ市の中心部にはカーザ大観寺(カーザはポルトガル語で家、集う場所の意味)があり、街に住む人が参禅に訪れます。ここでは大観寺でのSDGsの活動についてご紹介します。

まず今回のメインテーマである水についてであります。ブラジルでは天然の美味しい水が飲めるところもありますが、ほとんどの場所では蛇口をひねって出る水道水を飲むことはせず、飲料水を購入することが一般的です。しかし、綺麗な飲料水を購入することが難しい方々がいることも事実であり、衛生的な環境のトイレが無い地域もあります。すべての方に安全な水やトイレを今すぐに行き渡らすことは実際にはとても困難なことかもしれません。このような状況下で、私たちが居住する寺院では、水を循環させる持続可能なシステムを構築しており、このようなシステムが長い目で見て水質向上や、衛生的なトイレの設置に寄与すると考えております。

大観寺外観

大観寺では、乾季の際の水の利用性を高めるため、斜面に沿って雨水を貯める池をつくり、土壌への浸透率を高め、乾季の際の水の利用性を高めました。また、お寺に通う人々が使用する水をろ過・浄化・貯水するシステムを設置しております。敷地内では、地下水を汚染する可能性のある農薬や化学肥料は使用していないほか、トイレの水を処理するために、人間の排泄物をバイオガスと肥料に変換する装置を設置しました。そして、現在5万リットルのきれいな水を貯めるために大きな貯水槽を建設しています。その結果、使用されるすべての水は施設内で処理され、循環されます。また、水力を利用して、すべての施設で消費されるきれいな水を汲み上げ、太陽光エネルギーを使用してシャワーや温水を作り出しています。現在、電気については公共サービスを使用していますが、いずれ太陽エネルギーの利用を拡大して、寺院所有地に発電設備を備え付ける予定です。

また、荒廃した土壌に植林し、有機農業を実践することで、土壌の侵食を抑えています。この30年以上の環境保全活動の間に、鳥、哺乳類、昆虫など多くの動植物がこの地に戻り、あらゆる種類の野生動物の観察が以前に比べ頻繁に見られるようになりました。

作務で土壁を塗るメンバー

仏のみ教えの下での環境に配慮した建築、生態学的農業、造園に関して近年行われたすべての活動は、平和と調和の文化を広めるための素晴らしい環境を寺院にもたらしてくれています。例えば、本堂、坐禅堂、衆寮、典座寮などの伽藍整備の際には、敷地内または周辺地域に自生する竹、ユーカリ、石、土、藁などを原材料として使用し、土壁の手法や先住民の手法(パウアピケ)を参考に、環境への影響が少ない持続可能な手法を採用しました。また建設作業は、地域の専門家、サンガおよびボランティアを交えて行いました。

そして、定期的に行う摂心での修行を通して、自分の心と身体へのよりよいケアの方法である坐禅の正しい姿勢と呼吸を教えています。摂心中に心をととのえることは、自分の身体、呼吸、習慣などにもっと深く意識を向けることになります。この気づきは、生活習慣を改善する大切なきっかけでもあり、時間が経過するとともに、よりよい心の健康に導きます。そして隣接する農園では、永続可能な循環型の農業をもとに、人と自然が共に豊かになるような関係性を築いていくためのデザイン手法である、パーマカルチャーと有機農業を取り入れており、トウモロコシや根菜、柑橘類、バナナ、アボカド、ライチ、柿、マカダミアナッツなどの果樹園に加えて、さまざまな野菜、品質の高い独自のオーガニックコーヒーも生産しています。摂心の際など参加人数の多いときには、地産地消を基本にして、近所の家族経営の農家や地元の市場から品物を購入することで、輸送によるパッケージングの使用や汚染物質の排出を減らしています。こうして私たちは料理の品質にも細心の注意を払い、私たちの農場でとれた食物を利用し、栄養価が高くバランスのとれた精進料理を提供することができます。

メンバーに作務の仕方を指導する筆者(右)

今、私たちは消費量や使用するエネルギー量の削減を早急に検討する必要、つまりSDGsの活動をもっと進めていく必要があります。これは、よりシンプルでより充実した生活を提唱する禅の教えと一致しています。私たちが大観寺で実践することは、適切な量を適当な方法で入手し、消費することを通して地球の天然資源への負荷を軽減することです。すべての人の利益のために考えて、私たちは今生きているこの地域で、私たち一人ひとりが自身のやるべきことを果たします。 雄大な自然と調和した生活と、伝統的な曹洞禅の修行生活を通して、大観寺を訪れる方のみだけではなく、すべての方に新しい視点を提供し、人生に彩りを添えられるよう誓願し、今後も活動していきたいと考えております。

 

南アメリカ国際布教師 スターヘル圓成

 

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