宗務総長談話(ミャンマー政変にともなう事態を憂慮する)

2021.04.01

令和3年4月1日

ミャンマー政変にともなう事態を憂慮する

各種の報道により周知のとおり、本年2月1日の未明に、ミャンマー連邦共和国において、国軍クーデターによる政変が発生しました。

多くのミャンマー国民は、この政変の発生後、即座に、これまでの同国の民主化プロセスに逆行する事態に対し敢然と反対の声をあげ、一般市民のほか公務員や宗教者など幅広い層の参加する抗議活動が各地において始まりました。

国軍は当初から情報統制や通信遮断などによる抗議活動の抑え込みをおこなっておりましたが、2月11日頃からは、殺傷力のある武器の使用を含んだ実力行使による抗議活動の制圧を本格化しております。しかしながら国民のクーデターへの反対の声は止むことはなく、これと相俟って政権による暴力的な弾圧の度合いは日ごとに強まっており、一部では暴力の応酬にも発展しております。

その結果、多くの人が死傷し、多数の拘束者が発生しております。3月末までに死者は530名を超えており、治安当局に拘束された人は累計で2700名を超えたと伝えられております。死傷者の中には子どもたちも少なからず含まれていたとの報告があります。

また、クーデター発生以降、国内の食料品や燃料の価格が急激に上昇しており、低所得者・貧困者の生活が困窮し危機に瀕し始めています。

こうした混乱が続くことで大量の難民が発生するという懸念もあります。すでに、食料入手の困難や治安の悪化などのために、ヤンゴンから地方へ脱出する市民が相当数発生しております。

私たちは、ミャンマー政変にともなう一連の事態の報に接して、深く憂慮しております。世界にまた新たな惨劇が引き起こされたことに悲涙を抑えることができません。

すべての生きとし生けるものにとって、命は愛おしく、かけがえのないものであります。生命の尊厳はいかなる人においても絶対に平等であり、いかなる理由によっても「殺してよい命」や「殺されてもかまわない命」は存在しません。すべての生きとし生けるものは幸福、安楽を求めて生きております。

私たちは、この生命の絶対的な尊厳と幸福を追求し、慈悲・自他不害の実践を説く仏教の立場から、人間の生存を脅かすであろうすべての行為に反対します。そして、あらゆる人びとに対して、その立場の如何にかかわらず、すべての暴力的・破壊的な行為を直ちに止めるよう求めます。同時に、多くのミャンマー国民が望むかたちで、かつ平和的な方法で、とにかく一日も早くこの事態が収拾され、ミャンマーに平穏と安寧が取り戻されることを切に願っております。

併せて、今もなお世界の各地において発生している紛争やテロなど、あらゆる暴力や破壊が根絶され、すべての人びとが安らかに暮らせる日の訪れることを祈念してやみません。


曹洞宗宗務庁     
宗務総長 鬼生田 俊英

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