黒豆柔煮 | 紅白網代 | |
黒豆霙和え | 白銀杏、占地茸、赤蕪、三葉、 針柚子、大根卸し |
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黒豆鹿の子 | 長芋、金箔 |
除夜の鐘を聞き、新年を迎え、「おめでとうございます」と言ってお屠蘇を家族で飲み交わす。そしてお節料理を食べる。これが昔ながらの、日本の良きお正月です。
しかしながら、このごろの人たちは、お節料理など作るどころか、デパートなどで買ってくるのはいい方で、多くはお節料理には見向きもせず、正月早々ファミリーレストランでお食事、というのが流行(はやり)だそうです。まさに外食産業花盛りという観がありますが、日本人としては、何とも少々情けないような気もします。
ところで、先日ある方にお聞きしたのですが、「外食」に対して「内食」というのがあるそうです。これは、家庭で料理を作り、家庭で盛り付けていただくという、今まででは、ごくごく当たり前のことと思われていたことです。今日では、若い奥さまがたも仕事を持っていたり、子育てに手が掛かり、なかなか家事、特に炊事に手が回らないようで、家庭で料理を作るということがおろそかになっているという現状を背景に、生まれてきた言葉なのかもしれません。
また、「外から買ってきて、家で食べる」という、外食と内食の間を取って「中食」といわれるものもあるそうで、そういえばデパート、スーパーマーケット、コンビニエンスストアーと、あらゆるところでお惣菜を売っていますよね。特にデパートの食品売り場に行きますと、各有名料理店のお惣莱がズラーツと並べられ、しかもグラム単位で買えるのです。有名料理店の味が家庭で気軽に食べられるとあって、大変な人気商品となっているそうです。
さて、本題の黒豆に戻りましょう。
まずは豆の戻し方ですが、米のとぎ汁に漬け込む、あるいは水から戻し、その中に重曹を入れたり、錆びた鉄のかけらを入れたり、灰汁(あく)を入れたりと、いろいろな方法があるようですが、基本的にはどのような方法でも、一昼夜漬け込めば完全に戻るでしよう。この時点で皮が破れていたり、割れてしまっている豆を取り除きます。
良い豆だけを漬けた汁とともに、鉄鍋に移し替えます。これは、鉄鍋から溶け出す鉄分によって、豆の黒さが増すからです。昔は「おはぐろ」や、還元鉄などを使ったりもしましたが、あまり感心できません。黒さを出さずに「ぶどう豆」として使用しても、構わないと思います。
さて鉄鍋に移し替えたら、今度は火に掛けます。弱火で約二昼夜くらい、火を止めずにゆっくりと、時間をかけて柔らかく戻します。途中で豆が踊らないように火加減を調節したり、湯の量が少なくなったら、差し水ならぬ差し湯をしたりと、二昼夜、それこそ寝ずに番をしなければなりません。柔らかくなった目安として、昔は壁や天井に豆をぶつけて、ピタッとくっついたら良しとされていました。
豆が柔らかくなったら、次にこれをよく水でさらし、また火に掛け、この作業を数回繰り返します。余計な灰汁や鉄分、重曹を取り除き、美しい豆にします。
最後に砂糖を入れて仕上げますが、一度にボンと放り込むと、皮にシワができてしまうので、徐々に加えることが大切です。
薄蜜、中蜜、濃蜜と漬け替え、三日間くらいかける方法や、いったん水気を切るために蒸して蜜に漬け込んだりと、いろいろあると思いますが、最終的には水四リットルに対し、砂糖一キログラムくらいの蜜に漬け込めば、美味しい黒豆ができあがると思います。
さて、写真の黒豆ですが、ひとつは普通に炊いた黒豆です。本来は、紅白のチョロギを散らしますが、あえて紅白に編んだ大根と人参の網代(あじろ)を散らしました。
もう一品は、黒豆のみぞれ和えです。大根卸しに薄味を付け、色好く茄でた銀杏、それに占地茸と赤蕪が入っています。彩りも良く、サッパリとした逸品です。
それと黒豆の鹿の子です。
まず長芋の皮をむき、いったん蒸してから裏漉(うらご)しをします。鍋に移し替え、塩少々と砂糖にて味を付け、良く練り上げて耳たぶくらいの硬さになるまで火を通します。
この長芋を芯にして、周りに黒豆を付けます。あまり強く押しつけると、豆がつぶれてしまいますので、ラップなどで軽く押しながら丸く取ると良いでしょう。
お茶受けなどにも合うと思いますし、デザート、料理の中の一品にも使えます。