菊巻寿し | 大葉、とうもろこし、 白板昆布、 酢取り生姜 |
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干菊と松茸の浸し | さき松茸、切り胡麻、 美味出汁 |
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干菊と豆腐の挟み揚げ | 舞茸、松の実、 浅草海苔 |
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今月9日は、重陽の節句で、菊の節句ともいいます。平安時代には菊の花を酒盃に浮かべ、延寿を祝ったとされますが、今月は、この菊を使ったお料理を紹介します。
そもそも菊は、冷涼な気候を好み、日本ではそのほとんどが東北地方で栽培されており、この季節になりますと、生の食用菊が店頭に並びます。色も黄色だけでなく、「もってのほか」「かきのもと」などと称される紫色の菊も出回り、黄菊と合わせて料理に用いると変化に富んだ料理が楽しめますが、今回は干菊を使ってみます。
干菊は、別名「きくのり」といい、菊の花びらを蒸して乾燥させたもので、海苔のようにシート状なって市販されています。長期保存がきくので、季節に関係なく利用できます。また、日本料理では、刺し身のつまなどに使用するのが一般的です。
さて干菊の戻し方ですが、いたって簡単で、お湯に少量の酢を入れ、そのままお湯の中に入れて解きほぐし、冷水に落として軽くしぼれば完了です。
さて一品目は、菊のお寿司を紹介します。
まず、ご飯を炊き、少々甘めの酢と合わせます。そして、茄でるか、あるいは蒸して一粒ずつほぐしたトウモロコシと石づきをとってバラして茄で、軽く下味をつけてすし酢でサッと洗い、水気を取り除いたシメジを、先ほどのすし飯の中に入れて混ぜ合わせます。
酢焚きした白板昆布を下に敷き、戻して三杯酢に漬け込んでおいた干菊をよくしぼって水気を切り、ていねいに白板昆布の上に並べます。
そして、先ほどのすし飯をその上にのせて、芯にして巻きます。海苔巻きのように巻いて、食べやすい大きさに切り出し、酢取った生姜を添えてお出しします。
次の料理は、松茸と干菊の浸しです。
松茸は値段が張りますので、きのこ類であればどんなものでもけっこうです。
松茸の場合は、石づきを取り、ゴミをぬるま湯で取り除いて包丁で切らず、両手で裂くようにしてください。この方が香りも味も歯ごたえも良くなります。
少なめの昆布出し汁を用意し、その中にさっと入れ、火を通します。あまり茄で過ぎると歯ごたえがなくなり、おいしさが半減しますので注意してください。この昆布出し汁を利用して、塩、淡口醤油、少量のみりんにて味をつけます。これもやはり、松茸の香りや食感が損なわれないようになるべく薄味の方がいいでしょう。
この汁を冷水にて冷やし、冷えたらその中に干菊の戻して水気をしぼったものと、先ほどの松茸を入れます。菊と松茸をよく混ぜ合わせ、おいしい汁をたっぷりと含ませ、最後に軽く摺り潰した白胡麻を上からパラパラと振ります。この中に紫の「もってのほか」を入れると色合いもよく、なお一層おいしさが際立ちます。
三品目は、干菊と豆腐の包み揚げです。
豆腐は、がんもどきや擬製豆腐を作るときと同じように、よく水気を切り、山芋の卸したものをつなぎに入れ、塩、砂糖、淡口醤油、濃口醤油にて味をつけます。
淡口醤油と濃口醤油を併用するときがたびたびあります。料理の素材に色があまりつかないのが淡口醤油ですが、少々塩分が強く旨味に欠けます。逆に色はつきますが、コクと旨味のあるのが、濃口醤油です。ですから素材に合わせ、色合いを見て、両方の醤油を使うのがコツなのです。
干菊を戻したものを、醤油洗いします。これは、素材に軽く味をつけておく作業です。こうすることにより、その素材が水っぽかったり、全然味がなかったりすることを防ぐわけです。もちろんあまり強い味にしてはいけませんので、干菊の場合はほんの2、3滴の醤油を落として絡ませておきます。要は軽く薄い味をつけておくことが必要だということです。
醤油洗いしてよく絞った菊に、先ほど卸した山芋を少しだけ絡ませます。
海苔の上に豆腐をよくならして約1cm~1.5cmくらいの厚さに一文字できれいにのせます。その上に干菊をまんべんなくのせ、さらにその上から豆腐をのせ、きれいにならします。両側が豆腐、真ん中が干菊の羊羹状のものを作ります。海苔でクルリと巻き、天ぷらの少々薄めの衣で棒状のまま揚げます。火が通ったら切り出して切り口を見せて盛りつけ、舞茸の揚げたものを添えて召し上がっていただきます。