宗務総長談話(東日本大震災から10年)


令和3年3月1日

東日本大震災から10年

東日本大震災の発生よりまもなく10年が経過します。この節目の年に当たり、大震災により尊い命を失われたすべての方々へ衷心より哀悼の誠を奉げます。

東日本大震災は、巨大津波の発生、そして、東京電力福島第一原発の事故など、これまで私たちが経験したことのない未知の複合災害でした。この大震災の発生により、突然、大切な肉親を奪われた方々、希望に満ちた将来の道を閉ざされた方々、その10年間の心情をお察しするとき、改めて、やるせなさ、切なさを感じるとともに、その悲惨さを思うと胸が痛みます。

2月13日午後11時8分ごろに、福島県沖を震源とする最大震度6強を観測する地震が発生しました。この地震は東北地方を中心に広範囲にわたり、10年前の大震災を彷彿とさせるものでありました。東日本大震災から10年の節目を前にこのような地震に見舞われたことは、あの悲劇を絶対に忘れてはならないと改めて私たちの心に刻む出来事であります。この度の地震を含め大震災により被災された地域の皆さまにおかれては、1日も早く日常の生活を取り戻されることを祈念いたします。

また、昨年より新型コロナウイルス感染症が猛威をふるっております。

世界中の人々が経験したことのない感染症の脅威は、被災地にも大きな影響を及ぼしています。旅行等の自粛により、観光客は激減し、復興に欠かせない経済再生に大きな打撃を与え続けています。

私の地元、福島県内の旅館では、この10年、原発事故の風評被害が続く中、関係者の弛まない努力が続けられてきました。その努力があって、客数が震災前の半分まで回復していたそうですが、コロナ禍に見舞われ、大変苦しんで居られるとのことです。

大震災、新型コロナウイルス感染症により、私たちが今、更に一層重く思うことは、何よりも命の大切さであり、人と人との温かなつながりの意義であります。

お釈迦さまは、人間の苦悩の解決を求め修行に励まれ、菩提樹下での坐禅瞑想により迷いの世界からお悟りを開かれ、仏の智慧により人生を明るく照らし、慈悲行により、他者と手を取り合い歩むことの教えを示されました。私たちは、この仏の智慧と慈悲をはたらかせ、今ある生命の尊さを輝かせてまいらなければなりません。

誰しもが安心して生きられる世界の実現を目指し、「竿頭の先に未来をひらく」をスローガンとして、曹洞宗はこれからも力強く歩みを進めてまいります。


曹洞宗宗務庁     
宗務総長 鬼生田 俊英

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