【人権フォーラム】過去帳管理の徹底を


1979(昭和54)年にアメリカで開催された「第3回世界宗教者平和会議」における当時の宗務総長による差別発言事件を契機として、曹洞宗では差別解消と人権確立に向けた取り組みが始まりました。
当時、部落解放同盟からその発言に関する抗議書・質問状が届き、確認・糾弾会が開かれる中で、発言の差別性だけでなく、宗門に存在する「差別戒名・差別図書・身元調査」等の問題が明らかとなったのです。
宗門には、被差別部落の檀信徒等に差別戒名を授与してきた歴史的事実があり、その戒名は過去帳や墓石に記載されています。また、故人の死因や職業、古い時代の身分等、人権や秘密に関する事項が記載されている過去帳もあり、そうした情報が身元調査に利用されてきました。


過去帳が身元調査に使われ、人権侵害を助長してきたことを深く反省した宗門は、1981(昭和56)年に全国寺院に向けて「『過去帳』等の管理についての指示要望」を出して、厳重管理をお願いしてきました。以降、教区人権学習会や現職研修会等において、機会あるごとに学習を続けて来たことは周知のことであります。
しかしながら残念なことに、本年1月に北信越管区内の宗門寺院において、過去帳に類する資料の開示を原因とする事案が惹起されました。
歴史の検証として新聞で組まれた特集に、位牌・戒名・墓所、墓石に関する記事が大きく掲載されてしまったのです。宗門の今までの取り組みに反したものとなってしまいました。当該地域において、歴史検証を行う気運が高まっていた時期であったことから、地元宗務所も改めて管内寺院に対して様々な働きかけをされていただけに、残念でなりません。
新聞の記事を確認した宗務所によって、速やかなる状況の把握、関係者への聴取、また今後どのようにこの事例を人権施策へ生かしていくのかといった検討がなされました。人権擁護推進本部としても、宗務所と協力して本件についての対応を進めております。


過去帳に記載されている内容は、思想、信条に関わるものですので、個人情報となります。個人情報の中でも、思想・信条・宗教・人種・民族・出生地・本籍地や病歴等、社会的差別の原因となりうる情報は「センシティブ(機微)情報」と呼ばれ、特に慎重な取り扱いをしなければなりません。その責任は住職にありますので、厳重に管理する責務があることを自覚していただきたいと思います。
また、今でも、「生まれ」で人を忌避し排除しようとする差別意識を持っている人がいて、結婚や就職に際して相手のことを調べ上げる身元調査が行われています。
各種法律によって個人情報の保護が進む中で、調査会社が目を付けたのが、個人情報の集積ともいえる過去帳でした。過去帳の情報を引き出そうと調査員が寺院を訪ねてくることがあるのですが、その手口はますます巧妙になっております。また、学術調査や税務調査等の名目で過去帳の開示を求められたりすることもあります。
法律によっても、宗教者には守秘義務が課せられておりますが、それ以前に、「差別は許さない」という姿勢で情報管理に努めることが、我々に求められていますし、過去帳の管理徹底は、寺院が取り組むべき人権擁護の基本原則と言えます。
次頁に改めて「過去帳等の取扱いの基本原則」を掲載いたしますので、寺院各位におかれましては周知徹底をお願いいたします。
また、関連する資料等もございますので、お気軽にお問い合わせください。

※お問い合わせ
 曹洞宗人権擁護推進本部
 ℡03-3454-3546

(人権擁護推進本部記)

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