【International】海外寺院活動紹介 ワイパフ大陽寺

2019.11.07
ワイパフ大陽寺のメンバーさんと(中央筆者)

家族と共にハワイの地に降り立ったのが、平成20(2008)年12月。当時娘は5歳、息子は3歳でした。これからハワイでどんな生活が始まるのか、どのようなことができるか想像をしながら、曹洞宗ハワイ別院正法寺に国際布教師として赴任しましたことを今でも鮮明に覚えています。
ハワイ国際布教総監であられる駒形宗彦老師並びにメンバー(お檀家)さまの元、約10年間別院正法寺でお世話になりました。


それから月日は流れ、ご縁をいただきワイパフ松嶽山大陽寺に平成30(2018)年4月に就任し、1年以上が過ぎました。ワイパフ大陽寺はオアフ島のエワ地区にあり、元は砂糖のプランテーションがある町でした。とても暑く比較的雨の少ない地域です。
ワイパフとは自噴泉の名前であり、ハワイ語で「ワイ」は「水」、「パフ」は「破裂」あるいは「迸り出る」を意味します。ハワイ先住民は地面から湧き出る冷たく清澄な水を喜び、この泉をワイパフと名付けたと言われております。西洋文化がハワイに入ってくる以前は、ハワイの人々はワイパフをオアフ島の首都と見なしていたそうです。

梅花講の練習

オアフ島のワイキキからワイパフを目指して西へ車を走らせていけば、一般的に想像されるハワイ、ワイキキやアラモアナとは一変した風景が目に入ります。ワイパフストリートにある大陽寺正門から入ると、まず目にするのが大きな三角形型の建物、そして屋根の一番上には相輪が輝き、正門の左手には開山である河原仙英師の慰霊碑が立てられております。さらに太平洋戦争で亡くなった日系人兵の大きな慰霊碑が並んでいます。
ワイパフ大陽寺は、明治36年3月(1903年)河原仙英師(広島県龍雲寺)が両大本山派遣同胞慰問使としてワイパフ耕地に入り、仮布教所を設けて、ここで布教をしたのが始まりです。曹洞宗ハワイ開教の始まりのお寺でもあり、また別院に次いで檀家数の多いお寺です。以前は、現在の大陽寺から数マイル離れた場所にあり、お寺の周りには住宅が沢山あったそうです。現在の地に移転したのは、昭和48(1973)年のことです。
ハワイの仏教寺院において、お寺は宗教儀礼をする場だけではなく、コミュニケーションをとる場、社交の場として認識されています。そして、さまざまな世代の家族から成り立っており、日本やアメリカ本土から来ている家族や仏教徒がその家族と共にお寺の行事に参加しています。

 

お唱えの様子

現在、ワイパフ婦人会は毎週月曜日にワークショップを開いており、ミシン、手縫い、キルト、毛糸などを使ったクラフト、物作りをしており、盆踊りやバザーのときにそれらを売り、お寺の為の寄付金集めをします。またバザーのときにはワイパフ独自の漬物や巻き寿司、ひじき寿司ご飯、混ぜご飯なども販売します。そのレシピは婦人会の中で代々受け継がれています。
その他の活動として、坐禅、ヨガ、柔道、太鼓、盆踊りのやぐら組、盆踊り稽古会、ウクレレ、書道などがあります。太鼓は、2019年2月に私の妻である郁子が別院での経験を生かし「大陽寺太鼓」を創立しました。このような日本文化に関連した活動は日系人だけではなくハワイの人々にも親しまれています。
お寺の活動として、坐禅以外に私は妻と共に梅花講に特に力を入れています。梅花講の練習は毎週水曜日に行われており、朝九時より梅花講員の方々のお唱えとともに鐘の音が本堂から聞こえてきます。ワイパフ梅花講は、葬儀に参加することも少なくありません。毎月のサンデーサービス、観音講でもお唱えします。
また、観音講の後にはランチを出します。妻と家族を中心にメニューを決め、婦人会のメンバーやお寺のボランティアが買い出しや調理を行のソーシャルホールでいただきます。

家族で

食事が始まる前には参加者全員が合掌をして、擎鉢之偈を皆でお唱えします。また、月に一度、お寺の「掃除の日」があります。本堂、納骨堂、トイレ、ソーシャルホール、教室、お寺周りの草抜き、芝刈り、ゴミ拾いなど皆でお寺を綺麗にしています。
ハワイでは6月後半から8月末にかけて各お寺で盆踊りが開催されます。
ここ大陽寺では7月に施食会を4日間、8月には、多くのメンバーの方々、ボランティアの方々とお寺の一大イベントとして「盆ダンス」を2日間行います。やぐらを中心に着物や法被を着た沢山の人たちが踊り、お寺で作ったスパムむすび、焼きそば、チリドッグ、テリバーガー、かき氷、アンダギなどの食べ物を楽しみます。この光景を見れば、いかに国際布教師や移民の方々がハワイの文化に日本の文化を融合しながら多くの苦労とともに作い、お寺り上げてきたかを垣間見ることができると思います。
私としては、ここワイパフ大陽寺にて、別院で過ごした10年間の経験を元に、今後の大陽寺の発展と、9年後の大陽寺125周年に向け、メンバーの方々、地域の皆さま、私の家族とともに貢献できるよう精進していきたいと思います。 合掌

 

(記:ハワイ国際布教師 石井怜慧)

 

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