【International】南米特派布教師巡回報告


佛心寺での説法(中央筆者)

令和元年11月20日から12月3日の日程で、ブラジル及びパラグアイの南米特派布教巡回を実施した。平成29年、30年は海外巡回を休止しており、3年ぶりの実施であった。

20日、成田空港を発ってアエロメヒコ航空で12時間かけメキシコシティに到着、6時間の時間調整の後、乗り継いでさらに9時間45分かけてブラジル、サンパウロ空港へ到着。約28時間の長旅となった。

時差は12時間、まさに地球の反対側に降り立ったということになる。

各地への日本からの移民の歴史は、ブラジルにおいては笠戸丸による第一次移民から今年で111年、パラグアイにおいては83年が経過している。

訪問してみて、今でこそ飛行機で時間単位の移動に過ぎないが、当時は一ヵ月以上の船旅であったわけで、そのことだけでも移民の方々のご苦労が感じられる。

拓恩寺の首座法戦式

今回の南米巡回の内容は、大きな特別法要においての説教が2回あり、その一つは、22日から24日に行われた両大本山南米別院佛心寺創立並びに南アメリカ国際布教総監部開設60周年記念法要の中で、もう一つは、25日から27日に行われたパラグアイ初の仏教寺院であるイグアス市拓恩寺の晋山結制においてであった。

どちらも宗務庁から教化部長老師、總持寺監院老師、永平寺副監院老師、他関係諸老師方が列席され、それぞれ3日間にわたって執り行われた大法要であった。特に60周年記念法要には日本から60名の宗侶、南米各地から10名の国際布教師、総勢70名が随喜した。

印象深かったのは、拓恩寺の首座法戦式であった。

首座を務めたのは、采川南米総監老師の得度を受けた日系ブラジル人の和田マルセロ満聖さんで、ほとんど日本語が話せないため、挙則も問答もポルトガル語で行われたのだが、その問答がすべて即問即答、いわばアドリブであった。

後から、南米の法戦式においてはそれが通常であるとうかがった。他の国際布教道場でも同様なのかと思うが、日本でのすべて事前に決められている問答しか経験がないため大変新鮮に感じられた。

晋山開堂も首座法戦式も、通過儀礼的な意味合いが強くなってしまっている日本の現状に、法要儀礼の布教的あり方として示唆を与えるのではないかと率直に感じられた。

佛心寺でのアパレシーダ観音無遮施食会

パラグアイからブラジルに戻った28日には、佛心寺で「アパレシーダ(聖母)観音無遮施食会」が行われた。

采川現総監老師が赴任してから、毎月最終木曜日の昼に行われているもので、佛心寺婦人部のメンバー約30名が食材の調達から調理、配食までを担当して約300食のカレーライスを地域の人々に振舞う、いわゆる炊き出しである。

「アパレシーダ」とは、当地において信仰される聖母マリアを指す言葉で、それになぞらえ、黒い観音像を本尊として営まれる法要であった。

昼の12時梵鐘を合図に門が開かれ、参加者は行列を作って待っている間に願いごとを記入した紙を係に渡し、本堂の観音像に合掌、焼香してからカレーライスを受け取りその場で食べる。その間、祈願文の読み込みを含めて1時間読経が続くという法要だった。読経中に食事をするという光景が印象的だった。

人種や宗教を超え、障害者や生活困窮者、学生や老人、子どもまで、「無遮」の名のとおり、分け隔てなく食事が振舞われる「施食会」だった。多くの人が毎月この日を楽しみにしているとのこと。

社会活動と布教教化が見事に融合し、開かれた寺院というアピールにもなっている点が素晴らしいと思った。

日本ではいわゆる「子ども食堂」を実施する寺院も出てきているが、今後の都市開教の手法として参考になるのではないかと感じられた。

天随禅寺での坐禅会

29日は大観寺、30日は天随禅寺において坐禅会の参禅者に対して提唱という形で法話を行った。

両寺院とも坐禅を中心に活動している道場で、熱心な参禅者が集まっている。法話の後の質疑応答では、次々と手が挙がって疑問がぶつけられた。

子どものころから個人主義が叩き込まれる社会において、仏教の「無我」というとらえ方に戸惑いを感じながらも、閉塞感や生きづらさの解決思考として、あるいは争いから調和へというパラダイムシフトの示唆として、関心を持ち始めているのではないか。坐禅を入り口として仏教への信心が進むというアプローチもあるのだろうと感じた。

これまでの南米布教巡回は、日系移民先祖の慰霊供養という意味合いが強かったと思われるが、今後ここブラジルではブラジル人の参禅者に対する説法という割合が大きくなってくるものと思われる。参禅者の目の輝きから、その期待が高まってきていると感じた。

今回の巡回は、両大本山南米別院佛心寺創立並びに南アメリカ国際布教総監部開設60周年、拓恩寺晋山式という機縁にあたり、その随喜に時間が割かれ、2週間の日程では地方寺院を巡回する布教は2ヵ寺にとどまった。特派布教としての立場から、日程内容に物足りなさを感じたことは否めない。せっかく遠くまで赴いたのだから、先祖供養の場においても、坐禅会においても、もう少し説法させていただきたかった。

しかしながら、先に述べたように、日本国内では得難き機会に巡り合えたことは、今回巡回させていただけた勝縁と受け止めている。関係担当者、特に全般にわたってお世話をいただいた南アメリカ国際布教総監部の職員には心より感謝を申し上げたい。

合掌

特派布教師 山形県松林寺住職 三部義道

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