梅花のこころ~梅花流詠讃歌~ 「平和祈念御和讃」三・四番

2020.08.06

毎月発行の『禅の友』では「梅花のこころ~梅花流詠讃歌~」と題しまして、梅花流詠讃歌の曲をもとに、解説や執筆者の想いなどを紹介しています。今月は梅花流特派師範 山形県 長泉院 石川茂稔による「平和へいわ祈念きねん御和讃ごわさん」三・四番のお話です。

我等われらほとけのみことして やわらむつみをむねとなし
 ふたた誰人たれともあらそわじ 仏前みまえ懺悔くいちかわなん
衆生みな幸福しあわせねがいては おのれを反省かえりはげみつつ
 仏法のりしたがいみほとけに 永久とわ平和へいわいのるなり

平和へいわ祈念きねん御和讃ごわさん」三・四番

戦争は、多くの人々に辛く耐えがたい悲しみをもたらします。しかし、いまだに世界各地で繰り返し起こっているのが現状です。
この曲は、太平洋戦争で犠牲となられた方々の50回忌にあたる平成6年5月に発表されました。
私のお寺では、毎年8月のお盆の供養に合わせて戦没者追悼式を営みます。発表されたあと、50回忌の法要で、この曲をお唱えするために、講員さんたちと毎日のように練習していたのを思い出します。
その中に、入院中である母親の代わりに参加してくれたYさんがいました。父親を戦争で亡くされていたYさんは、ある日の練習後に「正直に言うと、今まで父のことはあまり深く考えたことがありませんでした。でも、この曲を口ずさんでいると、目の前に父の写真が浮かんできて、歌うことができなくなります」と話してくれました。そして、小さいころ月を見上げながら母が歌ってくれたという替え歌を、思い出して歌ってくれたのです。
「もしもお月さん鏡なら、遠い戦地の父さんの、笑うお顔をひと目でも、見せてくださいお月さま」と。Yさんは、「これからも母を大切にして、追悼式にも毎年参加します」と目を潤ませました。
毎年欠かさず追悼式に参加してくれるYさん。戦争のおろかさ、悲惨さを深く心に刻み、御仏の前に平和な世界の実現を誓い、今も共にお唱えしています。
さあ、皆さんも世界平和の願いをこめていっしょにお唱えしましょう。

こちらから視聴できます  

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