梅花のこころ~梅花流詠讃歌~ 「追善供養御詠歌(妙鐘)」

2020.11.12

毎月発行の『禅の友』では「梅花のこころ~梅花流詠讃歌~」と題しまして、梅花流詠讃歌の曲をもとに、解説や執筆者の想いなどを紹介しています。今月は梅花流特派師範 東京都 宗保院 鬼頭広安による「追善供養御詠歌(妙鐘)」のお話です。

うちならすかねのひびきはそのままに

三世みよほとけのみこえなるらん

追善供養御詠歌ついぜんくようごえいか妙鐘みょうしょう)」

 

みなさまは「鐘のひびき」に、どのような音色を想像されますか?「ゴーン」と重厚に響く梵鐘ぼんしょう、「チーン」と軽快な中にも静けさを感じさせるお仏壇の〝おりん〞。詠讃歌で用いる鈴鉦れいしょうは「チンリンリン」と清らかな音色でリズムを刻みます。これらは梵音ぼんのう(仏さまの声)といわれ、音色は様々ですが、どれも豊かな余韻と共にどことなく寂しげな雰囲気が伴い、それが心に沁みてきます。先日、突然死されたお父さまの葬儀で喪主をつとめた二十代の青年が「仏さまのことはよくわからないけど、詠讃歌のリンリンという音色を聞いていたら、亡くなった父が安心して仏さまのもとに旅立っていけると確信することができました」と、素直な気持ちを少しホッとした表情を浮かべながら話してくださいました。葬儀を経て、追善供養の法要を重ねる毎ごとに、背筋が伸び合掌が調っていく青年の姿は、お父さまを偲ぶとともに、自分の生き方を大切にしていこうとしているように見えました。

私たちは「寂しさや悲しみからくる苦悩」を排除すれば幸せになれる、と考えてしまいます。しかし「諸行無常〜すべては移り変わる〜」というお釈迦さまが説かれた真理を通してみると、私たちのいのちはそもそも、お互いに限りがある存在だということに気付かされます。そして、その気付きがあるからこそ「大悲」という深い優しさが生まれ、また、今を大切に、ひたすらに生きようとする確固たる自覚が芽生えるのではないでしょうか。

響いては消えていく梵音の中に仏法を聴き、身心を調え、まごころを込めてお唱えする。詠讃歌は唱える人、聴く人、双方に安心をもたらしてくれます。さあ、ご一緒にお唱えしてみませんか。

 

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