【International】曹禅寺に着任して

2020.12.09
曹禅寺

このたび、令和2年4月より、アメリカ合衆国カリフォルニア州モンテベロ市の日系寺院である曹禅寺に国際布教師として布教教化の任に当たるご縁をいただきました。

曹禅寺は、ロサンゼルス市の中心にある両大本山北米別院禅宗寺より、自動車で東に20分ほどのモンテベロ市内に位置し、禅宗寺で開教師として活躍をされていた倉井秀雄師によって昭和46年の1971年に創設されました。大本山總持寺独住第二〇世乙川瑾映禅師を御開山とし、大本山總持寺の直末寺院として、多くの日系人のメンバーを中心に現在まで護持されています。

創設者である倉井秀雄師が遷化された後、ご子息でロサンゼルス太鼓センターを創設された、倉井秀一師が寺院を継承されました。以降、倉井秀一師は国際布教師として、年中行持や毎月の祥月供養法要を行ってこられました。

私は、平成26年より、カリフォルニア州ロングビーチ市にあるロングビーチ仏教会に国際布教師として赴任いたしました。両寺院が所在するモンテベロ市とロングビーチ市は自動車で30分ほどの距離であり、ロングビーチ仏教会を開かれた長田康哉師と倉井秀雄師が親しい間柄であったことや、両寺院のメンバーの間で長年の交流があったことなどから、数年ほど前より、曹禅寺で布教教化のお手伝いをさせていただいておりました。平成30年に倉井秀一師が遷化された後、曹禅寺に宗侶が不在であったことを受け、4月より曹禅寺においても国際布教師として任に当たることとなりました。

オンライン法話を行う筆者

曹禅寺近郊には北アメリカでも数少ない仏教大学の一つであるウェスト大学があり、病院やホスピス、米軍基地などで臨床仏教師となるために、現地のアメリカ人の学生はもとより、カンボジア、タイ、ネパール、中国、台湾などの僧侶も在籍しています。生前、倉井秀一師が同大学と交流を深められたご縁で学生の中からすでに5名が得度をいたしました。曹禅寺の2階にある坐禅堂では彼らを対象に、定期的な坐禅や各種法要の習熟等が行われています。

その他に太鼓や詩吟、合気道なども行われており、夏の盆踊りの際には、地域の幼稚園園児、太鼓、三味線、民謡などのグループを招き、日本文化や伝統芸能を披露する地域交流の機会を設けています。

さらに最近では、日本文化と日本語を学ぶために、近隣大学の学生が定期的に訪れるようになり、新しい文化交流の芽も息吹き始めています。また、倉井秀一師の生前のご尽力により、周辺の禅センター、仏教寺院、仏教大学とも親密な関係が構築されており、多様な文化、言語、価値観を取り入れながら柔軟に曹洞宗の教えを広めていくための土壌がすでに培われています。

このような曹禅寺の持ち味を十分に活かせるよう、伝統や文化に重きをおいた日本語での布教、仏教にまだ馴染みのない現地の方々を対象にした英語での布教に加え、一定の人口を占める中南米出身のアメリカ人の方たちにも教えを伝えていけるよう、スペイン語による活動も少しずつ展開予定です。

しかしながら、今般の新型コロナウイルス感染症の影響により、現在、対面式の布教教化や、バザーやファンドレイズ(勧募活動)などのイベントの実施が不可能という状態になりました。

盂蘭盆会施食での太鼓パフォーマンス

現在、できるかたちで、檀信徒の交流を促し、近隣の寺院の僧侶や他州、他国からの参禅者と研鑽を深める場を提供しています。また、オンラインによる盂蘭盆会や彼岸会法要、檀信徒の先祖供養、定期的な坐禅会、僧侶の指導を継続しています。活動もオンラインで可能となったことから、他の州の禅センターや、カナダ東部の禅センターで法話をする機会もあり、交流の輪が広がっています。

近年、曹禅寺では日本語を話す日本人や日系一世の割合が少なくなっており、英語を主に使う日系二世、三世や非日系人の家族らが主要なメンバーを構成しており、多様な文化、言語、価値観を取り入れ、柔軟に曹洞宗の教えを広めていくことがこれまでに増して求められています。

私は北アメリカ国際布教総監部において、書記として総監部業務にも携わっており、北アメリカ総監部管内にある寺院や禅センターの動向や、今後日系寺院が担うべき役割について、諸先輩国際布教師やアメリカ人の僧侶の方々からアドバイスをいただき、様々な「気づき」を感じることができる機会に恵まれています。

近年では、只管打坐の坐禅を徹底する禅センターの中から、徐々に、坐禅以外の活動を通してお寺とメンバーとの関係を築いていこうとする動きも出始めており、今後そのような風潮の中で、改めて曹禅寺が果たすことのできる役割を探ってまいります。

令和3年に曹禅寺は創立50周年となり、奇しくも翌年の令和4年には北アメリカにおける国際布教が100周年を迎えます。倉井秀雄師と倉井秀一師、ならびにこの半世紀の間護持されてきたメンバーの方たちの足跡を偲ぶとともに、時代がもたらす社会の変化に対応しながら、寺院建物の護持と多様なメンバーに対する教化に力を入れて、次の100年につながる活動に尽力する所存です。

合掌

北アメリカ国際布教師 横山行敬 記

 

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