【人権フォーラム】「同和問題」にとりくむ宗教教団連帯会議結成40周年記念式典並びに第41回「同宗連」総会出席報告

2021.06.18

2021年4月15日、「『同和問題』にとりくむ宗教教団連帯会議結成40周年記念式典」が京都ホテルオークラを会場に開催された。
「同宗連」は、1979(昭和54)年の第3回世界宗教者平和会議における部落差別発言から、宗門のみならず、宗教界全体の部落差別問題への無知と差別体質が問われたことがきっかけで、「教えの根源にたちかえり、『同和問題』解決へのとりくみなくしては、もはや、日本における宗教者たりえない(結成よびかけ文より)」として、様々な宗教教団が教義を超えて、部落差別問題を始めとする、あらゆる差別問題の解消を目指して、1981(昭和56)年6月29日に結成された。
来賓、加盟教団、協賛団体や都府県「同宗連」の約100名が集まるこの式典はコロナ禍の影響で開催が危ぶまれたが、会場での検温、互いに適切な距離をとる等の対策と日程の一部変更が行われ開催の運びとなった。
「同宗連」議長・足利善彰師(浄土真宗本願寺派)による開会挨拶に引き続き来賓を代表して部落解放同盟中央本部中央執行委員長・組坂繁之氏より挨拶があり「今、WHO(世界保健機関)はソーシャルディスタンスという言葉は使わずにフィジカルディスタンスという言葉を使っています。これはソーシャルディスタンスという言葉が、かつてインドのいわゆるアウトカースト、今で言うダリットを排除するために使われた言葉であることから使用を控えようということになっています。そういった言葉も大事にしていかなければなりません」とコロナ禍の人権に触れる場面もあった。

宗教者の役割について語る谷口真由美氏

来賓降壇の後、記念講演①として、法学者・日本ラグビーフットボール協会前理事の谷口真由美氏より「いのちの尊重~差別解消に向けて宗教者が果たす役割~」をお話しいただいた。
国際法の起源は信教の自由について定めたウェストファリア条約にあり、その後、アメリカ建国による民主国家の成立と宗教観の変遷について話された。また、本年2月の東京五輪組織委員会・森喜朗前会長の「女性がたくさん入っている理事会」「時間がかかる」とした女性蔑視発言に触れ、「人権というのは学習によるアップデートをし続けないと理解できないものなんです。そうしないと取り残されることになります」と日本ラグビー協会の理事を突然解任された当事者として心境を織り交ぜて語り、その中で「今、アップデートできる場所、アップデートしてくれる師が求められています。心理的安全性が確保された場での人との対話というもので成長していくのがこれからの社会の在り方だと思っています」と、宗教者の果たす役割について語られた。

事務局長時代を振り返る深澤信善師

続いて記念講演②として深澤信善師より「『同和問題』にとりくむ宗教教団連帯会議の歩み」をお話しいただいた。かつて曹洞宗人権擁護推進本部事務局長として「同宗連」第11期事務局長も務めた深澤師に、「同宗連」結成の契機となった第3回世界宗教者平和会議当時の状況から、自身が務めた当時の「同宗連」事務局長の活動までの歩みをお話しいただいた。
その後、「同宗連」事務局長三輪教真師(浄土真宗本願寺派)による「同宗連」結成40周年決意表明が行われた。ここに全文を紹介する。

「同宗連」結成40周年決意表明
 1979年、アメリカ合衆国プリンストンで開催された第3回世界宗教者平和会議での差別発言を契機に、1981年、「『同和問題』解決へのとりくみなくしては、もはや日本の宗教者たりえない」との覚悟をもって歩み始めた我々は、ここに結成40周年を迎えた。
 その足跡を“鉄道”に例えて顧みれば、土台となるレールを築いた10年、がむしゃらに走らせた10年、ダイヤを整備して安定化に努めた10年、路線を拡充し更なる発展を期した10年であったと言えるのかもしれない。
 そうした努力が結実し、各加盟教団に還元され、一人ひとりのうちに人権意識の高まりを見たことは、「同宗連」活動の大きな成果であると言える。
 一方で、社会に目を向ければ、「誰一人取り残さない」世界の実現に向け、国連においてSDGsが示され、また、国内においていわゆる「差別解消三法」が成立し法整備が進められているが、「全国部落調査」復刻版出版事件に代表されるように、いまだに部落差別が根絶されておらず、インターネットを悪用した差別が深刻化している。さらには、行き過ぎたIT化・グローバル化は社会に格差を生み、「いのち」の尊厳が軽視され、差別の構造はますます複雑化の様相を呈している。
 今こそ、われわれ宗教者は、「同宗連」結成の原点に立ち返り、部落差別をはじめとする一切の差別撤廃に向けて連帯を深め、一層の努力と邁進をしなければならない。さらには、差別解消に向けた実践の根底にある宗教者に共通したアイデンティティは「いのちの尊重」であることを深く自覚し、心新たに一歩を踏み出すことを、ここに決意、表明するものである。

2021年4月15日
「同和問題」にとりくむ
宗教教団連帯会議

決意表明の後、式典実行委員長の野口善敬師(臨済宗妙心寺派)より閉会の挨拶があり式典は終了した。

翌4月16日、京都東急ホテルで「『同和問題』にとりくむ宗教教団連帯会議」第41回総会が行われた。前日の記念式典とこの総会をもって第20期「同宗連」役員教団の任期は終わり、新たに第21期「同宗連」役員教団が選出、承認された。新役員教団の構成は左記のとおり。
・議長教団/臨済宗妙心寺派
・副議長教団/曹洞宗、天理教、浄土真宗本願寺派
・企画委員長教団/立正佼成会
・広報委員長教団/大本
・監事教団/黄檗宗、真言宗御室派
前年度、「同宗連」に設置された特別委員会で議長教団の負担軽減、副議長教団の中核的なサポートが議論され、審議報告が総会で採択された。このことから、副議長教団就任により、今後、曹洞宗の「同宗連」における活動はより主導的なものとなる。人権擁護推進本部としても今後ともその期待と責任に応えていきたい。

人権擁護推進本部記

 

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