北アメリカ国際布教100周年連載企画~北アメリカ曹洞禅のこれまでの100年とこれからの100年~ 第9回「禅とジェンダー平等」

2022.09.06
森 香有師

曹洞宗国際センター書記の森香有と申します。私が国際布教師に任命されたのは2018年11月、その後アメリカ合衆国にある曹洞宗国際センターの書記となり赴任し、約3年半となります。

国際センターでは、世界各地の寺院・禅センターや現地の僧侶とコミュニケーションを図り、海外における布教活動の拡充に努めています。具体的には参禅指導、各種資料の英訳や日本語訳、当センターの季刊誌『法眼』作成、ハワイ、北アメリカ、南アメリカ、ヨーロッパにある各総監部との連携業務等、多岐に亘ります。

私は一般家庭の出身です。駒澤大学仏教学部を卒業後、知識だけではなく体験を伴う仏教を学びたいと出家し、愛知専門尼僧堂で約1年半安居、その後、曹洞宗総合研究センター研修課程を修了し、曹洞宗宗務庁に入庁しました。しかし、海外で活動したいという昔からの夢を捨てきれず30歳の節目を機に退庁。そして、様々な有難いご縁により、ここアメリカで宗門の国際布教のために従事しております。また、私事ではございますが、2018年に一般男性と結婚し、2019年に第1子を、2022年3月に第2子をアメリカで出産いたしました。

カリフォルニア州スタンフォード大学での参禅指導(筆者前列右)

突然ですが、宗侶の男女の人数・比率をご存知でしょうか。2022年7月現在のデータによると、日本国内に僧籍のある宗侶は男性21,413名、女性734名であり、比率としては男性約97%、女性約3%となります。

ところが日本国外となると、男性497名、女性231名、比率は男性68%、女性32%、と、男女同等とまではいきませんが、日本と大きく異なることが分かります。特に北アメリカ総監部は海外4総監部の中でも最も男女比率の差が均等に近いです。

訪問する多くの禅センターは、出家在家に関わらず幅広い年齢層、そして男女関係なく参禅しているのが印象的です。しかしながら、禅センターによっては、「日本から来た女性宗侶はあなたが初めてよ。とても嬉しいわ」と言われることがあります。初めはなぜ喜ばれているのか理解できませんでしたが、アメリカに3年以上居住することで、ようやくその意味が分かるようになってきました。それは、組織、会議、集会、何においても男女両方の存在が不可欠だというアメリカ社会の共通認識からすると、日本からの宗侶が男性だけというのは違和感があるのでしょう。

ゴッドウィン建仁国際センター所長(筆者左隣)、北アメリカ国際布教総監部現地法人理事と

日本との大きな違いは、女性リーダー(指導者)の存在であると感じています。教師資格を有し、国際布教師として布教教化に従事する北アメリカ国際布教師58名の内、男性32名、女性26名と管内に多くの指導者がいることがわかります。

北アメリカ国際布教総監部は現地法人として「Association of Soto Zen Buddhists」という非営利法人格を有しています。規程上、国際布教総監が代表理事、総監部書記2名が理事を自動的に務めるのですが、その他3名の理事は投票にとって選出されます。現在の理事3名は全員女性の国際布教師となっています。

本年、2022年は北アメリカ国際布教100周年の記念すべき年であります。11月に記念行事として予定されている授戒会においても、教授師は女性の国際布教師にお務めいただきます。また、比丘びく比丘尼びくに優婆塞うばそく優婆夷うばい4つに分類するのではなく、参加者の呼び方は「戒弟」に統一し、男性も女性も、そのどちらにも該当したくない人も気兼ねなく参加ができるように工夫しています。そして、私を含め、育児中の宗侶の参加を可能にすることを目的とした、託児所を設置するなど、日本国内では実現が難しいであろう、画期的な取り組みがなされています。

歴史・文化・宗教観が日本と異なる北アメリカにおいて、日系社会の枠を超えて、これほどまでに曹洞禅の教えが広がった要因は、歴代の開教師のたゆまぬ努力や日本からの物心両面の援助があってのことと思慮いたします。しかし、それだけでなく、坐禅が誰でも実践できる仏道修行であったからこそ、ジェンダー、人種といった枠にとらわれずに、敷衍したのではないでしょうか。

北アメリカ国際布教100周年慶讃法要はカリフォルニア州ロサンゼルスの両大本山北米別院禅宗寺において2023年5月に予定されております。ぜひ、この機会に、北アメリカの地に足をお運びいただき、曹洞禅の教えがどれほど大切に護持され、敷衍されているか感じていただければ幸いです。

禅宗寺にて皆さまにお会いできるのを楽しみにしております。

※比丘は男性僧侶、比丘尼は女性僧侶、優婆塞は男性信者、優婆夷は女性信者

曹洞宗国際センター 書記 森香有