梅花流ことはじめ【その22】『梅花流作法規範』の成立

2022.10.04

梅花流発足から2年後の昭和29年。この年の10月、『梅花流作法規範』が梅花流梅花講総本部編として発行されました。これによって梅花流の目的・内容・性格が、発足以来初めて成文化されることになったのです。

まずはその目次を見てみましょう。

一、奉詠作法の精心。二、法具の名称と種類。三、法具の扱い方。四、入堂(場)の法。五、退堂(場)の法。六、奉唱法。七、其の他

はじめの精神的な意義に次いで、法具の説明、所作進退、奉唱について具体的な説明が続きます。ここでは梅花流の根本的な定義とも言える第一節を紹介しましょう。

 一、奉詠作法の精心

1梅花流は曹洞宗の宗義に則り、正法に依遵し、詠歌和讃の奉唱を通じて仏祖の恩徳を讃仰し、正法を宣揚することを以て本旨とする。

2依ってこれが奉唱に当たっても「威儀即仏法、作法是宗旨」との宗義に徹して、その一挙手一投足が身業説法となり一言半句が口業説法となり而してその口未だ開かざる以前の浄心の発露が無言の意業説法となるのでなければならない。

3されば詠歌和讃を奉詠するのは仏祖の金口に代り己が之を代唱する妙音菩薩となるのであるから、奉唱の際の我が姿は蓮華台上の尊きみ仏のみ姿の現成と心得て最も敬虔な態度でなければならない。

4依って入堂(場)より退堂(場)に至るまでの凡ての坐作進退は「行も亦禅、坐も亦禅」との禅の境地に合致して見るものをして敬虔入信の情を起さしむるようでなくてはならない。(※説明の便宜上、番号を付した)

1は梅花流の基本的な主旨を明らかにするものです。曹洞宗の宗義に則して「仏祖の恩徳讃仰」「正法宣揚」がその本義であることをまず掲げています。

2は曹洞宗の宗風を表す、すべてのふるまいが仏行であるという考えを、梅花流にも適用しています。これに加えて【18】で触れたように、真言宗ご詠歌の基本的な考え方「身口意三業」を用いて、奉唱することはすなわち三業相応の説法でなければならないとしています。

3には妙音菩薩、蓮華台上のみ仏の名称が見えますが、これは梅花流以前の他流ご詠歌にもみられたものでした。

4は梅花流奉唱の坐作進退が禅の境地に合致することを求めたもので、後に「詠禅一如」という表現が生まれるもとになっています。

以上を見れば、『作法規範』の梅花流の定義は、伝統的なご詠歌流の考え方を継承しつつも、禅宗ご詠歌として曹洞宗独自の方針を打ち出したものと言えるでしょう。

密厳流から曹洞宗梅花流へと自立の道を歩み始めたのです。

秋田県龍泉寺 佐藤俊晃

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