【人権フォーラム】「狭山事件」の再審を求める市民集会参加報告

2022.12.08

「狭山事件」は、1963(昭和38)年5月1日、埼玉県狭山市で一人の女子高校生が行方不明になり、身代金を要求する脅迫状が届けられましたが、警察は犯人を取り逃がし、3日後その女子高校生が遺体となって発見された事件です。

この事件で、5月23日、被差別部落出身の石川一雄さんが窃盗などの別件で逮捕されました。石川さんは、窃盗などについては認めましたが、本件については否認を続け、1ヵ月後に「自白」をします。この「自白」については、あまりにも客観的事実と一致しない不自然な点が多く、「自白」までの経過に、取り調べ方法や長期間逮捕・勾留などの問題が分かっています。

石川さんは、第1審ではこの「自白」を認めましたが、第2審以降はこの「自白」を撤回し、その後(現在仮出獄中)も一貫して無実を主張し続けています。石川さんが逮捕された背景には、「吉展ちゃん事件」(「狭山事件」の1ヵ月程前におきた事件で、警察は犯人を取り逃がし、社会の非難を浴びる)と、死体が被差別部落の近くに埋められていたことで、「あそこの人たちはやりかねない」という市民の予断と偏見意識を利用して、警察当局は被差別部落の青年たちを集中的に捜査したと言われています。

2022年10月28日、東京都日比谷野外音楽堂で「狭山事件」の再審を求める市民集会が開催されました。当日は「同宗連」(『同和問題』に取り組む宗教教団連帯会議)を始め、部落解放同盟、「狭山事件」を考える住民の会など、総勢1000人規模の集会となりました。

西島委員長の前には10万筆を超える署名が積み上げられた

1974年10月31日に石川一雄氏に無期懲役判決が下されてから48年、第三次再審請求審で弁護団は255点の新証拠を提出し、当時の判決の誤りを明らかにし、再審を開始するよう求めていいます。今回の集会は「東京高裁は11人の鑑定人の証人尋問とインク鑑定の実施を」との掛け声のもと、再審請求の鍵とされる証拠についての話がありました。

集会は、部落解放同盟中央本部委員長・西島藤彦氏の開会挨拶から始まり、その中では8月29日に裁判所に対して鑑定人の証人尋問を求めたこと、9月の三者協議ではこのことが検察庁にも通達されたことが報告されました。裁判所に申請を認めてもらうための署名活動も同時に行われ、9月の1ヵ月で10万3000筆を超える署名が集まったことが報告され、集会の後、裁判所へ届けられました。

また、年内に20万筆の署名を集めることを目標に、世論の声を裁判所へ届け、鑑定人の証人尋問を求めて行きたいと、今後の展望を述べられました。その後、各政党からの挨拶があり、冤罪被害者・石川一雄さん、妻石川早智子さんのアピールがありました。

石川一雄さん・早智子さんのアピール
石川一雄さん
48年前の寺尾裁判長不当判決のことを思うとやるせない気持ちとなります。今でも時たま千葉刑務所にいたときの夢を見ます。仮に「犯人扱いされなかったらどうであったろう」とベッドの中で考えることもありました。五九年前の石川一雄ではありません、今は色々なことを思い、元気で戦っております。

アピールを行う石川一雄さん、早智子さん

今日も皆さんにお越しいただき本当にありがたく思うと同時に、申し訳なく思います。私が自白しなかったとしたら、皆さん方にご迷惑をおかけしなくても済んだのではないかとも思います。皆さんに感謝の気持ちを忘れてはならないのは、署名活動にご協力いただき、多くの署名が集まったことです、本当にありがたく思います。

石川一雄の元気な間に、この第三次請求で無罪を勝ち取るために、皆さまのご支援ご指導を賜りたくこの場を借りてお願いしたいと思います。

石川早智子さん
狭山再審の戦いは大きく動こうとしています。裁判所への要請は大きな山場を迎えています。皆さまの支援が狭山事件を動かしています、心から感謝をしています。

しかし、事実調べというのは再審開始に向けた第一歩です。何としても事実調べを行わせることが最重要です。そのための署名活動が始まりました。大きく世論をおこすべく、多くの方が全国を回ってくださりました。昨日、署名の第1弾が10万筆をこえたと聞いて本当にうれしかったのです。

この2年あまり新型コロナ感染症拡大の中で集会も現地調査も中止、延期になる中で、それでも狭山再審の戦いを止めない、各地で創意工夫をした戦いが続けられてきました。どんなにか私たちは力をいただいたことでしょう。

狭山事件は来年60年になります。石川一雄の人生の大半は冤罪を晴らす戦いの中にありました。来年こそ事実調べ、再審開始の年にしたい。石川が晴れて両親の墓前に手を合わせ報告できる、皆さまと心から喜べる良き日が一日でも早く来るように心から願っています。

続いて、狭山事件再審弁護団弁護団事務局長・中北龍太郎氏より弁護団報告が述べられた。

弁護団報告(要旨)
事実調べ請求によって狭山第三次再審請求審は大きな山場に差し掛かりました。弁護団の主張と検察官の主張は真っ向から対立しています。そのために事実調べが必要です。

石川一雄さんを犯人とした有罪判決に対して、新証拠によって合理的な疑いが生じているかどうか、再審開始要件である新証拠の明白性が認められるかどうか、この判断の為にも事実調べが不可欠であります。11人の鑑定人によって読み書き能力、筆跡の一致性、指紋がないこと、足跡、血液型、スコップの問題、目撃証言、音声証言、発見万年筆が被害者のものか否か、殺害方法の自白が信頼できるのかどうか、こうした論点について、鑑定が行われました。この鑑定書を作成した鑑定人11人の尋問を要求するものであります。

これらの鑑定によって、有罪判決が依って立った証拠の主要な柱である警察側の鑑定が、すべて崩れていると明らかにしてきました。その11人の鑑定人を尋問することによって初めて真実がわかると私たちは訴えています。

今回この中の4人について紹介します。

第1にA鑑定人、取り調べ録音テープを分析されました。この第三次再審請求審で証拠開示を勝ち取ったテープの中で、取調官が石川さんに対し平仮名文字を繰返し教えている様子がテープにたくさん収められていますが、それでも誤字だらけであるという実態がA鑑定人によって明らかにされました。こうした石川さんの当時の読み書き能力は、真犯人のものとされる脅迫状と大きな差があり、石川さんに書けるものではないと改めて明らかになりました。

集会後はデモ行進が行われた

次にF鑑定人ですが、土の分析をされました。警察の鑑定では発見されたスコップについていた土と死体発見現場付近の土が一致するというものでした。しかし、F鑑定人はスコップについていたのは赤土・・であり、現場付近の土は黒土・・でありまったくの別物であり、発見されたスコップは死体を埋めるのに使われていないということが明らかになっております。

そして、I鑑定人は石川さん宅から発見された万年筆のインクの成分と被害者が常日頃使い、事件当日も使っていた万年筆のインク成分の両方を蛍光X線分析し、両者がまったくの別物であると明らかになりました。

第4にJ鑑定人の自白分析があります。これも録音テープを分析したもので、石川さんは殺害方法について自白をしているのですが、その自白は道具を用いたのか、何を用いたのか、最終的には手を使ったと二転三転します、大きな変遷を遂げていることが明らかになりました。この変遷は警察の誘導によるものである、ということも録音テープから明らかであります。J鑑定人はこのように、殺害方法に関する自白の中心部分の供述はまったく信用できない、ということを明らかにされました。

このように、ことごとく「狭山事件」の重要な論点について覆っているということが明らかになっています。有罪判決は、状況証拠と自白の2つから成り立っており、2つが相互に補い合う関係であるとも言われています。有罪判決について合理的な疑いを生じさせるためには、総合的にこの二つの矛盾点を指摘していかなければならない、ということになります。

そして、多くの鑑定人の鑑定書の提出によって、弁護団はすべての論点について有罪判決を覆してきた、と自信を持って言えると思います。あとは事実調べによって真実を明らかにすることが残されているだけだと思っています。

何としても、再審開始決定を実現させるために事実調べの実現が必要になります。

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弁護団報告の後、部落解放同盟中央狭山闘争本部長、副委員長・片岡明幸氏より集会の基調提案がなされ、その後袴田巌さんを救援する清水・静岡市民の会・山崎俊樹氏より連帯アピール、「狭山事件」の再審を求める市民の会事務局長・鎌田慧氏よりアピールがありました。

その後、部落解放中央共闘事務局長・小林美奈子氏が集会アピール文を読み上げ、部落解放同盟中央本部書記長・赤井隆史氏が閉会挨拶を述べ、本集会を締めくくり、デモ行進を行いました。

人権擁護推進本部記