【International】こころで行じる

2023.01.12
木版を鳴らす筆者

私の名前はブルーノ正栄です。昭和61年11月27日にブラジル連邦共和国のリオデジャネイロ市で生まれました。

私はほとんどのブラジル人と同じように、ポルトガルとスペインの祖先だけでなく、多様な国のバックグラウンドを持つ家族の出身です。若い頃は、ピアノ、ヴァイオリン、歌などの音楽に傾倒しました。また、大学においては、作家であり哲学者でもあるフランス人のジャン=ポール・サルトルの実存主義に関する哲学を学びました。大学卒業後は、中国医学と鍼治療を専門に学び、安居修行のために日本に行くまで働き、指導していました。

哲学を学んでいるときに、森本和夫氏の『道元とサルトル―「存在」と「無」の哲学』の翻訳の一部を読んで禅を知るようになりました。それで、私は禅にどんどん深く興味をいだきのめりこみました。

また西嶋愚道師と Chodo Cross氏が日本語から英語に翻訳した『正法眼蔵』にもめぐりあいました。また禅の古典である『臨済録』、『無門関』、『信心銘』、栄西禅師の『興禅護国論』、道元禅師の『普勧坐禅義』、瑩山禅師の『坐禅用心記』なども勉強しました。これらの著者の言葉と考察が哲学を学んでいる私の耳によく響くことに驚かされました。

修行時代の筆者

そこで私はさらに勉強を続け、坐禅をする場所を探すことにしました。そして哲学者と哲学の学生グループの勧めでエスピリトサント州にある禅光寺の摂心で初めて坐禅をしました。

坐禅との短い出会いの後、私はリオデジャネイロに戻り、リオデジャネイロのサンタテレザ地区で坐禅道場を主催していたソーザ孤圓老師の弟子を通じて参禅を続けました。そのお弟子さんは永春さんと言い、自身の住宅の一室で坐禅道場を開いていました。

子どもたちに参禅指導する筆者

私は孤圓老師の指導の下で数年間過ごし、彼女から授戒しました。その際に「正栄」の名を賜り現在に至ります。授戒を機に曹洞宗の教えを人々に伝えられるように、より深く参究したいと思うようになりました。

私が実際に日本での安居修行を決意したとき、孤圓老師は私に采川道昭老師を紹介してくださいました。当時、采川老師は、サンパウロの両大本山南米別院佛心寺に所在する南アメリカ国際総監部の当時国際布教総監でした。平成23年11月3日に采川老師のもとで出家得度し、サンパウロから600キロ離れたリオデジャネイロに住みながら、月に一度佛心寺の活動を手伝い始めました。

時が経つにつれ、采川老師は私に日本で安居修行するように勧めてくださり、平成26年3月19日から平成31年4月9日まで、大本山總持寺で安居修行しました。

私はいくつかの寮舎に所属し、僧堂で生活する上での様々なことを学び、嗣法、瑞世と段階を経て正教師の資格を取得しました。また、平成31年5月19日から令和4年5月18日にかけては特別僧堂安居僧として修行させていただきました。

晋山結制式で、安下処を出発し新命住職として拓恩寺に向かう筆者

この間、私たちは今日の世界で非常に困難な時代に生きていることがわかりました。実際に戦争、病気、飢饉などが絶え間なく続いています。これらのような三毒は、仏道を行じ、さとることを非常に困難にします。今こそ智慧と慈悲の教えを深く掘り下げ、同事の実践を通じてすべての存在を助けるときです。 また数年間の安居修行中、私の頭にはいつも「威儀即仏法 作法是宗旨」という言葉が響き渡っていました。仏法と作法や儀礼における適切な型というのは宗旨であるということです。『正法眼蔵』「行仏威儀」巻の「行仏」とは、「さとりを実践すること」、または「仏を実践すること」を意味するといえます。それは、自身が菩提を菩提として知り理解するとき、自身はさとる運命にある、さとりの中そのままにあるということです。

仏道を行じる仏は菩提を待つことはありません。仏道を真に理解できるときというのは行じているときだけです。したがって、仏道を行じ続けなければなりません。そのため私は僧侶としての誓いを立て、仏道に人生を捧げることにしました。

拓恩寺のメンバーと筆者

現在私はパラグアイ共和国イグアス居住区にある拓恩寺の国際布教師として曹洞宗の正伝の仏法を尊び、只管打坐、即心是仏を伝えていくため尽力しています。あらゆる場面で地域社会に寄与し、南アメリカと日本の間のかけ橋として禅の修行を続けている方々との交流のために精進したいと思います。

またブラジルとパラグアイの両方が社会の基本構造に差別と偏見が存在する地であることを思い起こしながら、日本と他の国の両方で差別と偏見がなぜ起こるかについて勉強し伝えていきたいと思います。持続可能な開発目標(SDGs) についても話します。私たちがすべてと関わり、責任を持って地球を守るために非常に重要な問題です。これらは僧堂での安居中に私たちが何年にもわたって勉強してきたことでもあります。

私は禅を実践するグループを支え既存のグループと協働することも目指しています。また拓恩寺のコミュニティーと他の地域のサンガともつながりを確立していきたいと思います。

パラグアイ共和国 拓恩寺 ブルーノ正栄 国際布教師

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