北アメリカ国際布教100周年記念授戒会修行報告

2023.01.13

令和4(2022)年11月16日から20日の5日間、アメリカ合衆国カリフォルニア州ロサンゼルスの両大本山北米別院禅宗寺で「北アメリカ国際布教100周年記念授戒会」を修行いたしましたので、ここにご報告申し上げます。

この授戒会の計画は、今から4年前の平成30(2018)年に遡ります。北アメリカ国際布教100周年にあたり、どのような行事を行うのが相応しいか協議が重ねられ、北アメリカ初開の寺院である禅宗寺をはじめとする日系寺院の活性化と、現地の寺院や禅センターにおいて将来の布教教化活動の一環として活用されることを目的に「授戒会」を修行することとなりました。

今般の授戒会において特筆すべき点が3つ挙げられます。まず、現地僧侶が主体となって修行されたことです。大戒師を秋葉玄吾北アメリカ国際布教総監、教授師をベイズ澄禅国際布教師(オレゴン州・グレートバウ禅モナストリー大願禅寺)、引請師をワインコフ彰顕国際布教師(アイオワ州・龍門寺)が務められ、説戒師、室侍長、直壇長などの主要な配役も、管内国際布教師がその任にあたりました。

次に挙げられるのが管内全域から戒弟が参加したことです。当総監部はハワイを除くアメリカ合衆国をはじめ、メキシコやカナダの地において国際布教師が活動しており、一世紀にわたる歴史の間に「ZEN」は浸透していきました。戒弟の募集にあたっては曹洞宗国際センターと連携し、各地の寺院や禅センターに積極的に赴いて行いました。パンデミック以降はSNSを活用し、オンライン坐禅会に参加して周知した甲斐もあり、計画目標としていた数の申し込みがありました。

最後は戒弟を出家と在家の二とおりとした点です。これはアメリカ社会における性差に関する考え方を反映したことによります。

授戒会に先立ち、授戒会の習儀を中心とした現職研修会を2日間開催しました。配役僧侶の内、授戒会委員や各寮のリーダーなど約30名は、事前に数回の機会を設けて習儀を行ってきましたが、現地僧侶の多くは初めての授戒会や配役であったため、英語の差定やマニュアルを手にして終始真剣に受講していました。

そして、11月16日に啓建し、迎聖諷経から三師相見の拝と差定どおりに進みました。読経を始め説戒や説教、直壇口宣などは英語で行われ、他に日本語で話されたことはすべて英語に通訳されました。説戒師は奥村正博国際布教師とアンダーソン全機国際布教師が務められ、十六条戒を丁寧に説かれました。コロナ禍で参加を見送られた方からオンラインでの説戒・法話の聴講の要望が多かったため、三道場以外の行持のZoom配信を実施しました。

1日目の最後は壇上礼・仏祖礼が勤められ、戒弟は「Homage to the Buddhas of the Three Times(南無三世諸仏)」と唱え礼拝を重ねました。その日の行持が終わった後も、翌日の行持の打ち合わせや習儀が各寮で夜遅くまで続けられていました。毎朝の戒師の口宣では、戒についてお話しになり、戒弟は聞き漏らさないよう真剣に聞いていました。設供養では鈴木俊隆、前角博雄、片桐大忍の各老師の法孫が施主となり中食の際に巡堂しました。中食では戒弟は応量器を使い、典座寮で用意された精進料理をいただきました。

特別講義として梅花流詠讃歌に触れる機会を設け、導師入堂の際には三宝御和讃を全員でお唱えしお迎えしました。また、茶話会の時間には戒弟と配役僧侶が交流し、ロサンゼルスの暖かな日差しの下で和やかな雰囲気の中親睦を深めていました。

懺悔道場では対首懺悔、懺悔帳焼却の後、随喜僧が「Homage to Great Compassionate Avalokitsvara(南無大悲観世音)」と唱名し遶匝し、感激し涙する戒弟の姿も見られました。正授道場では登壇の後、戒師より血脈が戒弟一人ずつに授けられました。正授道場が終わり、戒弟が散堂する際には、随喜衆からの拍手と「Congratulation!(おめでとう)」という声がかけられました。

完戒上堂では30名程の随喜僧や戒弟による問答を行い、大戒師は一人一人の問いに丁寧に答えられていました。記念撮影の後、戒弟90名、配役僧侶77名、禅宗寺檀信徒参列のもと、深川典雄教化部長に北アメリカ国際布教100周年記念転読大般若の導師をお務めいただき、5日間にわたる記念授戒会は盛会裏に円成いたしました。

2003年に北アメリカで修行された授戒会から約20年が経過しており、「北アメリカの僧侶でやり遂げよう」という思いはありつつも、困難な道のりでした。様々な面でご協力いただいた日本の皆さま、そしてハワイ・南アメリカ・ヨーロッパの各総監部の方々のおかげで、無事修行できましたこと、厚く御礼を申し上げます。

禅宗寺の前身である曹洞宗北米佛教会の会則ができたのが、奇しくも完戒と同じ大正11(1922)年の11月20日でした。この度の授戒会の「縁」を大切に、管内宗侶、北アメリカ国際布教総監部一同、今後の北アメリカにおける曹洞宗の発展に力を尽くしてまいりたく存じます。

最後になりますが、本来であれば今回の授戒会と併せて記念慶讃法要を行う予定でしたが、これまでご法縁をいただいております日本の皆さまにもご随喜賜りたく、2023年5月28日に延期し、両大本山北米別院禅宗寺にて執り行います。

この勝縁を皆さまとともにお祝いできますことを冀い、ご報告とさせていただきます。

北アメリカ国際布教総監部 記