【人権フォーラム】 世界人権宣言74周年記念東京集会参加レポート

2023.02.20

昨年12月6日、ニッショーホール(旧ヤクルトホール・東京都港区)にて世界人権宣言74周年記念東京集会が開催されました。

『世界人権宣言』は「基本的人権尊重の原則を定め、すべての人民とすべての国が達成すべき共通の基準」として、1948年12月10日、第3回国際連合総会において採択されました。

日本では、毎年12月4日から10日までを「人権週間」と定め、人権啓発に関する講演や展示などの催しのほか、各地で集会などが全国各地で開催されています。

このたびの東京集会では主催者である世界人権宣言中央実行委員会委員長・西島藤彦氏の挨拶、来賓挨拶の後、弁護士・指宿昭一氏(以下、指宿氏)による講演が行われました。

指宿氏は現在、日本労働弁護団常任幹事・外国人技能実習生問題弁護士連絡会共同代表・外国人労働者弁護団代表を務められ、労働事件(労働者側)・外国人事件(入管事件)に専門化した弁護士業務を中心に、外国人実習生の労働者性を初めて認めた三和サービス事件や精神疾患に罹患した労働者の解雇を無効とした事件の弁護などを担当されています。また、名古屋出入国在留管理局に収容中のスリランカ国籍女性が死亡した事件における被害者ウィシュマ・サンダマリさん(以下、ウィシュマさん)の遺族代理人を担当しており、本集会ではこのことを中心に講演されました。

講演「入管行政から考える日本の人権状況」

指宿氏はまず冒頭に自らが部落差別問題に取り組み、「全国部落調査」復刻版出版差し止めと地名リスト削除を求める控訴審にも原告側弁護団として参加されていることに触れ、「世界において、日本において、差別と抑圧は絶対になくしていかなければならない。そのための人権宣言であり、それがまだ道半ばで、問題が解決したとは言えない。そのことを私たちは受け止めて前進していかなければならない」と話し、世界や日本において、未だ不当な差別的取り扱いや抑圧はなくなっていない現実を受け止め、解決を目指していかなければならないと決意を述べられました。

講演する指宿弁護士
(写真提供 解放新聞社)

続いて、名古屋入管事件について説明され、日本の入管行政における人権状況の問題点に触れられました。

指宿氏は事件の経緯について説明し、最後に「飢餓状態で誰が見ても栄養が足りない、脱水症状であることがわかる状況であったにも関わらず、何も対応しなかったというのは彼女を死に追いやるつもりだったとしか思えない」と、当時の名古屋入管の対応を厳しく批難しました。

このような問題が起こる背景には、在留資格がない非正規滞在者が6~7万人おり、その中で帰国すれば殺される可能性があるなどの理由で母国に帰れない難民申請者、送還の命令を拒否した送還忌避者など、約3,000人を、帰国させようとする入管側の姿勢があります。その手段として、例えば医療の拒否や拷問とも受け取られかねない手段を用いて送還を受け入れさせようとしています。

 また2020年9月、国連は元被収容者からの訴えにより、現在の日本の入管行政における収容は「恣意的拘禁」にあたること、さらにこれは国際人権法違反であると勧告した。昨年11月3日、人権規約委員会では2017年以降収容施設で3名の死亡者が出ていることについて、国際基準に則った包括的な難民保護法制を早急に採用すること、医療を含む収容施設での処遇についての改善計画の策定など、強く勧告を行ったものの、現在までに日本政府がこれらを受け入れ、入管行政の改革に着手するという方向性は出ていないことについても言及しました。

そして「日本政府が勧告を無視しているのは、国連の力が弱いわけではない。国連の勧告を受け止めて日本国民が声を挙げなければならない。その声がまだ小さいので政府に勧告を受け入れさせる力になっていない」と、国民一人ひとりが政府に対し、もっと声を挙げていくことが重要であると提言し、講演を結びました。

おわりに

この世界人権宣言74周年記念東京集会の6日後に、ウィシュマさん事件の遺族が国に損害賠償を求めている裁判で、第4回口頭弁論が名古屋地裁で行われました。裁判では、国側が年内(2022年中)にも収容中の監視カメラ映像の約295時間のうち約5時間分を遺族側と裁判所に提出することが報道されました。遺族側は「ビデオが提出されることはうれしいが、残りの290時間分を提出してほしい」「真相の解明にはすべての映像が必要」と会見で語っています。進展は見られましたが、未だ真相解明には時間を要することが予測されます。

今回の講演では、日本における外国人の人権に関する根深さについて改めて知らされ、また問題提起されました。被害者遺族の訴えや指宿氏の提言にこれからどう向き合うのか、私たちの問題意識や行動が問われていると感じます。

人権擁護推進本部記