【International】マウイ満徳寺に赴任して

2023.06.07

マウイ島の主要空港であるカフルイ空港から東に20分ほど車を走らせた場所にパイアという古い町があります。北側を太平洋に面するこの小さな町は、かつてはサトウキビ栽培で栄え、今ではレストランや土産物店が立ち並び、その古き良き町の景色を求めて全米から観光客が訪れる人気の観光地です。町の中心部を抜けた少し静かな場所に、マウイ島唯一の曹洞宗寺院である馬頂山満徳寺はあります。

満徳寺のメンバーと

満徳寺はマウイ島に渡った日本人移民からの要望を受け、植岡祖暁師が、パイアの地に創設しました。現在の本堂は、1921年に完成したものと記録されています。

ハワイ州の他の島と同様、移民として渡った日本人の多くはサトウキビ農園で過酷な労働に従事しました。当時の寺院は、冠婚葬祭に関わる仏事を行うのみならず、祖国を遠く離れて奮闘する日本人の心を癒し、また、日本文化を継承していく場としての役割を担いました。開山から百年以上が経った今でも、お寺は人と人を、また日本とハワイとを繋いでいます。

2022年4月、私はハワイ国際布教師の任を拝命し、この満徳寺に赴任いたしました。日本を発ち、満徳寺に到着したときには、2度目の再訪にも関わらず、改めてその佇まいの美しさに心打たれたのを、1年が経った今でも覚えています。広大な芝生の広場の先に建つ歴史ある本堂、その脇に設置された鐘楼堂と大梵鐘。背景には、写真でしか見たことのないような青い空と海。日本の禅文化とハワイの自然が溶け込んだこの美しい景色は、唯一無二のものだと思います。

満徳寺での最初の1年は、あっという間に過ぎていきました。赴任した当初は、簡単な英会話もままならない私に、メンバーと呼ばれる檀信徒の皆さまが、日々の寺務やマウイ島での生活について丁寧に説明してくださいました。法要に関しては、管内の国際布教師やメンバーに教えていただきながら一つ一つお勤めさせていただきました。

ハワイの寺院では、葬儀や年回忌のほか、様々な法要や行持が行われております。私自身も、日本で僧侶としてお勤めさせていただいている中では経験したことのない、七五三や引っ越しの御祈祷、お墓の撥遣供養、坐禅会など、多様な経験をさせていただきました。法要をすると、「四十九日法要は何のために行うのか」や「お塔婆やお位牌にはどんな意味があるのか」など、ご質問をいただくことも多く、私自身もその都度学びながらお答えをさせていただいています。

慰霊法要

多くの檀信徒の方が、日系三世、四世となっている現在、ほとんどの方は英語を話し、日本に行ったことが無いという方もいらっしゃいます。しかしながら、祖国を離れご苦労されたご先祖さまへの尊敬の気持ちや日本の文化を大切にしたいという気持ちを、皆さま強く持っていらっしゃいます。

そのため、法要を行う際には、その法要を行う意味や、お焼香の方法などについてなるべく丁寧に説明するように心がけています。法要の後、「正しいお焼香の仕方を初めて知った」「子どもたちに知ってもらえてよかった。説明してくれてありがとう」と言っていただくと、とても嬉しく思います。

今後も、若い方にも分かり易く仏教について、また曹洞宗の伝統について伝えていけるよう心がけていきたいと思っております。

ハワイの寺院では、法要以外に、寺院運営のための資金調達として、バザーやフードセールなどのイベントを開催することが一般的です。シイタケやサトイモを使った満徳寺特製の「煮しめ」は地元の方から評判で、販売の際には、買い求める人々が早朝から列を作る人気振りです。また、「チャオファン」という麺料理や、地元の野菜を使った漬物など、多くのレシピが婦人会の会員の手で世代を経て受け継がれてきました。料理を通じて人々の交流が生まれ、次の世代へと文化が繋がれてきました。そしてその継承の場をお寺は担ってきました。

これまで数回、バザーなどのイベントを経験させていただきましたが、数ヵ月前から準備が始まり、当日は夜が明ける前から活動し、大盛況のうちに終えることができると、大きな達成感があります。また、こういったイベントを通してメンバーの多くが「私たちのお寺を守っていきたい」という意識を持ってくださっていると感じ、本当に心強く感じます。

満徳寺では、メンバーが私のことを「センセイ」、寺族のことを「オクサン」と呼びます。お寺に来るメンバーたちは「ハロー、センセイ、オクサン!」と親しみを込めて挨拶をしてくださり、私たちとメンバーとの距離がとても近いなというふうに感じます。

現在、満徳寺では、海岸浸食という非常に深刻な問題を抱えています。この数年の間にも数メートルの海岸が失われ、現在では本堂の4~5メートル後ろまで海が迫ってきています。対策を施さなければ、数年後には浸食が建造物に到達することが見込まれています。私が赴任する前から現在に至るまで、幾度となく話し合いの場が設けられ、敷地の補強または建造物の移転など、大変な選択を迫られている状況です。しかしながら、満徳寺役員を中心とする海岸プロジェクトのメンバーは、前向きに粘り強くこの課題に向き合っております。

非常に難しい課題でありますが、今後とも国際布教師としてメンバーの心に寄り添い、よい方向に向かうことができるよう、微力ながら力を尽くしてまいりたいと思っております。

合掌

ハワイ国際布教師 平沢智樹 記