【人権フォーラム】『同和問題』にとりくむ宗教教団連帯会議主催 第38回部落解放基礎講座(関西会場)参加報告

2023.09.11

現在、曹洞宗が議長教団及び事務局を務める『同和問題』にとりくむ宗教教団連帯会議(「同宗連」)では、64の加盟教団と3つの協賛団体がそれぞれの教えの違いを超えて連帯し、部落差別をはじめとするあらゆる差別の解消を目的として活動しています。その取り組みの1つに各種研修会の企画、運営があります。

7月25日から26日にかけて、「同宗連」第38回部落解放基礎講座(関西会場)が浄土宗宗務庁(京都市)を会場に開催され、30を超える宗派、団体から90名を上回る参加者がありました。

今回は、講座に参加した2名の曹洞宗人権擁護推進主事の参加報告をご紹介いたします。

 

会場となった浄土宗宗務庁

第38回部落解放基礎講座を受講して
曹洞宗神奈川県第2宗務所
人権擁護推進主事 中野琢哉

『同和問題』にとりくむ宗教教団連帯会議(以下「同宗連」)の第38回部落解放基礎講座(関西会場)が7月25日、26日の2日間で京都・浄土宗宗務庁において開催され、役職として参加をさせていただきました。受講者は宗教、宗派さまざまで、年齢も20代から80代と幅広く、それぞれが真剣に講義を聴講していました。

初日は、講義Ⅰ「被差別部落の歴史に学ぶ」と題して講師の方に部落差別の歴史と、「部落差別」と「部落問題」の違いを学びました。

部落差別の歴史では、江戸期の身分は流動的で、むしろ明治期の「解放令」によって一部の人たちが部落民であったとされ、差別されるようになったと学びました。「部落差別」は偏見によって、特定の地域の出身、居住者または、その血縁、地縁につながると見做される人たちへの不当な差別で、「部落問題」は部落差別に起因する社会問題であるとのことでした。

また、講義Ⅱでは、「部落差別の現状と課題」と題して講師の方にご自身の経験に基づき、平成、令和になってもいまだに、差別されている現実を聴講させてもらいました。また、人権に関する人の在り方として、1…無関心・無知・傍観者、2…差別をする人、3…差別を受ける人、4…差別と闘う人、というような4つの分類に分け、差別を知り、差別・人権に対する学習を繰り返し学ぶことによって、みんなが四の分類になれれば良いと話されていました。

2日目は、DVD『ともに未来へ―宗教者のさらなる実践―』を視聴し、講義Ⅲ「宗教と部落差別問題」と題して講師の方から「同宗連」結成の歩みや、活動について学びました。「同宗連」の結成にいたる直接的な契機は、1979年の第3回世界宗教者会議差別発言事件でした。「同宗連」の結成当初は55教団3協賛団体であったのが、令和4年4月19日現在で64教団3協賛団体が連帯して取り組んでいるそうです。人材育成にも力を入れているとのことで、部落解放基礎講座を全国2会場で、「同宗連」研修会ではフィールドワークを中心とした研修、教団行政責任者研修会、「狭山」現地調査学習会を毎年開催しているとのことでした。

最後になりましたが、「同宗連」には有意義な学び場をいただき、感謝申し上げます。

 

第38回部落解放基礎講座に参加して
曹洞宗長野県第一宗務所
人権擁護推進主事 山口泰祐

去る7月25日~26日の2日間、場所は京都市内にある浄土宗宗務庁に於いて「第38回部落解放基礎講座」が開催されました。「同宗連」主催のこの基礎講座に初めて参加させていただき、とても大きな学びがありました。

開会の挨拶をする伴乃昶(おおともだいえい)浄土宗人権センター長

初日の講義の内容は、立命館大学畑中敏之名誉教授による「被差別部落の歴史に学ぶ」、反差別・人権研究所みえ事務局次長、本江優子さんからお話をいただいた「部落差別の現状と課題」。翌日は同宗連30年の歩みを映像化したDVDの鑑賞、臨済宗妙心寺派・東海元昭ご住職による「宗教と部落差別問題」というテーマで各々の方から貴重なご講義をいただきました。

最も印象に残った講義は、三重県からお越しいただいた本江さんのお話です。自分が部落出身だと初めて知ったのは中学2年生のときとのこと。しかし、20歳までは「だから何?」という感じで部落のことや人権のことなどまったく関心が無かったそうです。

その後、20歳のときに自分自身がひどい差別に遭い「これが部落差別か」と初めて受け止めたと言われていました。実際体験した人の心の深い悲しみや怒りを、本江さんの言葉でお聞きすることが出来て、とても心が動かされました。さらに、「関心がない」ということが悪い訳ではなく、むしろそれは多くの人にとって正直な感情なのではないかと感じました。自分自身差別を受けていないと思う人たちは、何をきっかけに差別問題に向き合い、「人権的感性」に目覚めるようになるのか?という問いを、私自身も考え深めていきたいと思いました。

講義の様子

また、2日間の研修を終えた帰りに、101年前に全国水平社が生まれた旧岡崎公会堂跡地に寄りました。そこで、今から100年も前に人権問題と闘っていた日本の歴史的事実に触れ、ふと思い出したことがありました。自分が新婚旅行で訪れたアメリカ・ニューオリンズと、7年前に旅したアフリカ・ガーナでも、黒人差別などの人権的歴史に触れた機会があったこと、そこで感じた「人権的感性」と今回全国水平社創立の地で感じたそれに、人種や国境などを越えて共通するものがあることに気づきました。

現代の日本では「関心がない」という人が多いかもしれませんが、国境や時代を越えて人権問題と闘ってきた人たちや、志半ばで亡くなられた人たちに思いを馳せると、自分は祈るような思いになりました。この「人権的感性」を一人でも多くの方と共有できるよう努めてまいりたいと、改めて思いました。
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「同宗連」第38回部落解放基礎講座(関東会場)は12月5日~6日に開催を予定しています。詳細は人権擁護推進本部までお問い合わせください。

人権擁護推進本部 記