【International】大韓仏教曹渓宗総務院長表敬訪問・2025年燃灯会参加報告

2025.06.23

2023年の調査によれば大韓民国において、5163万人の人口のうち、仏教徒の占める割合は人口の17.9パーセントであることが報告されています。いくつもの伝統的仏教教団はありますが、その中で最も規模が大きいのが曹渓宗となります。

宗門との関係においては、2011年3月11日発災の東日本大震災に際して、東日本大震災で犠牲になった方々のため、被災地で追悼法要を執り行いたいとのご提案をいただき、7月6日から9日の日程で訪日、7日には大本山總持寺で「大韓仏教曹渓宗・曹洞宗代表者懇談会」を行い、公益社団法人シャンティ国際ボランティア会に義援金として2000万円を寄託、翌8日には宮城県仙台市林香院で合同の「東日本大震災物故者慰霊法要」が執り行われました。

以来、平成27年には朝鮮半島統一と世界平和を祈願する大会(世界平和調和会議)、燃灯会に参加するなど交流は続き、そしてこの度の服部秀世宗務総長、圓通良樹総務部長による、4月26日から28日の日程での大韓民国訪問の運びとなりました。これは、令和6年6月27日、第41回日韓・韓日仏教交流大会が増上寺を会場に開催された折、大韓仏教曹渓宗眞愚総務院長が曹洞宗宗務庁を表敬訪問され、ご招待いただいたことが実現するかたちでありました。日本の伝統仏教教団としてはきわめて稀有であり、他に類を見ない画期的な事例であります。

3日間の滞在中は爽やかな好天に恵まれました。4月26日午後2時、大韓民国ソウル特別市鐘チョン路ノ 区に所在の大韓仏教曹渓宗総務院を訪問、眞愚総務院長を表敬訪問いたしました。応接室に招かれ、ご挨拶の後で服部宗務総長よりこの度のご招待に対する御礼と、3月21日に韓国南東部で発災した山火事へのお見舞いの言葉が丁重に述べられ、眞愚総務院長からは謝辞が述べられました。

大韓仏教曹渓宗 眞愚総務院長(中央)と

その後、服部総長からご自身で揮毫された「和敬」の掛け軸と英語翻訳版『正法眼蔵』などが贈呈され、この言葉の意味するがごとく、調和を保ちつつ、互いに敬意を持って今後も交流を続けていきたい旨述べられました。これに対し眞愚総務院長からは、返礼として、曹渓宗の宗祖である道義国師が建立した陳田寺が復元された際に出土した当時の瓦や石を磨いて作った石塔が贈られました。懇談は終始和やかに進み、記念写真を撮影し、大韓仏教曹渓宗総務院を後にしました。

午後4時過ぎ、曹渓宗が運営する東国大学へ移動、屋外運動場において、灌仏の儀式と法会、参加者によるダンスが行われる燃灯会開幕式(オウリムマダン)に来賓として参列し、観客席を埋め尽くす満場の参加者の一体感と熱量の大きさに圧倒されました。

熱が冷めやらぬままに参加者とともにバスでソウル特別市内中心部へと移動し、燃灯行列の出発地である興仁之門、通称「東大門」で、行列の出発に備えました。

この燃灯行列を含む燃灯会は、新羅時代に始まり、受けつがれてきた旧暦4月8日に釈尊の降誕を祝う伝統的な祭りであり、灯されるランタンには智慧と慈悲、幸福と平和などの祈りが込められます。また時代を経て変わってきた包容性で国籍、人種、宗教、障害の境界を越えて文化的多様性を示す点、社会的境界を一時的に崩し喜びを分かち合い危機克服に重要な役割を遂行するという点などが評価され、2020年にユネスコ人類無形文化遺産に登録されました。期間中大韓民国内の寺院では境内に色鮮やかな提灯を釣り、一体感をもって釈尊の誕生を祝います。

今年の燃灯行列は、5月5日(子どもの日)が旧暦の4月8日にあたることから、選ばれた子どもたちが眞愚総務院長と政府関係者とともに最前列に、服部宗務総長を含む各国の代表、韓国各宗派の院長が2列目に入り、東大門を起点として鐘路の大通りを曹渓寺付近まで約5キロの道程を、蓮のLEDランタンを持ちながら鼓笛隊と山車に先導され声援に応えながら緩やかな速度で歩きました。その後観覧席に移動し、アンバサダーとして燃灯行列を観覧し、第1日目の日程は終了となりました。この行事のために完全に通行止めとなった大通りの左右を埋め尽くす観客は50万人、実際に行列に参加したのは5万人ほどでありました。韓国仏教諸宗派をはじめ東国大学の学生の他、ミャンマー、スリランカ、ベトナム、モンゴルなどからも参加があり、それぞれの国の燃灯を披露し、行列に加わっていました。またこの様子は仏教専門テレビ局により、7時間の生中継が行われました。

4月27日午前中は伝統文化広場を視察、大韓民国内の諸団体や参加各国がテントを並べそれぞれに工夫を凝らし出展されたブースを視察しました。日本からは愛知県地蔵寺が「JapanBuddhism ZEN」として出展、檀信徒や現地ボランティアにより運営されたブースでは、坐禅体験と折紙、抹茶を提供し盛況でありました。

続いて境内に総務院を有し、大韓仏教曹渓宗の総本山である曹渓寺を改めて訪れ、本堂において五体投地での礼拝をもって参詣しました。本堂内に供えられた数えきれないほどの小さな燈明に、現地の人々の信仰の深さを身をもって感じることとなりました。また曹渓宗運営の仏教書専門店においては、頒布物の種類や調った装丁、販売方法、販売の媒体など、質問を交えながら丁寧に視察されました。

午後にはソウル特別市郊外、北漢山国立公園の西側に位置し、ソウル四大名刹の一つに数えられる津寛寺を訪問、羅漢殿において特別祈祷法要を執り行っていただきました。津寛寺は大雄殿、冥府殿、弘済楼、動静閣、羅漢殿、独聖殿、七星閣、那迦院、客室などから成り、自然の食材を利用した精進料理で知られています。宿泊体験プログラム「テンプルステイ」を受け付けており、燃灯会期間中、訪問した4月27日にも駐車場に入る車が多くの列をなし、一万食の食事を提供したとのことでありました。寺院子ども会のメンバーとの交流後、法海住職とお茶をいただきながら懇談し、同寺を後にしました。

最終日となる4月28日には、ソウル特別市内を東西に流れる漢江の南側、教育・文化の中心、経済活動の中心である江南地区に位置し6万平米の敷地を有する奉恩寺を訪問しました。本堂にあたる大雄殿や1856年に建てられた板殿など約20棟の伽藍が林立し、季節の花々が色鮮やかに咲き、高さ32メートル、韓国最大の弥勒大仏を有します。ここには20人を超える僧侶が所属し、200人の従業員が従事しているとのことでありました。応接室において元明住職と対面、寺院の運営面や日本との違いなどについて、率直に歓談、交歓する場となりました。

これをもってこの度の大韓民国訪問におけるすべての日程は終了となり、金浦国際空港へ移動、帰国の途に就きました。

先述のとおり、特別に招待を受けての宗務総長による大韓仏教曹渓宗総務院長の表敬訪問は、日本の伝統仏教教団として前例に類を見ない、大変に意義深いことでありました。この実現にあたっては、20年間にわたり燃灯会に出展を続け、大韓仏教曹渓宗との交流を継続し深めてきた、宗議会議員神野哲州老師の多大なるご尽力の賜であり、心からの敬意を表するとともに深甚なる感謝を申し上げます。また、現地での日程に同行し通訳をお務めいただいた、大韓仏教曹渓宗海外特別教区諮問委員を務める尹慧雲師にも心より御礼を申し上げるとともに、海外宗教事情視察員として全日程にご同行いただいた群馬県雲門寺住職古溪理哉師に対しても心より感謝申し上げます。

この度の表敬訪問、燃灯会参加を契機として、教化部国際課では今後アジア地域における仏教文化交流にも目を向けてまいります。

教化部国際課 記