梅花流詠讃歌【梅花照星に似たり】⑩
今年は2025年、21世紀最初の四半世紀ということになります。この四半世紀という表現をする人は今現在、どれくらいいるのでしょうか。恐らく若い世代の方は用いることは少ないかと思います。一世紀の四分の一ということですから、普通に25年といえばいいと思いますが、25年という歳月に箔を付けた表現なのかも知れません。
実は私にとってこの「四半世紀」が今年のキーワードといってもいい言葉なのです。2000年、現在住職を勤めるお寺とご縁を結び、仏前結婚式を挙げた日からちょうど四半世紀、25年の節目となるからです。
仏前結婚式は、この世の中で互いに巡り合うことができた者どうしが、浅からぬ縁に感謝し、お互いが年齢を重ねていく中で、励まし合い支え合っていくことを誓う式です。
一般に結婚式というと、神前式や教会式、あるいは人前式がありますが、仏前結婚式は寺院後継者の場合に行われることが多く、そうではない方からすると馴染みが薄いかも知れません。
また、現代の若い世代の方の恋愛・結婚観も以前とは変化している傾向もあり、伴侶を持つこと、結婚式を挙げることが必要と思っている人ばかりではないでしょう。 梅花流詠讃歌に「結婚讃歌 」という曲があります。この曲は仏前結婚式の式典中に組み合わせて使用する曲として作られました。三番の歌詞では、結婚の誓いを詠います。
二人のいのち結ばれて 一つに燃える幸福を
希望の明日にかざしつつ 強くやさしく生きてゆく
2人の想いが一つとなって実を結び、晴れて結婚することができました。私たちは今、それぞれの命が結ばれ、ともに生きていくことのできる幸せをかみしめています。明日に希望を抱きつつも、忍耐強く、慈悲深く今日を大切に生きていきます。
私自身もそうですが、読者の皆さんの中にも結婚当初はこうした自覚をお持ちになった方もおられるでしょう。では、今はどうでしょうか。
竹内まりやさんの「家に帰ろう(マイ・スイート・ホーム)」という曲は、結婚生活も長くなった熟年夫婦について書かれた歌詞です。 同じ顔を見ながら長く生活していると知らず知らず、そこには慣れや甘えが生じ、相手の言動に嫌気が差したり相手の欠点ばかりが見えてくることもあります。でも最終的には夫婦が我が家であり、帰る場所なんだ、と竹内さんは教えてくれます。
あれから四半世紀、今私は「結婚讃歌」にある誓いをもう一度振り返り、「家に帰ろう」という想いを新たにするのです。
静岡県官長寺 住職 大田哲山