【International】海外特別寺院「禅源寺」70周年記念行事を終えて

2026.02.25
禅源寺

令和7年11月30日(日)、ブラジル連邦共和国サンパウロ州モジ・ダス・クルーゼス市に所在する、ブラジルで最初の曹洞宗寺院・永昌山禅源寺において、開創70周年記念行事が勤修されました。ブラジル国内をはじめ、日本、アルゼンチン、コロンビア、パラグアイ、ペルー、米国など各地から随喜の僧侶が参集し、檀信徒・来賓と合わせおよそ300名がこの節目を寿ぎました。

前日の29日は、首座入寺式、土地堂念誦といった結制諸行事が勤修されました。開山歴住報恩諷経においては、かつて禅源寺において南アメリカ国際布教師を務められた佐藤鴻舟師が導師をお務めになり、御開山さまをはじめ歴住諸位に、丁重なる焼香と礼拝を捧げられました。

当日早朝、境内では日本語、ポルトガル語をはじめとする多言語が交わり、遠来の再会を確かめ合う交歓が穏やかに広がっていきました。70年の歩みは、多くの勝縁と慈恩に照らされながら積み重ねられてきたものであります。

午前9時より、清野暢邦南アメリカ国際布教総監導師のもと、開創70周年慶祝転読大般若が厳修されました。その後、首座法戦式、さらに檀信徒総回向が勤められました。般若の風は未来への誓願を運び、金炉より立ち上る香煙は過去への報謝を届けます。そして「今を生きる自己」を法に照らし返す修行として法問が交わされ、日々の護持と修行が途切れなく受けつがれ、綿密なる傳燈が確かに一路に通じていることを証した各法要と相成りました。

続いて、モジ・ダス・クルーゼス市代表の祝辞ならびに禅源寺に対する市からの表彰が行われ、当寺が坐禅や先祖供養の場のみならず、ヨガ教室やラジオ体操、保育園の催しの場などとして、地域社会の中で信頼を重ねてきたことがうかがえました。引き続き、服部秀世宗務総長より寄せられた祝辞が、清野総監により代読され、草創以来の功績と護持の尊さが讃えられました。最後に、檀信徒の表彰が行われ、長年にわたり当寺を支えてこられた方々の福徳が、あらためて丁重に顕彰されました。

法要後には、枯山水の庭に桜とブラジルの国花であるイペーの植樹が行われ、場所を移して昼餐会が大ホールで催されました。清興として地元太鼓メンバーによる演奏が披露され、理事長らによる謝辞をもって、盛会裏に終わることができました。

本記念行事の円成を支えた大きな柱の一つが、檀信徒を中心とする伽藍整備であります。禅源寺では約2年にわたり、本堂の修復、建物の塗装、屋根の補修、納骨堂および待合室の新設など、多岐にわたる改修が進められてまいりました。費用は檀信徒の浄財をはじめ、地元の日系企業・商店などからの寄付により賄われました。ひとつひとつの積み重ねが、伽藍を整えると同時に、心を一つに調える道でもあったと拝察されます。

中でも枯山水の庭は、造園の経験をもたない檀家有志が、禅の精神を手がかりに、ブラジルという土地と調和するよう功夫を重ねて築き上げたものです。石と砂、植栽の取り合わせは、完成というより「今後も手入れされ続ける場」として息づいており、落成後は来寺者の目を引く象徴的な空間となっています。伽藍の整備が単なる修繕にとどまらず、寺院を護持する誓願の可視化でもあることを、物語っているように感じられました。

さて禅源寺の開創は、ブラジルに移民していた信者より、正式な開教を願う要望書が提出されたことに端を発します。これを受け、当時管長であられた髙階瓏仙禅師が渡伯の意を持たれ、昭和30(1955)年9月8日、御歳80にして御来伯されました。9月11日に禅源寺の入仏式を勤められた後、約3ヵ月にわたりブラジル全土およそ80ヵ所をご巡錫され、各地で法縁を結ばれました。今でも檀信徒の中には、幼少期に髙階禅師に相見なされたことや、自宅にお泊まりいただいた折の思い出を語ってくださる方もいらっしゃいます。なお髙階禅師は、その10年後の昭和40(1965)年にも、ブラジル開教10周年記念法要にご来伯なされています。

植樹

以来、七十星霜。かつて日本人移民の方々の心の拠り所として灯された法燈は、今や現地の人々が坐禅や法要を通じて心の安寧を見いだす場ともなり、その煙気は遍く十方を薫じています。服部宗務総長の祝辞の結びに、「本記念行事の開催に尽力された関係各位に心から敬意を表し、一仏両祖のみ教えがブラジルの曹洞禅の源より、南アメリカの地に普く永に昌ますことを祈念申し上げ、お祝いの言葉といたします」とございました。

まさしくこの歩みは、仏祖の恩光と檀信徒の献身によって織りなされた尊き法縁の結晶でありました。禅源寺が育んできた法縁が、今後も地域の人々とともに深まり、南アメリカの地における曹洞禅の法燈が、福寿無量なる未来へと傳っていくことを願ってやみません。

この度の記念行事にあたり賜りましたご法援ご法愛に、衷心より拝謝申し上げ、当記念行事のご報告とさせていただきます。

南アメリカ国際布教総監部 書記 田原良樹