梅花流詠讃歌【梅花照星に似たり】⑰

2026.05.01

暁烏 敏 なんと読むかご存じでしょうか。

「あけがらす はや」。この方は、私の故郷、石川県出身の浄土真宗大谷派の僧侶の名前です。

暁烏さんは近代的な哲学思想を広め、日本の仏教界に大きく貢献されました。

生涯、幾多の和歌を詠んでいますが、母をおもう一首に「十億の人に十億の母あらむも わが母にまさる母ありなむや」という歌があります。

この歌には早くに父親を亡くした敏が、自分を守り育ててくれた母の恩を偲ぶまごころが込められています。

歌詞にある「わが母にまさる母ありなむや」は、自分の母が一番だということではなく、私の母はこの人しかいない、かけがえのない存在なんだと、理解すべきでしょう。

観世音菩薩御和讃かんぜおんぼさつごわさんは、観音さまの功徳を称える御和讃です。一番には、

慈悲じひまなこあたたかく  まどかに智慧ちえちわたる

この世のははのおん姿すがた  南無なむ大悲だいひ観世音かんぜおん

とあります。歌詞に詠われる慈悲のまなざしと豊かな智慧は、観音さまの功徳をふまえたものです。そのまなざしは母親が子どもを見つめる時のように、やさしく慈しみにあふれているところから、母の姿になぞらえています。

観音さまが女性ということではなく、慈悲のまなざしの表現として、「母のおん姿」と詠っているのです。

昨年の4月、実母の13回忌をお勤めしました。

私は普段から姿勢が悪く、背中を丸めている方なので、生前、母に会う度に「背筋をしっかり伸ばしなさい」とよく叱られたものです。

その言葉に、いつもうるさいなと感じたものですが、今思うとそれは、あふれる慈悲のまなざしから生じた、子を思うがゆえの母の導きだったのでしょう。

5月の第2日曜日は母の日です。人それぞれに母親がいますが、観音さまのように慈悲のまなざしで見守ってくれる姿を思いながら、ご恩返しをしたいものです。

静岡県官長寺 住職 大田哲山