【人権フォーラム】2025(令和7)年度第2回人権擁護推進主事研修会開催報告

2026.05.08

2026年3月11日から13日にかけて、曹洞宗檀信徒会館を会場に人権擁護推進主事研修会が開催されました。

初日は、国立ハンセン病療養所長島愛生園に約80年間入所されている宮﨑かづゑさんの生活を描いたドキュメンタリー映画『かづゑ的』を上映し、ハンセン病問題について理解を深めました。2日目は、映画『かづゑ的』でナレーターを務めた斉藤とも子さん、助監督の土井かやのさんによる講義「かづゑさんから学んだこと」、続いてフリージャーナリスト西田昌矢さんによる講義「~私は部落から逃げてきた・取材を通じて見つめ直した人権~」の後、班別会で参加者同士の意見を交換しました。さらに午後には、講義三としてパネルディスカッション「『差別戒名改正督励』とは何だったのか~現代の主事への問いかけ~」が行われ、久保井賢丈人権教育啓発相談員の進行のもと、我孫子高宏前人権擁護推進本部事務局長、綱木史祐元人権擁護推進本部員、藏野嗣雲北海道第二宗務所人擁護推進主事が登壇し、差別戒名改正督励の歴史的経緯と現在も続く課題について考えを深めました。3日目は、水平社博物館学芸員の佐々木健太郎さんによる講義「水平社博物館と人権学習」、宗門の取り組みと現状報告、班別会を行い、人権本部より令和8年度の事業計画案などを伝達し閉会となりました。

今月号の人権フォーラムでは、講義3のパネルディスカッションに登壇された藏野嗣雲人権擁護推進主事より、参加報告をご寄稿いただいております。

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差別戒名改正督励事業に関する学びと課題

北海道第二宗務所人権擁護推進主事 藏野嗣雲

登壇する藏野主事(壇上左から2番目)

このたび、令和7年度第2回人権擁護推進主事研修会におけるカリキュラムのひとつであった、差別戒名墓石改正督励事業に関するパネルディスカッションにパネリストとして参加する機会を得て、改めて本事業の意義と課題について深く認識いたしました。

差別戒名の問題は、宗門が自らの歴史を見つめ直し、人権の視点から過去の差別の現実に向き合う重要な課題であると受け止めております。

墓石に刻まれた差別戒名を改正することは、故人の尊厳を回復するのみならず、ご遺族や関係者の心に長く残されてきた痛みに向き合うことであり、寺院の姿勢そのものが問われる取り組みであると感じます。また、事前打合せや当日配布の資料のひとつに含まれていた当時実施された実態調査アンケートについても考えさせられるものがありました。その背景には、この問題が各寺院にとって極めて重い課題であり、回答すること自体に大きな負担が伴ったこと、あるいは実態を把握していてもなお表面化しにくい事情が存在していたことなどがあったものと拝察いたします。回答数が限られていたことからも、この問題が各寺院において慎重な対応を要する課題であったことがうかがわれます。

わたしは北海道に生まれ育った者として、日常生活において部落差別が顕在化しにくい地域性を感じることがあります。しかしながら、それは北海道が部落差別と無関係であることを示すものではありません。以前受講した人権センターながの事務局長・高橋典男先生の講義で語られた「北海道も決して部落差別と無関係ではないことを忘れないでほしい。北海道在住者の中にも部落にルーツを持つ方々はたくさんいる」とのお言葉が強く心に残っており、差別が見えにくい環境にあるからこそ、なお一層丁寧に学びを深めていく必要があることを痛感しております。

わたしたち僧侶にとって人権に関する学びは、単なる知識の習得にとどまるものではなく、苦しみを抱える人びとに寄り添い、その尊厳の回復を願う菩薩道の実践にほかならないものと確信しております。

今回の登壇を通して、差別戒名墓石・過去帳の改正督励事業は、過去の問題を整理するだけでなく、現在そして未来の寺院、さらには僧侶の在り方を問い直す営みであることを、あらためて強く認識いたしました。今後も学びを深めつつ、本課題に真摯に向き合ってまいりたいと存じます。

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次回の人権擁護推進主事研修会につきましても、聴講いただくことが可能です。詳細については、改めてお知らせいたします。

人権擁護推進本部 記