【人権フォーラム】地域を越えて学ぶ―熊本県第一宗務所と鹿児島県・沖縄県宗務所の連携
2025(令和7)年度をもって、管区ごとの役職員人権啓発研修会は本部事業として一定の区切りを迎えました。今後は、宗務所単位での研修会の充実や、地域の実情に応じた複数宗務所での合同開催、大規模な学習機会への支援など、「自主」的な学びを後押しするかたちへと重点を移していくことになります。
そうした中、熊本県第一宗務所と鹿児島県・沖縄県宗務所では、2年続けて連携のもとに学習の機会が築かれてきました。一昨年度は合同開催として、令和7年度は鹿児島県・沖縄県宗務所が熊本県に赴いて学ぶかたちで、それぞれの地域課題と実践をつなぐ取り組みが行われました。
今回ご紹介する人権学習会は、こうした新たな学びのあり方を示す実践の一つです。今回の人権フォーラムでは、その現地での学びについて、人権擁護推進主事より寄稿いただきました。
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鹿児島県・沖縄県宗務所人権学習会熊本開催報告鹿児島県・沖縄県宗務所
人権擁護推進主事 鬼塚久明
九州管区では、例年各県持ち回りでいわゆる「管区役職員人権啓発研修会」を開催していましたが、令和7年度、大分県での開催をもって最後となりました。そのような中にあって、熊本県第一宗務所、鹿児島県・沖縄県宗務所共催という形で、令和7年1月31日、ハンセン病患者の療養所の中でも全国最大規模の一つである熊本県の国立療養所菊池恵楓園で開催されました。(現在九州管区内には熊本県に菊池恵楓園、鹿児島県に星塚敬愛園、奄美市に奄美和光園、沖縄県に沖縄愛楽園の四ヵ所あり)

今年度の研修計画を立てるにあたり、九州人権擁護推進主事会で熊本県の被差別部落のお話を聞き、現地を訪問しての学習をできたらと思い、人権教育啓発相談員の磯田浩隆師にお取次ぎを相談したところ快諾いただき、研修会を決定しました。
今回、令和8年2月9日から10日にかけて、令和7年度宗務所人権啓発研修会を熊本で開催しました。
テーマは、「部落差別の現実と今後の課題」とし、部落差別問題を正しく理解し、その深い人権侵害性や苦しみを生み続けてきた構造を学び、宗教者として差別をなくすために何ができるかを自ら考え、身近な実践に結びつけることをねらいとしました。
1日目は、菊池市内にある集会所にて部落解放同盟熊本県連合会執行委員長、支部長より現在でも部落差別問題があると次のように報告を受けました。
事例報告
一、地区対抗運動会が開かれ準備のアイロンがけの作業の際、地区の女の子が新品のアイロンを持参したが「そこから持ってきた物は使えない」と言われた。周りも学校も無反応、先生ですら自宅を訪問することはなかった。
二、学校帰りの畑で寄り道を誘われたが、本人は早く帰りたく「帰る」と伝えると「やっぱりここは被差別部落だから汚い遊びしかしないんだろう」と言われた。
これらの報告を受けて、先生向けに学習会が開かれるようになったが、時とともに「そのときの担当だから、部落だけの問題だから」と言った声も聞かれるようになった。
講師の方は「なぜ発言となったのか、そこを解明しないと。学んだものを話していかないと。この村は戦っている村なんだ、差別をなくすんだという良い感情、良い自分を形成するためには正しい教育が大事である。同時にいじめや差別を無くすことは当たり前のことだ」と現在も毎日学習会活動をされています。
2日目は、熊本中心部に近い熊本市ふれあい文化センターで部落解放同盟熊本県連合会熊本市支部支部長より地元の「ムラ」の歴史について次のようにお聞きしました。
・ この地域に「かわた」が田畑を耕作していたと記述あり(全国的に見て「皮多」の発出資料)。
・ 皮多と呼ばれる技術的集団であり武将たちの革製品を製造。皮革業(死牛馬の解体、革製品、雪駄、馬具、陣笠、太鼓)の発展、藩への上納、刑吏役(見張り、牢屋の掃除、罪人の処理、刑場の掃除)も任された。
・実際の刑執行人は武士が担った。
・ 江戸時代になると「穢多」と表記が強制され差別は一層厳しくなり、檀家制度が確立されたが、どこも引き受けず、葬儀に来てもらえず、野辺送りした。寺にもあげてもらえず、土間で対応された。
・ 明治4年、「解放令」(穢多、非人の名を廃止し身分職業共に平民とする)が出されたが、部落民の専業(死牛馬の解体)が失われ、地域外の業者(屠殺場)が入り逆に庶民は困窮した。
・明治14年「新平民」と呼称。(裏を返せば部落民からも税を徴収するためのもの)
・ 昭和12年日中戦争に突入。熊本では日本史上唯一の、国策によって行われた部落出身者中心の「来く民たみ開拓団」が満州へ移民したが敗戦と共に二百数十名が集団自殺した。
講義の後、地元の寺社や史跡の説明を聞きながらフィールドワークを終えました。
私たちの周りには、戦争や部落差別問題、狭山事件・袴田事件などの冤罪で数十年も戦い苦しんでいる人がいます。生まれた所が部落だっただけでどうすることもできない。知識不足や偏見、思いこみ、固定観念で自分を正当化するが故に専門性や技術、特技を持つ者を羨み、妬み欲しがり、否となると排除してきました。水平社宣言の「かくして生れた」の一文を改めて痛感しました。
今までの学習で知りえた制度や法律規則は、実は身分制を無くすためだけでなく税制上の問題、労働力、戦争への動員であったことも知りました。
差別される側の問題でなく差別する側の問題であり、正しい理解と認識を深める学習は必要であり、差別に苦しむ方々がいて「無知」では済まない。現地を訪れ実感すること(同事)が非常に大切であることをさらに学びました。
今なお耳に残っている言葉を以て報告を終わります。「だから人間として考えていただければ分かると思う。」
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人権擁護推進本部では今後も、各宗務所における主体的な学習や、地域を越えた連携による研修の取り組みに学びつつ、その充実に向けた支援を続けてまいります。
◆ポッドキャスト配信のお知らせ
人権擁護推進本部では、この度ポッドキャスト「わ わ わ」の配信を開始いたしました。「人権」について、宗教者と各分野の専門家の対話を通して考え、学んでいただく番組です。ぜひご聴取いただくとともに、檀信徒の皆さま方へもお薦めいただきますようお願いいたします。
◆「過去帳」等の取扱いについて
昨今、軽率な過去帳の取扱い事例がありました。過去帳・檀信徒名簿等の寺院記録につきましては、管理の再確認をお願いいたします。寺院に集まる情報は思想、信条に関わるもので、個人情報の中でも、特に慎重な取り扱いを求められています。代表役員として住職に責務がありますことを改めてご認識ください。 これらの記録情報については、原則として閲覧・開示・展示、転記・写真撮影・複写・持ち出しはできません。身元調査や目的外の家系図作成など、故人さまのお名前を不特定多数に公開するような協力は行わず、厳重な管理をあらためてお願いいたします。
人権擁護推進本部 記



