梅花流詠讃歌【梅花照星に似たり】㉑

2026.09.01

年々暑くなる夏の気温ですが、同時に暑い期間も長引く傾向にあります。「冷やし中華」が最終日と聞くと夏の終わりを感じる人もいるようですが、やはりもうしばらく残暑は続きそうですね。 

それでも、お彼岸を迎える頃になれば、境内に彼岸花が顔を出します。彼岸花の開花条件には、最低気温が二十度前後まで下がることがあるそうです。近年の温暖化によりここ数年、地中から伸びてくる時期も少し遅れているのを感じます。 

ブログで、「花が教えてくれた、生きる力」というエッセイを目にしました。著者のさくらいりょうこさんは、40年にわたる難病の闘病を経験し、「生きるとは何か」、「今をどう受け取るか」を問い続け、全国各地で講演活動を続けています。 

エッセイの中で、 

実家の庭に咲いた彼岸花について、なぜ、この花は、毎年かならずこの時期に咲くのだろうか。(中略)彼岸花は、まるで見えない時計のように「時」を刻み、「命のこよみ」を知らせてくれる存在。夏の終わりを告げるように、ある日突然、地面から姿を現し、一気に真紅しんくの花を咲かせます。(中略)彼岸花を見て、改めて思いました。「誰かのためではなく、自分のために咲く」。それは自己中心的な生き方ではなく、命そのものを、誠実に生きるということ。この静かな気づきが、私の中に長くとどまり続けています。

忘れずに咲く力と季節のめぐりがくれる気づきを、彼岸花が教えてくれたとさくらいさんは語っています。

私たちの生きる姿勢をうたう曲が梅花流にいくつかあります。「道心利行御和讃どうしんりぎょうごわさん」は、自分自身の私心ししんやとらわれを捨て、他を思う慈しみの心を実践しようという御和讃です。

 生死流転しょうじるてん現世うつせにも  こころましさわやかに
 今日きょうつとめをはげみなば 菩提ぼだいつき宿やどるなり  
 あなたをしんささえあい 希望のぞみいだすす 

目まぐるしく移り変わる現代を生きる私たちは、自我じがに振り回されない澄んだ心を持ち、日々の勤めに精励せいれいしてゆくことが大切です。そうすれば、こだわりやとらわれから解放され、落ち着いた心を保つことができると、三番の歌詞は詠います。

さくらいさんが彼岸花に見た、命を誠実に生きる生き方は、この御和讃が教える、身と心を調ととのえて爽やかに生きる生き方と私には思えるのです。

静岡県官長寺 住職 大田哲山