【International】ハワイ諸島特派巡回報告2026(令和8)年5月6日~16日

2026.09.10

◆ホノルルへの到着 5月6日(水)

5月6日、ホノルル空港に降り立った私は、ハワイ国際布教総監部書記を務める星野真隆師の出迎えを受け、まずはハワイ国際布教総監部のある「両大本山布哇別院正法寺」に拝登させていただいた。

ハワイ開教の歴史は1903(明治36)年に遡り、2028年には開教(国際布教)125周年の節目を迎える。当時は日本から船で約3ヵ月を要したそうで、その命がけの布教を展開していかれた歴代のご老師方に心より敬意を表するとともに、過酷であったであろう移住生活の中においても揺るぎなかった、一仏両祖への篤い信仰の道念と歴史の重みを感じさせていただいた。

1913(大正2)年に設立された正法寺は、一見すると体育館を思わせるほどの壮大な堂宇であり、2階に本堂、1階に会館を備えている。敷地内には日本庭園が造園され、端麗なお地蔵さまが祀られており、先人たちの信仰心と日本への深い郷愁の念が伝わってくる。総監の駒形宗二老師、書記の星野真隆師との打ち合わせを終え、翌日はハワイ島へと移動した。

 

◆ハワイ島:ヒロ・大正寺 5月7日(木)

大正寺での講習

ハワイ島東部のヒロに位置する大正寺へ拝登。同寺は2016年に100年を迎えるに際し、改修が施され、非常に明るい本堂であった。ここでは、Takenouchi慈岳師、総監老師の子弟、石田慧流けいりゅう師、そして梅花講リーダーである洋子氏に温かく迎えられ、打ち合わせを行った。資料の準備や段取り、参加者への細やかな気配りなど、特派巡回を心待ちにされていた様子がひしひしと伝わり、身が引き締まる思いであった。 

開講式でお唱えされた、海外ならではの感情が溢れ出るような声明的な旋律を持つ「三帰礼文(ヴァンダナ・ティ・サラナ)」は、新鮮で素晴らしく、心地よい響きであった。講習に参加された方の中には、講員以外の方も多く、法具はあまり用いずに曲の習得を中心とした。私なりに通訳者用の資料を準備していったが、それを慧流師と洋子氏がさらに分かりやすく通訳してくださったお蔭で、意図を超えた思いが参加者に伝わり、大変ありがたい手応えを感じた。

講習当日の朝には、参加者の皆さんが手作りされた朝食を全員で揃ってご馳走になった。また、講習後は役員を務められるデリック氏や洋子氏を中心に、ウクレレの伴奏による「まごころに生きる」の奉詠や、ハワイアンソングとフラダンスでの心尽くしのおもてなしをいただき、誠に楽しいひとときを過ごさせていただいた。

 

◆ハワイ島:コナ・大福寺 5月9~10日(土・日) 

次に拝登したのは、ハワイ島西部に位置するコナの大福寺であった。中出慈光師、ご主人のマイク中出氏、娘のエイミーさんにお迎えをいただいた。中出師の優しい笑顔と語り口調、その穏和なお人柄の中には、信者への細やかな気配りと信仰への熱意が満ち溢れていた。

滞在中の5月10日は、ハワイにおいてクリスマスやバレンタインデーに並ぶ最重要行事の一つである「マザーズデー(母の日)」であり、この日は街のレストランの予約も困難になるほどだという。

大福寺で母の日フェスティバルに参加した筆者(前列中央)

同寺では、観音堂において「母の日フェスティバル」が開催された。

堂内の机には、参拝者がそれぞれ持参した亡き母の写真が飾られて法要が始まった。

中出師のご挨拶の後、法語、坐禅、三帰礼文三拝(ヴァンダナ・ティ・サラナ)へと続いた。さらに、「延命十句観音経」を日本語原文と英語で繰り返しながら、ハワイを代表する花であるプルメリアを、一人ひとりが焼香するかのように丁寧に手向けていく。

そして法要の最後に、「観世音菩薩御和讃」を奉詠させていただいた。その後、中出師のウクレレ演奏に合わせて数曲の合唱がなされ、最後には師が作詞作曲された「I Rest My Heart(我は心を休める)」という曲が演奏された。この曲が実に優しく素晴らしい曲で、深く心に響いた。

最後に、参加者が一人ずつ前に進み出て、写真を手に母への思いを語る時間が設けられた。そこには笑いがあり、拍手があり、何とも和やかな雰囲気が流れていた。言葉はすべて理解できずとも、母を慕う温かい思いが真っ直ぐに伝わってきた。

観音堂全体が母親への敬愛の念と、観音さまの慈悲の光に包まれた安らぎに満ち溢れており、心からの感動を覚えた。

 

◆オアフ島へ帰着 大陽寺での指導者講習と龍仙寺と大陽寺 5月11~13日(月・火・水) 

ハワイ島での巡回を終えて再びホノルルに戻り、翌日は大陽寺にて指導者講習会を行った。大陽寺の歴史は古く、1903(明治36)年に広島県神石郡神石高原町・龍雲寺の河原仙英老師によって、サトウキビのプランテーションで働く移民労働者のために設立された、ハワイ諸島で最初の曹洞宗寺院である。現在は閑静な住宅街へと移り変わり、当時の面影は薄れているが、日系移民の歴史の原点がここにある。

ここでは、石井伶慧りょうけい師、寺族の郁子氏とともに、翌日の講習の打ち合わせを兼ねて、指導者講習を行った。お二人からは、日頃お唱えする機会が少ないご詠歌の曲目を増やし、講員の皆さまと共に高めていきたいというお申し出があり、今回は「迎火」「香華」を中心に研鑽を重ねた。梅花講習会の合間に、ハワイにおける梅花流の現状をうかがうことができた。かつては数十人の熱心な講員のために、日本から元特派師範の方が自費で指導に訪れていた時期もあり、講員の皆さんは大層喜ばれていたという。

しかし、日系二世・三世の高齢化が進み、指導者が石井師ご夫妻のみという現状に加え、都市化が進むホノルルでは次世代(四世以降)の参加者が減少傾向にあるようだ。

それでも現講員の中には、目標を持って検定会に臨みたいという高い意欲を持つ方もおられる。その情熱を絶やさぬよう、石井師と郁子氏は日本で開催される全国大会への参加を促し、またハワイでの検定会を毎年継続できるよう、石井師ご自身が検定試験に臨む意気込みで猛練習に奮闘されていた。そのお姿は、誠に尊く心に映った。

翌日の講習会場となった龍仙寺は、大陽寺に次いでホノルルで2番目に長い歴史を持つ寺院である。1904年にカワイロア地区に開設され、やはりプランテーション移民の心の拠り所として始まったという。この会場では、日系二世で98歳になる現役の講員にお会いした。その張りのあるしっかりとしたお声と、真摯に講習に臨まれるお姿には深い感銘を受けた。

その翌日は再び大陽寺へと会場を戻したが、両寺院の講員が合流し、2日連続で98歳から26歳までの幅広い年代のメンバーが集うという、何ともありがたい光景が広がった。

地元で葬儀がある際にメンバーでお唱えするという「無常御和讃・御詠歌(月影)」「追善供養御和讃」の奉詠では、心のこもった優しいお声と、見事に揃った鈴鉦の音が本堂に響き渡った。

改めて、御詠歌の調べが持つ力を実感した瞬間であり、ここまで講員を導いてこられた石井師、郁子氏の並々ならぬご尽力に、深く頭が下がる思いであった。

 

◆巡回を振り返って 

今回の巡回で深く感じたことは、いずれの寺院もお寺が本来あるべき「地域コミュニティの広場」として息づいている点である。 盆ダンス(盆踊り)や和太鼓、ウクレレの練習、境内の維持管理など、多様な活動を通じて常に信者が出入りする素晴らしい寺院運営がなされていた。今回の特派講習会を心待ちにされていた各梅花講員の方々はもちろん、講員以外の方も多く興味を持って参加してくださった。英語が分からない私でもウクレレが奏でるハワイアンの旋律に心が和むように、梅花の美しい調べは、言葉や国籍を超えて心に染み入るものであると痛感した。

熱心にローマ字読みのテキストと向き合い、感情を込めて旋律を紡ぐ皆さんの真摯なお姿には、大きな感動を覚えた。

現在は日系三世が中心となり、先人の歩みを踏襲して、次世代の四世・五世が共に寺院行事に参加している。講習の合間には、それぞれが持ち寄った手作りのお菓子を囲んでティータイムを楽しみ、和気藹々とした時間が流れていた。多様な文化背景を持つ人々が共に暮らす中で、おおらかに過ごす人々の暮らしと、ハワイのゆったりとした時の流れに身を置きながら、現代の日本人が忘れかけている『心のあり方』を、大切にしている姿を目の当たりにしたように思う。非常に有意義な時間を体感させていただいたことに、心より感謝申し上げたい。

 

◆アリゾナ記念館への参拝と平和への祈り 

日本を出発する前、ハワイ国際布教総監部書記の星野真隆師とのメールのやり取りの中で「ハワイに来たら訪れたい場所はあるか」と尋ねられ、私は「差し支えなければアリゾナ記念館へ行きたい」とお伝えしていた。ご高承のとおり、昨年(2025年)は終戦80年の節目であり、「終戦80年平和祈念法要並びに梅花流全国奉詠大会」が沖縄の地で開催された。

アリゾナ記念館

そして、太平洋戦争の戦端を開くこととなった1941(昭和16)年の真珠湾攻撃から、今年(2026年)は数えて85年目にあたる。この節目の年に真珠湾の地を訪れ、追悼の誠を捧げられたことには、不思議なご縁を感じずにはいられない。今なお海中深く眠る戦艦アリゾナ、その艦上に建立された追悼の場に降り立ち、犠牲者のお名前が刻まれた碑の前で、心の中で静かに読経し、追悼させていただいた。

激戦から85年の歳月が流れた今なお、海底の船体からは重油が時折ふわりと海面へ浮かび上がってくる。それは「アリゾナの涙」と呼ばれている。海底に見え隠れする船影を見つめる私の前に、まるで85年前の出来事を今に伝えるかのように、いくつかの油が漂ってきた。驚きとともに当時の惨禍に思いを馳せ、改めて胸が締め付けられるような、深い悲しみと厳粛な思いに包まれた。

現在の不安定な世界情勢を鑑みても、またこれからの世界平和を希求する視点からも、機会があればぜひ皆さまにも資料館を見学されることを強くお勧めしたい。極めて意義深い訪問となった。

梅花流特派師範 福岡県第174番 松源寺 住職 山口秀樹