梅花流詠讃歌【梅花照星に似たり】23
「魅力ある寺院作り」を掲げ、10年程前に寺院行持委員会を組織し、その一つとして「官長寺菊まつり」を始めました。
菊まつりは、菊花の展示と県内の楽器奏者による菊花コンサートという構成です。菊花展は当初、当寺檀家のMさんのみの作品展示でしたが、2年目から菊愛好家のお仲間の方がたもお誘いいただき、作品も増えました。
1つの鉢に3本の菊を植えた3本立てや趣のある盆栽、だるま作り、木の先端が下に垂れ下がった形の懸崖作り、花をドーム状に並べて作る千輪作りなどが会場に並びます。
中でも一際目を引くのは、プランター植えの菊を組み合わせ雄大な富士山をかたどった大作で、来場者には作品を背景にして写真を撮影する方も多いようです。
毎年、100点ほどの作品を出品いただきますが、残念ながら途中、Mさんを始め、出品者のご逝去により作品が減った年もありました。現在は4名の出品者の他、私と副住職の作品も加え、「菊まつり」の名に恥じない数の作品を展示し、イベントを継続しています。
長編小説『宮本武蔵』の著者である吉川英治氏は、
菊つくり 菊見るときは陰の人
という言葉を残しています。この言葉は、結婚披露宴のスピーチなどで親が子を育てることの例えとして使われることもありますが、本来は菊つくりの人を詠んだ句です。
丹精込めて作られた菊を観賞する時、菊花そのものを楽しむことはもちろんですが、菊花を育てる人たちの苦労を思いたいものです。そこから、ものごとの表面の評価だけではなく、本質をも見極めることの大切さを学ぶべきではないでしょうか。
来月はもう師走。8日は成道会です。
梅花流詠讃歌に大聖釈迦如来成道御詠歌(明星)という曲があります。
明の星仰ぐ心は人の世の
光となりて天地にみつ
明けの明星を機縁にお釈迦さまは悟りを開かれ、その教えは世を照らす光となって輝き満ちていることを詠います。
お釈迦さまが最初に説法された「初転法輪」では、仏に成る八つの正しい道(八正道)が示されています。そのうちの正見は真実を正しく見る、ものごとをあるがままに見ることをいいます。
菊つくりの人を詠う吉川英治氏の言葉の深みには、この正見の教えがあると私には思えるのです。
花の下が変色したり、葉が変色してくるとそろそろ花じまいの時期になります。また来年も多くの作品に巡り会えることを願うばかりです。
静岡県官長寺 住職 大田哲山



