【International】2016年度海外(ハワイ)徒弟研修会開催報告

2017.03.01

今回2回目となるSOTO禅インターナショナル主催の海外徒弟研修会はハワイのオアフ島で行われました。5人の子どもたちと一緒に、引率の私は12月23日から28日までの6日間をホノルルにある曹洞宗両大本山布哇別院正法寺にお世話になりながら様々な研修を行いました。

この研修会で子どもたちは「人との触れ合い」、そして「お寺やお坊さんのコミュニティの中での役目」などを学び、地元の方々との触れ合いの中で現地の生活や文化を実際に体験することができたと思います。観光で行くハワイとは違う視点から見ることができたのではないでしょうか。

海外徒弟研修会の1日は早朝6時に起床。その後洗面を済ませ、坐禅を行いました。坐禅が終わると朝課を行い、朝食をとってその日に決められた作務をすることが朝の日課となっていました。

それから、その日の日程に応じた研修の中で、ハワイの曹洞宗寺院を訪問したり、他宗の寺院や教会などを訪問したりもしました。外での研修の後は順番にお風呂に入り、就寝の9時までは自習として、それぞれその日の体験などを日記に綴ったり、学校の宿題をしたり、また他の研修生との交流を深めるための時間としました。

両本山布哇別院正法寺で開講式 (中央:駒形総監、右端:筆者)

参加した子どもたちは滞在期間中に大勢の方々と出会い、大変お世話になりました。特にクリスマスの時期ということもあったので、ホームパーティーに招待され、食事をいただいたり、招いてくださった家の方々と英語で会話をしたり、いろいろなゲームをしたりと楽しんでいました。

最初は緊張していた子どもたちもだんだんと慣れ、短い時間の中で地元の人と心が通じ合うようになりました。

課外研修では、100年以上前、日本からハワイに移民した人々の生活を知るため、ハワイプランテーションヴィレッジという博物館も見学し、大変な時代を生き抜いた移民の生活を知ることができました。そして、当時、ハワイでは少数派であった仏教が、厳しい状況におかれながらも、布教師、寺族、そして檀家さんが力を合わせてお寺の維持のために様々な活動や工夫をしてきたことを学習しました。

現在では、どのお寺にも大きなホールがあり、そこで様々な活動、サークル、習い事が行われています。こうした活動の中には坐禅会、和太鼓、公文式教室、書道、写仏、柔道、弓道、吹き矢、日本語学校、盆踊り教室、茶道、映画鑑賞、友の会(ウクレレや歌を歌うサークル)などがあり、その他に日曜礼拝と日曜学校も行っているお寺があります。

私たちが参拝した日はちょうどクリスマス。お参りの方々も多く、納骨堂にはお花がたくさん飾られていました。また、年末ということもあり、餅つきの準備をしているお寺もありました。ハワイのお寺でも葬儀や法事を行いますが、いろいろな人たちが集まる場所でもあるということを実感しました。

ハワイには「アロハ」という言葉がありますが、これは「こんにちは」「ありがとう」「いらっしゃい」「おもてなしの心」など、いろいろな意味がある言葉です。今回、私も子どもたちもこのアロハスピリットの大きな愛情と友情で包み込まれたと思います。沢山のお土産を持たせていただき、大切な思い出や経験をさせていただき、どこへ行っても親切で寛大な気持ちで迎え入れていただき、おかげさまで私たちはとても有意義な時を過ごすことができました。

別院正法寺でガーサ(仏教讃美歌)の研修中 (講師:筆者)

そして、「オハナ」という言葉もあります。これは「家族」という意味ですが、血縁で繋がっている家族のことだけではありません。例えば、ハワイではサンガのことをオハナと表現することがあります。分け隔てることなくすべての人々を含む言葉です。

今回5人の子どもたちと初めて出会ったある方に「新しい友だちができて嬉しい、またオハナが広がったので感謝するよ。」と言われました。ハワイの人々は、初めて会った人でもオハナ(友だち)として接し、このような縁を大事にしているなと感じました。

 

坐禅研修

また、この研修期間中のクリスマスの日にはカトリック教会に行き、ミサにも参加しました。私も子どもたちも仏教以外の法要に参加することは初めてでしたが、曹洞宗の子弟として育っている私たちとはまったく違う環境、文化、宗教の価値観に触れ、とても良い経験になりました。

クリスマスの翌日、私たちはハワイヘラルドというハワイの日系人の新聞会社から取材を受けました。その記者から子どもたちへの質問には「研修の目的は」、「ハワイで食べたもので何が美味しかったか」等がありました。また、記者からは「世界にはいろいろな宗教や文化があり、戦争や争い事が絶えないですが、どのようにすればみんなが仲良く暮らせるのでしょうか」と、難しい質問もありましたが、参加者の一人が「他の人の文化や宗教を経験し合えば、もっと理解力が生まれ、もっと仲良くなれると思います。」と答えていました。この返答に対し、取材していた方は大変感動していました。海外研修によって子どもたちの世界観が変わっていくのを感じた瞬間でした。

太陽が眩しく、小雨が降ると綺麗な虹が出て、心地よいそよ風が吹き、青い海がどこまでも広がり、山も谷も緑にあふれるハワイの豊かな自然は、観光地としてだけではなく、もっと深い歴史があり、様々な文化が混ざっている場所だということが研修によって分かったと思います。

 

ここで研修会参加者の感想を2つほどご紹介します。

池田楓子(中1・山形県見龍寺子弟)

私は、海外に行くのが初めてで、少し不安でしたが、大山さん(SZIスタッフ)や、海外に何度か行ったことがあるという他の参加者の方たちもいて安心しました。

ハワイに到着し日本とはまったく違う街並みや建物を見て、ハワイに来たのだという実感がわきました。曹洞宗両本山布哇別院正法寺に着いたらまず、日本のお寺との建物の違いに驚きました。建物のすべてが白く、まったくお寺という感じがしませんでした。中に入ったら、日本のお寺との共通点がたくさんありました。でも違うところもたくさんあってひとつひとつに驚きました。また、天台宗の別院も民家からお寺を建てたとは思えない立派な本堂で驚きました。

2日目に行ったハワイプランテーションヴィレッジでは、どのようにしてハワイの文化が生まれたのかがよく分かりました。また、白石家(現地メンバー)でのクリスマスパーティーでは少し英語に慣れてきて、簡単な英語での会話ができました。

3日目の朝に行ったクリスマスミサでは、初めて見たり体験したりすることばかりだったので良い経験ができたと思います。その後に、ワイキキビーチに行って少し遊びました。日本ではなかなか見られないきれいな海で感動しました。

4日目では、イオラニ宮殿ツアーができなくて残念でしたが、前日に行けなかったダイヤモンドヘッドに登れたので良かったです。頂上から見た景色はとてもきれいでまた登りたいと思いました。

5日目に行った龍仙寺では、日本語学校や餅つきなども行われていて、日本人として嬉しく思いました。最後の夜ご飯は、正法寺の方たちといただき、ゲームなどもして楽しかったです。

帰る日は、もう少しハワイにいたいという気持ちと、はやく日本に帰りたいという気持ちでした。正法寺の方たちには大変お世話になったので、しっかりと感謝の気持ちを伝えました。

今回の研修で、日本とハワイの共通点や違うところをたくさん見つけられたので良かったです。貴重な体験や見たもの、感じたもの、会った人など絶対に忘れないようにしたいです。また、今回学んだことを、これからの生活に活かしていきたいです。

 

淺井怜衣(高1・愛知県地蔵寺子弟)

昨年に続きSOTO禅インターナショナル主催海外徒弟研修会に参加させていただきました。今回はすべての日程でホノルルにある曹洞宗両本山布哇別院正法寺にて研修を行いました。正法寺では、キリスト教の賛美歌のようなガータ(讃歌)の講習や、坐禅・作務の後、朝課に参加し、ハワイでの生きた仏教に触れる機会を得ました。

ハワイには多くの日系の方が住んでいらっしゃる影響か、曹洞宗のみならず他宗の寺院も多く見られ、研修の一環としてその中の幾つかに足を運びました。寺院といっても日本のようではなく、外観や内装が教会のようであったり、あるいは白一色であったりしたので、最初は日本の寺院との大きな違いに戸惑いを覚えました。

例えば、ほぼすべての寺院で本堂は畳ではなく絨毯です。教会のような長いすが置いてあるところもありました。そのため、初めてそのような洋風のお寺を訪れたとき、私にはそれが寺院であるとは思えませんでした。ところが、あるお寺で『海外は文化が違うので、日本の文化をそのまま現地で受け入れてもらうことはできない』というお話を聞いて、私の中にあったかつてのお寺のイメージが崩れ、お寺の在り方の多様性に気づくことができました。

例えば、よく考えてみたら畳敷きであったら1年中高温多湿の環境ではカビてしまうかもしれないし、お寺でお参りするのに正座は必ずしも必要ではないと思います。私の中で知らず知らずのうちに「お寺はこうあるべき」という固定観念が生まれていたことを痛感しました。

今回の研修では檀家さんのご自宅に招かれ、法事に参加する機会もありました。参列者はハワイらしいカラフルな服装で、特に正座をするわけでもないけれど熱心に遺影に手を合わせていました。またある寺院の本堂にはレイが掛けられている仏像がありました。それらに触れ、信仰において“形式”というものは最重要事項ではなくそこにある想いこそが大切であるということ、そして、表現の方法は違っても本質は同じであるということを学ぶことができました。

研修の後半に現地の新聞の取材を受けましたが、その質問の中に「世界にはいろいろな宗教や文化があり、戦争や争い事が絶えないですが、どのようにすればみんなが仲良く暮らせるのでしょうか」というものがありました。同じ仏教でも文化が違えばその形はまったく違います。しかし私はハワイで異なる文化が融合し共存している姿を目の当たりにし、「これはこうあるべき」という偏った概念に縛られることなく、それぞれの文化を尊重する姿勢が大事なのではないか、という考えに至りました。

今回の研修で引率をしてくださった大山さん、現地でお世話になった駒形宗彦総監を始めとした現地の僧侶の皆さまに心から感謝いたします。

ハワイ移民時代についての研修(ハワイプランテーションビレッジ)

以上、この研修会の経験と想い出は、これからの子どもたちの人生にとって大切な財産になり、国際布教発展の人材育成にも繋がると思います。

ハワイでお世話になりました国際布教師の皆さま、各寺院のメンバーの皆さま、そしてハワイ国際布教総監部役職員の皆さまにこの場をお借りして御礼を申し上げ、海外徒弟研修会のご報告といたします。

(元国際布教師/山形県清龍寺副住職 大山健治記)

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