【International】オーストラリア連邦初の海外特別寺院 「洞光山直証庵」認可証授与ならびに メルボルン市・シドニー市仏教視察報告

2018.08.03

一般にオーストラリアと聞いて真っ先に思い浮かぶのは、カンガルーやコアラ、シドニーのオペラハウスやエアーズロックなど、充実した観光資源のことでしょうか。近年は留学先として、またワーキングホリデーなどを利用しての滞在先の1つとしても知られるようになりましたが、仏教、ましてや一仏両祖のみ教えが根付いているということは、あまり広く知られておりません。

 

直証庵に新たに建設された禅堂外観

本年5月1日付で、オースラリア連邦、メルボルン市で活動を続けていた直証庵が「洞光山直証庵」として、同国初の「海外特別寺院」の認可を受けました。
直証庵は、人口約482万人を擁するオーストラリア連邦第二の都市、メルボルン市の中心部から北東に15キロメートルほど離れた郊外に位置しています。平成10年春、是松慧海師が当時の自宅車庫に10人ほどが坐れる手作りの単を設置し、これを直証庵と名付け、同年9月に行われた坐禅会を最初に様々な活動が始まりました。
翌平成11年には非営利法人として登録され、平成13年、是松師はオーストラリア国際布教師に任命されました。建物は小さいながらも「メンバーとその活動こそがお寺である」との強い信念のもと、毎回30人ほどの参加がある定例の日曜坐禅会と年3回行われる弁道会摂心を中心に、創立以来、現在まで活動は継続されております。正規メンバー数は90名であり、そのほかに、行持によって参加する非正規メンバーが60名ほどを数えます。
そしてこの度、是松師の自宅敷地内に新たに禅堂を建立し、海外特別寺院として認可されました。かねてより望まれていた建物を含めた寺院としての設備が充実し、来年に予定されている創立20周年記念行事へ向け、着々と準備が進行しております。

 

海外特別寺院寺号札と認可書状

5月11日早朝、オーストラリアに到着した山本健善教化部長は、国内線を乗り継ぎメルボルン市に到着、この度の出張の最初に直証庵を訪れました。教化部長は前々日に畳が敷かれたばかりの真新しい禅堂に拝登後、書状と、釜田隆文宗務総長が揮毫した寺号札を授与しました。是松師が授与された書状と寺号札について、参集した理事に向け丁寧に説明すると、一同に喜びの笑みが溢れました。
その後の理事との懇談の場では、今後の展望や活動の状況などが報告され、活発な意見交換が行われました。また、直証庵第一道場として現在使用している禅堂も視察し、規模は小さいながらも充実した活動が続けられている様子が確認されました。
翌5月12日はオーストラリア連邦の首都であるシドニー市へ移動し、現地の仏教の広がり、また今後宗門としてオーストラリア国内における布教活動展開の可能性について視察すべく、シドニー市地域における最大の仏教寺院を訪問いたしました。

 

シドニー市郊外に所在するミングユエ・レイ・ブディストテンプルは、1982年に創立されたオーストラリア国内で最大規模の仏教寺院の1つであり、55,000人を超えるアジア系移民の信仰の拠り所となっています。その名前「レイ(LAY)=信者」が示すとおり、寺院運営はすべて信者のメンバーの手で行われているのが特徴であり、記念行事や法要は台湾、マレーシア、シンガポール、ベトナムの僧侶によって執り行われています。伽藍は大きく、東南アジア地域に所在する仏教寺院のようでもあり、仏教の広がりと信仰の篤さがうかがえました。
また、坐禅を中心とした布教活動の展開についても、シドニー市内に所在する禅センターを訪問、責任者と面会しました。
シドニー禅センターは、1979年に当時ハワイを中心に活動していたロバート・エイトケン氏によって創立され、オーストラリア国内でもっとも古くから活動を続けております。

 

ミングユエ・レイ・ブディストテンプル外観

当日は参禅会の責任者を務めるジェーン・アナンダ氏にご案内いただき、活動内容やメンバー数など詳細に説明いただきました。宗旨こそ違えども、禅の教えが生かされ、活発に活動していることが確認されました。
最後に世界遺産にも登録され、20世紀を代表する近代建築としても知られるシドニー・オペラハウスを視察しました。内部には複数のホールがあり、一般に広く会場を貸し出していることから、将来的に「禅を聞く会」などの行事の開催など、オーストラリア連邦における宗門の布教活動の展開の可能性を大いに感じ、視察を締めくくりました。
平成30年度の外務省統計によれば、オーストラリアにおける在留邦人は97,000人を超え、米国、中国に次ぐ第3位となっており、今後も増加傾向にあることが推定されております。宗門ではメルボルン市に海外特別寺院が1ヵ寺のみであり、また国際布教総監部も設置されておらず、その状況は充分であるとは言えません。来年度以降には、曹洞宗国際センターの事業の1つとして、当該国における在留邦人を対象とした坐禅会や講演会を予定しております。実績を積み重ねることで、やがては総監部の設置など、大きな展開へと発展することも含めた事業計画の策定を検討いたしております。
今回、現地における仏教や禅の広がりと、求められる需要について実態を把握することができたことは、オーストラリア連邦を中心とした、大洋州地域における今後の布教活動の展開に向けた第一歩として、大変意義深いものとなりました。

 

(曹洞宗国際センター記)

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