平成28年度梅花流全国奉詠大会 開催報告
5月18日(水)・19日(木)の両日、平成28年度梅花流全国奉詠大会が富山市総合体育館で開催されました。
同体育館は、2000年とやま国体の開催に合わせ、旧富山市体育館を建て替える形で着工され、平成11年に完成しました。都市計画のシンボルゾーンとして整備された富岩運河環水公園に隣接しており、同公園の美しい景観と調和したモダンな雰囲気が目を引く施設です。
今大会は、二日間で約8000人の参加者を集め、本年4月に発災した平成28年熊本地震をはじめ、近年相次ぐ自然災害の被災物故者を追悼する法要も営まれました。
オープニング
定刻となり、大梵鐘が鳴り響く中、大会の幕が開きます。会場は暗転し、立ちこめる霧の中、青い光にご本尊が照らされ、浄化されたかのように透明な光が会場全体を包み込みます。突如舞台中央に立ち上がる白い煙の柱の演出とともに、副大会長・横井真之伝道部長が登場しました。
横井伝道部長は開会宣言の中で、今大会で執り行われる「自然災害並びに熊本地震被災物故者追悼法要」に触れ、近年相次ぐ自然災害による被災地が一日も早く復興することを共に祈り、まごころのお唱えを届ける素晴らしい大会になることを切に念願したいと、声高らかに述べられました。その刹那、突然大きな発射音が響き、驚く参加者のもとに梅花をイメージしたピンク色の記念テープがきらきらと降り注ぎました。大会の始まりにふさわしい迫力あるオープニングとなりました。
次に、地元富山県内在住の幼稚園児による献灯献花が厳かに行われました。参加いただいたのは、全福寺・新庄幼稚園(1日目)、海岸寺・富山幼稚園、剛琳寺・めぐみ幼稚園(2日目)の園児たちです。両日それぞれ60人のかわいい園児たちがステージ両袖から、ばいかくん・ばいかさんに見守られながら登場し、緊張した面持ちで献灯献花に臨みました。
第一部 開会式・法要
内局、梅花講審議会委員、梅花流専門委員らが両班位に就き、会場内の全員により「三宝御和讃」が詠唱される中、伍香修道富山県宗務所長と大会長釜田隆文宗務総長のご先導のもと、大導師を務められる大会総裁・曹洞宗管長福山諦法禅師が入堂されました。
開会式は、拈香法語、普同三拝、「般若心経」読経、「大聖釈迦牟尼如来讃仰御詠歌(高嶺)」奉詠、回向、普同三拝の次第で行われ、引き続いて、「自然災害並びに熊本地震被災物故者追悼法要」が、同じく福山諦法禅師のご導師により「舎利礼文」読経、「追善供養御和讃」奉詠、回向の次第で行われました。
大会間近の4月14日に発災した平成28年熊本地震では、震度7の強い地震に見まわれ、尊い人命が奪われ、多くの曹洞宗寺院も被災しています。追悼法要では、自然災害に見舞われたすべての物故者の冥福を祈ると共に、被災者遺族ならびに関係者の心が一日も早く癒えるよう、まごころよりのお唱えにより祈念しました。
その後、会場の参加者との相見の拝が行われ、福山禅師より「高祖道元禅師も好まれた梅の花は、仏道に咲いた美しい花なのであります。私たちもこの花のように凛とした生き方をしましょう。移り変わる世の中で、一日一日を大切にしなければなりません」と御垂示をいただきました。
第二部 式典
式典に移り、大会長の釜田宗務総長より、「講員の皆さまが、正しい信仰、仲よい生活、明るい世の中を願い、一心に詠道に励まれているからこそ、そのお唱えは大変ありがたく、聴くものに深い感動を与えるものとなるのでしょう」と式辞が述べられました。
終わって、会場が暗転し、スクリーンにはホタルイカ漁の映像が映し出されると、2階席から富山県の講員の皆さまがホタルイカのように青く光るペンライトを振り、地元の名物をPRしました。舞台には、ばいかくんがホタルイカのコスチュームで登場し、会場を盛り上げました。
続いて、開催地である富山県宗務所の伍香宗務所長が挨拶されました。富山県の梅花講員が待ち望んだ全国大会であることに触れ、「いつかはこの富山の地で全国大会を開催したいという願いをもち、それを大きな支えのひとつとして詠道に精進してまいりました。今日、その願いと夢が会場の皆さまのお陰で実現いたしました」と歓迎の意が述べられました。
最後に、挙唱司と会場の講員全員により「お誓い」が唱和されました。1日目は富山県長興寺梅花講の松倉喜好さん、牧野美香子さん、貞昌寺梅花講の松里律子さん、2日目は報恩寺梅花講の野崎美智子さん、龍光寺梅花講の佐伯ハナ子さん、佐伯照代子さんが挙唱司を務めました。
第三部 登壇奉詠
今大会は新たな試みとして、登壇作法を説明する動画が登壇奉詠前に会場のスクリーンで流されました。この動画は事前に曹洞宗公式サイト「曹洞禅ネット」でも一般公開され、スムーズな登壇の実現に一役かいました。
登壇に際しては、司会者が登壇する梅花講のエピソードを軽妙に紹介して、会場の雰囲気を盛り上げるなか、その地元宗務所よりの応援メッセージ動画がスクリーンに映し出されました。
今回は、希望者全員での登壇奉詠となり、多い組で400名を越える講員が一度に登壇を行い、一糸乱れぬ所作法で厳かに奉詠しました。
両日ともに、12組目の登壇は、地元を代表して富山県、福井県と石川県の梅花講員による「報謝御和讃」の奉詠となり、最後は梅花流特派師範による登壇で締めくくられました。
休憩を挟み、金子清学総務部長の呼びかけにより曹洞宗義援金の勧募が行われました。ステージには、ばいかくんと、おわら節の衣装に身を包んだばいかさんも現れ、おわら節の踊りを披露して募金のご協力を呼びかけました。
熊本地震の発災から間もないということもあり、被災された方がたが平穏な日々を迎えられることを願う来場者から、2日間で合計4,014,198円という多額の浄財を賜わりました。大会2日目には、被災地より熊本県の両宗務所から講員の皆さんが参加されており、来場者の退場の際には、熊本県第1宗務所の方より、被害の報告と支援へのお礼の言葉をいただきました。
引き続いて祝辞に移り、森雅志富山市長より参加者に対し歓迎の挨拶をいただきました。富山の豊かな自然や文化のPRとともに、富山市内を走る路面電車の紹介など、観光に耳寄りな情報も含めて、地元の魅力を宣伝されました。
第四部 清興
今年の清興は、富山県を代表する伝統芸能である「越中八尾おわら節」が披露されました。「越中八尾おわら節」は、富山県八尾市の「おわら風の盆」と呼ばれる伝統行事において披露される歌と踊りで、「とやま文化財百選」事業の「とやまの祭り百選」にも選定されています。毎年9月1日から三日三晩踊り続けるこの祭りは、艶やかで優雅な女踊りと、勇壮な男踊り、哀調のある音色を奏でる胡弓や三味線の調べが特徴で、祭りの時期の三日間には20万人以上の見物客が八尾を訪れる一大イベントになっています。
清興の冒頭、托鉢姿の僧侶たちが、舞台上に並ぶろうそくに明かりを灯します。僧侶が去ると、ろうそくが灯るステージ上では、舞台両袖から静かに踊り手たちが現れ、列をなして優雅に踊りながら舞台を一巡しました。男踊りと女踊りがそれぞれ披露された後、男女混合の踊りが披露され、参加者たちは、哀愁漂う演奏と艶やかに舞う踊り手たちに見入っていました。
今回、舞を踊っていただいた「越中おわら保存会」青年団の皆さんは、高校生から25歳までの方々で構成されていて、普段は学生や会社勤めをしながら練習に励んでいます。同会では、過疎化により若者が減っている中で、「越中おわら」の伝承と育成に努力されており、「越中おわら」を通じて町の活性化と、人の集まる町づくりをしたいという思いで、日々の事業に取り組んでいるそうです。
第五部 閉会式
閉会式にあたり、詠讃師による「坐禅御詠歌(浄心)」の独詠のなか、椅子坐禅をして心を調えます。終えて、横井伝道部長より閉会の言葉がありました。本大会に参加いただいた講員の皆さんと関係者への感謝が述べられ、あわせて次回の開催地が発表されました。次回は、創立65周年の記念大会にあたり、梅花流全国奉詠大会の原点に返る意味を込めて、大本山永平寺がある福井県で開催されることとなります。
最後に、恒例となった参加者全員による「まごころに生きる」の大合唱となりましたが、今回は、特別に講員によるコーラス隊が編成され、舞台上で合唱をリードして大会の最後に花を添えました。
地元富山県の長興寺梅花講からは17人の講員が舞台に上がりました。その中のひとり、牧野美香子さんは、ともに合唱したお仲間と、今回のためにお寺で練習を重ねたと語ります。牧野さんは「(所属梅花講の)お仲間がひとりも欠けることなく全員で今大会に参加できてうれしい。健康に気を付けてこれからもみんなで詠道に励んでいきたい」と語り、また、集まった全国の講員のお仲間には、立山連峰の自然に抱かれ、富山湾の海の恵みも豊かな富山の魅力を少しでも知って欲しいと、地元の想いを代弁されました。
60年以上の歴史を持つ梅花大会ですが、まだ開催していない多くの地域があります。ここ富山は山海の恵み豊かな魅力的な土地ながら、今回は初開催ということで、講員をはじめ運営に携わった関係者にとって念願の大会となりました。
梅花流が発展したのは、詠道に励むお仲間同士のご縁の力が原動力のひとつです。そのご縁を育む梅花流全国奉詠大会がこれからも全国各地で開催されることを祈念して止みません。
来年は梅花流創立65周年を迎え、大本山永平寺のお膝元で、日頃の詠道の成果を披露していただけることでしょう。
大会の動画もあわせてご覧ください