令和元年度「禅をきく会」開催報告


2月5日、有楽町よみうりホールを会場に、曹洞宗宗務庁主催の「禅をきく会」が開催されました。
「禅をきく会」は、広く「禅」に親しんでもらうことを目的とし、一般の方を対象とする「禅」をテーマにした講演やいす坐禅の体験を行ってきました。近年では、著名人の講演だけでなく、梅花流特派師範らによる詠唱パフォーマンスを行ったり、駒澤大学禅ブランディング事業チームと合同で企画・運営したりと、伝統を受け継ぎながらも様々な工夫をこらし開催してきました。
今年は開催時間が例年より遅い16時からの開会でしたが、約620人の方にご来場いただきました。

喜美候部謙史教化部長

開会にあたり、喜美候部謙史教化部長より「坐禅とは文字どおり坐る禅です。しかしながら、坐ることのみならず私共の生活すべてに光を与えるもの、それが禅です。ご縁によって頂戴した私たちの大切な命。この命を構成するものは心と身体です。その心と身体に光を与える禅の教えを、皆さまの心と身体全体で感じ取っていただき、明日からの生活の糧としていただけましたら幸いです」と主催者を代表して挨拶がありました。

青山俊董師による講演

第一部は、今年米寿を迎えた愛知専門尼僧堂堂長の青山俊董師より「道元禅師の修行観―喜心・老心・大心の三心―」との演題でご講演いただきました。青山師は、昭和8年に愛知県一宮市に生を受け、5歳のとき、長野県塩尻市の曹洞宗無量寺に入門。15歳で得度して僧侶となり、愛知専門尼僧堂で修行に励まれました。その後、駒澤大学仏教学部・同大学院・曹洞宗教化研修所を経て、昭和39年より愛知専門尼僧堂に勤務され、昭和51年に堂長に就任されました。以降、参禅指導・講演・執筆にと活躍されるほか、茶道・華道の教授としても禅の普及にお努めいただいております。
過密なスケジュールをこなされる中、昨年は大きく体調を崩されましたが、それを感じさせない力強いお姿で、「喜心・老心・大心の三心の教え」から見えてくる道元禅師の修行観を説きつつ、祖師方が残された様々な格言を紹介し、青山師の実体験を交えながら、私たちがどのように生きるべきかを、丁寧なお言葉で時間いっぱいにご講演くださいました。
ご講演の最後は、「人生のいかなることも豊かな景色として楽しんでゆく、あるいは、一つ一つを大事に、幸いと務めさせていただく、そんな人生を歩むことができたらよい」とのお言葉で締めくくられました。

いす坐禅

講演後、曹洞宗総合研究センター宇野専任研究員により、いす坐禅の指導が行われました。いすに腰掛けて姿勢を正す僧侶を手本とし、丁寧な解説指導のもと、参加者はしばしの間、静かに自席でいす坐禅を行いました。

第二部は全国曹洞宗青年会(以下、全曹青)制作の映画『典座―TENZO―』が上映されました。その後行われた対談は、宇野専任研究員が、この度の映画制作のきっかけや意図について、立案から携わっている全曹青前副会長の河口智賢師、映画監督の富田克也氏に尋ねるところから始まりました。
河口師は「禅寺では、食事を作る役目の僧侶を『典座』といい、曹洞宗では大切な修行とされている。企画当初は『典座』を取り上げ、四季折々の食材を使った精進料理の美しさや、作法の美しさなどを描く10分程度の短編映画を作ろうと考えた。しかし、“本当に伝えたいこと”について監督と話し合う中で、構成が変わっていった」と話し、富田氏は「最初に全曹青の皆さんと話したとき、曹洞宗独自の魅力である『典座』をタイトルにしよう、とすぐに決まった。その段階で制作した予告編の映像には、料理をしているシーンなども多かった。その後、本編に取り掛かる際、私自身がもっと曹洞宗のことを知るためにも、全曹青の皆さんが感じていること、思っていることをぶつけて、答えていただけるご老師はいませんか?という話の中で、青山師のお名前が挙がった。本編の制作にあたり、最初に青山師との対話のシーンを撮影したのですが、青山師と向き合い、対話していく中で、様々な先入観が次々と打ち崩されていき、本当に伝えたいことが見えてきた」と話されました。

上映後に行われた対談

社会の中で迷い、悩み、苦しみながら生きている僧侶の赤裸々な姿が描かれていることについて、青山師は「皆と一緒に僧侶が悩むことは大事なこと。仏法の教えは、人間のどうにもならない煩悩、凡夫性があって説かれるもの。2500年説き続けられてきたのは、悩んで救われない人間がいる証拠。限りない迷いがある。しかし迷ったままではいけない。それをどう転ずるか。どう転じて花にするか。この転ずるところに、教えというものが入ってくる。ですから、人間の迷いは大切なこと。迷いとか、悩み、苦しみ、そこをどう転じて花を咲かせるかが大事ではないか」と語られました。

また、カンヌ国際映画祭やマルセイユ国際映画祭で上映された際の評価や、現地の観客の反応について、富田氏は「フランスでの反応と、日本国内での反応は、大きなところは同じであった。それは、この映画で青山師のお姿を見た方々が皆、師に魅了されてしまうこと。最初の取材で私たちが師に会いに行って、カメラを向けて感じたものが海外の方にも伝わった、という風に思っている」と述べられました。その後も、青山師が語られるお言葉に、会場全体が聞き入り、あっという間に対談も終了の時刻を迎え、盛大な拍手の中、この度の「禅をきく会」は無事閉会しました。

 

日本各地で立て続けに発生する甚大な災害支援のため、会場で呼びかけられた募金では、参加者より181,726円の義援金が寄せられました。ご協力ありがとうございました。
今後、DVD化を予定しているという映画『典座―TENZO―』に関心を寄せていただき、また、次回の「禅をきく会」にも、ぜひ足をお運びください。(文書課広報係)