大本山總持寺開山太祖瑩山紹瑾禅師700回大遠忌 北信越管区予修法要開催報告

2023.08.31

去る6月5日(月)北信越管区における大本山總持寺開山太祖瑩山紹瑾禅師700回大遠忌予修法要が大本山總持寺祖院(石川県輪島市)にて厳修された。会場となった大本山總持寺祖院は、元享元(1321)年に瑩山禅師が定賢律師から譲り受け、諸嶽山總持寺として開創した寺院である。江戸時代には加賀藩主前田家の外護を得て、永平寺と並ぶ曹洞宗の修行道場として、北陸地方を中心にその名声は広く知れ渡り、全国から修行者が集まる寺院となった。

予修法要開催を告げる山門掲示

最盛期には敷地約5万坪、堂宇80余、塔頭22ヵ寺を有した總持寺であったが、明治31(1898)年4月13日に発生した大火の災禍により、七堂伽藍の大部分を焼失し、これを機に神奈川県横浜市鶴見に移転した。

移転後は、しばらくは「總持寺別院」と称されるようになった。現在でも約2万坪を誇る広大な境内には、焼失を免れた伝燈院、慈雲閣、経蔵などのほか、時世の寄進者によって再建された太祖堂や山門の諸堂が、かつての曹洞宗大本山としての荘厳さと風格を備え、当時の面影をしのばせる。

しかしながら、平成19年3月25日、輪島沖の日本海を震源としたマグニチュード6.9の大地震(能登半島地震)の発生により、總持寺祖院では登録文化財の一七棟をはじめ大部分の建物が被害を受けた。特に坐禅堂は倒壊の恐れがあるなど、未曽有の災害に見舞われた堂宇はかつてない危機に瀕することとなった。

震災から3ヵ月後には復興委員会が立ち上げられ、復興への道のりが始まった。全国の宗門寺院の方々や復興を支援してくださった檀信徒や地域の皆さまの協力のもと、最新の工法を駆使しての修復、並びに耐震の為の地盤改良等も併せて行われ、14年の歳月を要して復興が完了した。

2021年4月には江川辰三禅師(当時)のご親香により、落成慶讃法要が営まれた。折しも開創700年の節目を迎えた記念すべき年の法要とも重なり、堅固で壮大な伽藍を有する信仰のよりどころとしての祖院の新しい歴史が始まった。

その後2年間で、能登半島では、珠洲市を中心に震度5弱、6弱の地震に見舞われ今も余震が続いている中、本年5月5日には震度6強の大地震が発生した。幸いにして門前地区の總持寺祖院は大きな被害もなく、今日に至っている。これは復興の際に行われた耐震構造建築や地盤の改良によるものである。1ヵ月後に控えた北信越管区予修、管区集会の実施に当たって計画通りに進むことができたのは、大地震にも耐えうる構造を重点に置いた復興がなされたからといえよう。

6月5日(月)、夏の日差しを感じる晴天に恵まれた輪島市門前町に、長野、新潟、富山、福井、石川の各宗務所から参加者が次々と門前に到着された。当日は北信越管区五県の九宗務所より僧侶、檀信徒約300名余りが参集し、瑩山紹瑾禅師の御遺徳を偲んだ。

午後1時30分、服部秀世宗務総長の挨拶の後、来賓を代表して坂口茂輪島市長が歓迎の言葉をのべられた。

時至って打ち出された鐘の音が予修法要の始まりを告げた。祖院梅花講の御詠歌「三宝御和讃」の奉詠の中、管区内宗務所所長が両班位に就き、大本山總持寺貫首・石附周行禅師を導師としてお迎えした。

法要は「伝供十八拝」の差定に則して執り行われた。曹洞宗で最も丁寧で格調高い法要に相応しく、厳かに進行していく法要を太祖堂に参集した300人を超える参加者はその一挙手一投足を静かに見守っていた。

導師を務める石附周行禅師

法要後、石附周行禅師の御垂示に引き続き、渡辺啓司大遠忌総監が能登半島珠洲の地震にも触れ、大変な状況の中でこの予修法要を無事に務めることができたことへの御礼を述べられた。また、来年行われる大本山總持寺開山太祖瑩山紹瑾禅師700回大遠忌に向けて本山でも準備が進められており、本法要でもたくさんの方にお参りいただきたい旨が述べられた。

休憩後、予修法要と同じ会場で行われた北信越管区集会では、開会の辞に引き続き、来賓紹介が行われ、柴田正晴宗門護持会長、屋敷智乘北信越管区長・石川県宗務所長、服部秀世宗務総長のご挨拶があった。

その後、関口道潤總持寺祖院監院により「伝光の世界~高祖~二祖~徹祖~太祖と法の命をつないで」というテーマでご法話をいただいた。関口監院は本年2月より祖院の監院に就任され、本法要円成に向けての決意を語られた。

懇談会では、屋敷智乘管区長が座長となり、出席者からの意見や要望が述べられた。今回は石川県能登地区の寺院から、1月前に起こった大地震における被害の状況やこれまでの支援の御礼が述べられた。また、今後についての課題なども提議された。それについては松原道一総務部長から丁寧にお答えをいただいた。

管区内から大勢が参加した

会の最後には福田浩管区選出理事による宗門護持会宣言が朗読され、松原総務部長の閉会の挨拶で一連の行事は無事円成した。

過疎化が進む能登の地において、交通や宿泊においても何かと不便なことも多い地域ではあるが、今回北信越管区の各宗務所からたくさんの参加者にお越しいただいたことは誠にありがたいことであった。さらにここ数年の間に開創700年・能登地震からの復興・大遠忌予修法要という大きな節目の行事も重なり、今回能登の地にて、祖院の新しい姿を多くの皆さまに見ていただけたことはとても良い機会であった。

令和6年4月1日から21日には、大本山總持寺で太祖瑩山紹瑾禅師700回大遠忌が行われる。以前にお参りしていただいた方もこの機会に再び總持寺祖院にもご参拝いただき、太祖さまの遺徳を感じていただけたらと思う。