クライメート・トランジション利付国債(GX経済移行債)への投資について

2024.02.15

曹洞宗は、資産運用を通じた社会貢献活動と、持続可能な開発目標(SDGs)達成への取り組み、そして禅の信仰実践の一環として、日本政府が掲げる国際公約「2050年カーボンニュートラル宣言」の実現に向けた先行投資である「クライメート・トランジション利付国債(GX経済移行債)」に対し、1億円の投資を実施いたしました。

 

<本債券の概要>

債券名称

クライメート・トランジション利付国庫債券(10年)(第1回)

発行日

令和6年2月15日

償還期限

令和15年12月20日

 

 

1.GX経済移行債とは

GX(Green Transformation:グリーントランスフォーメーション)とは、産業革命以来の化石エネルギー中心の産業構造・社会構造をクリーンエネルギー中心へ転換することを指し、戦後における産業・エネルギー政策の大転換を意味するものです。

気候変動問題の解決を目指す2015年パリ協定の採択を受け、期限付きカーボンニュートラル目標を表明する国・地域が急増しており、日本政府は2020年10月に「2050年カーボンニュートラル宣言」を行い、2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする(温室効果ガスの「排出量」から植林・森林管理等による「吸収量」を差し引き、合計を実質的にゼロにする)旨の国際公約を掲げています。

こうした国際公約の実現とGX時代の経済成長に向けて、2023年7月に「GX推進戦略」が閣議決定され、今後10年間で官民合わせて150兆円超のGX投資を目指すとしています。「GX経済移行債」は、こうしたGX推進戦略の柱の1つとして、2023年度から2032年までの10年間で20兆円規模を発行し、GX推進戦略の実現に向けた先行投資を支援しようとするものです。

GX投資を活性化させていくため、世界初の国によるトランジション・ボンド(個別銘柄)として、「クライメート・トランジション利付国債」と名付けて発行されることになりました。

<クライメート・トランジション利付国債について>

クライメート・トランジション利付国債 : 財務省 (mof.go.jp)

climate_transition_bond_framework_jpn.pdf (mof.go.jp)(クライメート・トランジション・ボンド・フレームワーク)

jcr_climate_transition_bond_framework_spo_jpn.pdf (mof.go.jp)(SPO/JCR)

dnv_climate_transition_bond_framework_spo_jpn.pdf (mof.go.jp)(SPO/DNV)

UoP_FY2023.pdf (mof.go.jp)(初回債充当事業)

 

2.日本のGX推進戦略(「GX推進法」について)

日本のGX推進戦略の中で重要なのが、2023年5月に成立した「GX推進法(脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律)」です。

GX推進法は下記の5つの要素から成り立っています。

(1)GX推進戦略の策定・実行

(2)GX経済移行債の発行

(3)成長志向型カーボンプライシングの導入

(4)GX推進機構の設立

(5)進捗評価と必要な見直し

今回の取り組みは上記(2)への参画を意図するものですが、関連する事項として(3)も重要となります。

カーボンプライシングとは、炭素に価格を付け、排出者の行動を変容させようとする政策手法のことで、排出した二酸化炭素の量に応じて課税を行う「炭素税」や、二酸化炭素の排出枠を市場で取引する「排出量取引制度」などがあり、排出量の削減に効果の高い手法です。

GX推進法では、こういったカーボンプライシングの中で、「炭素に対する賦課金(化石燃料賦課金)」(2028年度から)と「排出量取引制度」(2033年度から)の導入が明記されています。前者は化石燃料の輸入事業者等に対し、輸入する化石燃料に由来するCO2の量に応じて賦課金を徴収するもので、後者は発電事業者に対して有償でCO2の排出枠を割り当て、その量に応じた特定事業者負担金を徴収するものです。

GX経済移行債は、これら化石燃料賦課金・特定事業者負担金により償還されます。

 

<「GX推進法」について>

 「脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律案」が閣議決定されました (METI/経済産業省)

 20230210004-1.pdf (meti.go.jp)(GX推進法の概要)

 20230210004-2.pdf (meti.go.jp)(法律案要綱)

 

3.GX経済移行債への投資を行う意義

曹洞宗では、1992年以来、「人権・平和・環境」というスローガンを掲げ、様々な取り組みを行ってきましたが、これは貧困や差別、環境や平和の問題を包括的に理解し、連携して取り組もうというSDGsの目標と理念を同じくするものであり、「誰一人取り残さない社会の実現」は、信仰に生きる私たちにとって、生きる意味や信仰の実践に深くつながる重要なテーマであるといえます。今回のGX経済移行債への投資を通じて、世界的な気候変動問題の解決、カーボンニュートラルな社会の実現に向けた取り組みに参画してまいります。 

曹洞宗の教えには、困難を抱え生きている人々の苦しみを、少しでも和らげることが出来るよう、願い行動するという菩薩行の実践があります。これは社会全体や相手のための行いであると同時に、自分自身を仏として成長させる大切な修行でもあります。曹洞宗におけるSDGs達成への取り組みは、単に社会貢献活動としてだけではなく、禅の信仰実践として位置づけられています。

曹洞宗では、今後もSDGs達成への取り組みを通じ、更なる禅の信仰実践につとめることで、教団の社会的役割を果たしてまいります。