宗務総長談話(アジア・太平洋戦争終戦80年を迎えて)
アジア・太平洋戦争終戦80年を迎えて
第二次世界大戦の終結から80年目を迎えました。この節目の年にあたり、戦争で尊い命を落とされたすべての方がたへ衷心より哀悼の意を表し、供養の誠を捧げます。また、世界平和のために弛まぬ努力を続けてこられたすべての方に大いなる敬意を表します。
宗門は当時、国家政策や世論の流れに無批判に迎合し、積極的に戦争に加担してしまいました。この事実を深く反省し、戦争のない世界の構築と平和のために果たすべき仏教者の責務を見据え、二度と同じ過ちを繰り返すことがないよう、重ねて決意を新たにし、行動してまいります。
お釈迦さまは、
目に見えるものでも、見えないものでも、遠くに住むものでも、近くに住むものでも、すでに生まれたものでも、これから生まれてくるものでも、すべての生きとし生けるものに、幸いあれ。
と示されました。
あらゆる命は等しく尊く、生きとし生けるものすべてが共に幸いであることが、お釈迦さまの願いなのです。仏教では、すべての物事は様ざまな縁に依って生じているのであり、相互に関わり合いつながっていると説きます。自国も他国もなく自己と他己の隔絶もなく、すべての人びとが救われねば平和は実現しないのです。
道元禅師さまは、その実現の手立てを「自未得度先度他」という言葉によってお示しになりました。自らの仏道の成就を願う前に、あらゆる人びとの仏道の成就を願うとの教えです。また、瑩山禅師さまは、「必ず和合和睦の思いを生ずべし」とお示しになりました。睦み合う思いを起こせば、必ず問題を解決することができるという教えです。
私たちは、戦争の惨禍に巻き込まれ、平穏な生活を奪われた人びとをはじめ、様ざまな苦しみを抱えた人びとの声に心耳を澄まし、「ともに生きる喜び」を分かち合える世界の実現に向けて努力してまいります。
2025(令和7)年5月15日
曹洞宗宗務庁
宗務総長 服部秀世
→本談話の印刷用PDFはこちらから