迷える中年ライターが『修証義』を書き写してみた ~曹洞宗のお経を一般人が読むと?(総序・第二節)

2016.11.20

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honbun初めて触れる『修証義しゅしょうぎ』の本文を読み、鉛筆を手に書き写し、また現代語訳を読む中で感じた事を率直に語っていきます。第2回は、総序第2節について。

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ライター 渡辺ロイさん

第2節「人身得ること難し、仏法値うこと希なり」

■ライターはこう思いました

前節に引き続き、ここでも言おうとしていることはとてもシンプルです。というか、ひとつのことしか言っていません。
それは「人生というものは、とてもとても貴重なものなのだ」というワンポイント。
とても貴重で代えがたいものだから、適当に過ごしたり、流されていくような生き方はいけませんよ、とも言っています。
しかも、その貴重な人生の中で、仏教と巡り合えることはさらに僥倖だ、と。


貴重なものだから大事にしなさい。
これは反論の余地が一切ない、至極当然の指摘です。
しかし、多くの人たちはその貴重さを、ときに忘れて過ごしてしまいます。毎日の雑事に追われながら、その大事さを噛みしめるのは難しいことかもしれません。
それに関しての戒めは、このあときっと登場するのでしょう。なにせ、説教は仏教の専売特許ですからね(笑)。

ただ、この最重要ポイント以外で、少し触れておきたいことがあります。
それは仏教と「巡り合う」という感覚です。
(あ、私たちのような仏教に帰依していない、門外漢にとってちょっと気になる輪廻に関しては、また後々にお話ししたいと思います)

「巡り合う」というたとえが出てくるのは、仏教の特殊なところではないか。そう迷える中年ライターは思うのです。

ほかの多くのメジャーな宗教は、自分たちの教えを、信仰すべきものだ、と断じるところから始めています。それはルールであり、例外のないものとして扱っています。
でも、仏教は「豊かな人生を送るための、いわば真理への道程」だと言っています。少なくとも、私にはそう受け取れます。

そういう意味において、仏教は奥ゆかしいものだと感じ取れます。
信仰する個人に対しては、なかなかに厳しいことを要求する側面もありますが、それ以外のところに対しては驚くほど寛容です。
そういうスタンスが現れているのが、この「巡り合う」という表現ではないのでしょうか。

ビジネス書などで、読み進めていくうちにどうにも鼻持ちならなく感じて本を閉じてしまう。そんなことはよくあることですよね。
多くのビジネス書は、著者の成功体験をベースに、こうすれば上手く、こうしないと失敗する、と「ルール」に落とし込んでいるからなのかもしれません。
反論を許さない論理展開は、受け取る側の気持ちをくじきます。

たくさんの人に有意義な人生を送ってもらおうとしているのに、気持ちを挫いてしまっては意味がありません。
この第2節には、そんな仏教の優しいけれどとても正しいスタンスが隠れているのでは、と思ったのでした。


04_f■禅僧がライターへこう応えました

仏教との出会いを「巡り合う」と表現されたロイさんのコラム、とても興味深く拝見しました。 

「ご縁」という言葉があります。人間としてこの世に生を受け、そればかりか、仏教の教えに出会って人間のあるべき姿を追求することができる、というのは、まさに不思議なご縁の賜物です。言い換えれば計り知れない「巡り合わせ」に他ならないのです。そうした真理に直面した時、感謝と喜びの中から発せられるのが、「人身得ること難し、仏法値うこと希なり」なのでしょう。 

このことに気づいた時、きっと、「うかうかしてはいられない」という感情が湧くのではないでしょうか。毎日を虚しく過ごすことなく、少しでも、実りある一日にしたい、という気持ちが自ずとおこることでしょう?そうした「気づき」が、仏教徒の活力の源になっていると思うのです。 

その意味では、仏教は、ロイさんがおっしゃる「優しさ」の中にも、「内なる厳しさ」を併せ持った宗教と言えるかもしれません。明日をも知れぬこの世の中において、露のように儚いこのいのちをいかにして輝かせられるのでしょうか?

ともに歩んでまいりましょう。

 

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