令和7年度梅花流全国奉詠大会 開催報告
5月15日(木)、暖かな初夏の風が流れる沖縄県、沖縄アリーナを会場に、令和7年度梅花流全国奉詠大会が開催されました。アジア・太平洋戦争終結から80年を迎える本年。大会テーマを『梅花流詠讃歌の「祈り」と「願い」と「誓い」を、ここ沖縄から』と銘打たれた本大会では、曹洞宗管長大本山永平寺貫首南澤道人禅師を導師に終戦80周年平和祈念法要が併修されました。全国、そして海外から参集した梅花講員は、平和への祈りを胸に、戦争の犠牲となったすべての方がたへ供養の誠を捧げました。本大会での梅花流のお唱えが人びとの心に響き渡り、改めて一人ひとりが請願を新たにされたことでしょう。
※YouTube「梅花流詠讃歌」チャンネルにて、大会のアーカイブをご視聴いただけます。
(大会プログラムより)
梅花流詠讃歌の「祈り」と「願い」と「誓い」を、ここ沖縄から。
今は平和な、この日本という国に住む私たち。しかし80年前を振り返ると、この国は大きな戦いの最中にありました。戦場に向かった兵士はもちろん、子供を含めた多くの民間人も犠牲となりました。
沖縄戦での死者は22万人に上ります。糸満市にある平和祈念公園には 「平和の礎」と呼ばれる慰霊碑が建てられ、命を落とした人々の名前が、 兵士も、住民も、また敵側の兵士の名も含め、等しく刻銘されています。そして出身別に記された名前を見ると、全国すべての都道府県の出身者が亡くなっていることが分かります。
沖縄戦は、実は私たちにとって身近な存在であり、また敵味方を問わず失われた命の尊さを想い、二度と戦争を繰り返さないという決意を持つために、決して忘れてはならないものなのです。
―戦争のない世界を―
ここ沖縄の地で今、多くの御霊の安寧を等しく、心から祈り願い、争いのない世界の実現を共にお誓いしたいと思います。
【大梵鐘 オープニング】
壮大な音楽とともに、正面のスクリーンに「平和への祈り」の文字が映し出され、高らかに大会テーマが宣言されました。次に、服部秀世宗務総長より、沖縄本土復帰記念日に本大会が開催される勝縁に感謝するとの開会のあいさつが述べられました。「お誓い」は鹿児島県三光寺梅花講の濱崎典子さん、原田鈴子さん、古川幸子さんが挙唱司をつとめられ、参加者全員で唱和しました。


【第一部 開会式・終戦80周年平和祈念法要】
「正法御和讃」の奉詠が厳かに響き渡る中、服部宗務総長、久野宗務所長の御先導のもと、南澤管長猊下がご上殿されました。はじめに全員で心をひとつにして「三帰礼文」を唱和し、次いで「大聖釈迦牟尼如来讃仰御詠歌(高嶺)」がお唱えされ、一仏両祖へ供養を捧げました。引き続き、終戦80周年平和祈念法要として南澤管長猊下が「拈香法語」を唱えられ、「戦災精霊供養御和讃」の奉詠、また、自然災害物故者追悼法要として南澤管長猊下の「拈香」の後、「追善供養御詠歌(妙鐘)」が奉詠され、参加者全員が平和への祈りを胸に、戦役殉難者をはじめとする戦没者、多くの自然災害による物故者の御霊の安らかならんことを祈念しました。
南澤禅師様と大会参加者との相見の拜ののち、禅師様は、本大会開催の準備に当たられた多くの関係者への労いのお言葉、全国から参集した梅花講員の皆様と沖縄の地で平和祈念法要を修行し、梅花流詠讃歌を奉詠できることへの感謝のお言葉、この沖縄の地で戦争によって亡くなられたみ霊への鎮魂の祈りと世界の平和への願いを御垂示されました。本年、白寿の吉辰を迎えられた南澤管長猊下の、ご自身が経験されてきた戦争の記憶を背景に語られるお言葉とそのお姿に、参加者一同心打たれる御垂示でありました。
「聖号」がお唱えされる中、ゆっくりと禅師様が退堂され、第一部、終戦80周年平和祈念法要が終了となりました。




【第二部 登壇奉詠】 久野清志鹿児島県・沖縄県宗務所長より「この地でしか味わえない自然の美しさや、沖縄ならではの文化、食、人との出会いを通じて心に残る体験をしていただければと願っております」と歓迎のあいさつが述べられました。
次に、本大会で司会を務められた、北海道・齋藤正憲師範、石川県・日下部哲也師範、山形県・髙橋伸幸師範より自己紹介が行われ、次いで、詠讃師を務められた、岩手県・齋藤弘顕師範、山口県・渡邉博志師範が紹介されました。



本大会の登壇奉詠は、管区ごと9組が登壇し、各組、研鑽の成果を大いに発揮され、素晴らしいお唱えを披露されました。
登壇奉詠第1組 北海道管区内梅花講 『太祖常済大師瑩山禅師御詠歌(紫雲替節)』
登壇奉詠第2組 関東管区内梅花講 『大聖釈迦如来成道御詠歌(明星)』
登壇奉詠第3組 東海管区内梅花講 『追善供養御和讃1番・2番』
登壇奉詠第4組 中国管区・四国管区内梅花講 『追弔御和讃1番・2番』
登壇奉詠第5組 九州管区内梅花講 『無常御和讃1番・2番』
登壇奉詠第6組 北信越管区内梅花講 『高祖承陽大師道元禅師第二番御詠歌(梅花替節)』
登壇奉詠第7組 近畿管区内梅花講 『観世音菩薩第二番御詠歌(浄光)』
登壇奉詠第8組 東北管区内梅花講 『報恩供養御和讃1番・2番』
登壇奉詠第9組 海外寺院梅花講 『同行御和讃1番・2番』
【昼休憩】
休憩の間、正面スクリーンでは昨年11月に徳島県・城(満)寺にて厳修された梅花流歌碑除幕式の様子が放映されました。この歌碑は大本山總持寺開山太祖瑩山紹瑾禅師700回大遠忌を記念して造立されたものです。
梅花流歌碑建立除幕式前夜祭として実施された「竹灯り」は、精緻な工芸と暖かな光の美しさが大変印象的でした。除幕式では、多くの参列者が見守る中、御詠歌をお唱えし瑩山禅師へ思いを致す様子が映し出されました。さらに、大遠忌を慶讃して昨年10月18日に大本山總持寺大祖堂で行われた梅花講員の集いの様子、同年12月16日に大本山總持寺にて行われた駒澤大学附属苫小牧高等学校吹奏楽局による吹奏楽「三宝御和讃」の演奏の様子、そして最後に本大会の前日に行われた、沖縄平和祈念堂での献花式の様子が放映されました。献花式では服部宗務総長が導師をお勤めになり、宗務庁各部長、関係役員、特派師範が戦没者に対する追悼の祈りと献花を捧げ、詠讃歌が献詠されました。

【第三部 清興】
今年の清興は、地元沖縄県のあさのうら保育園の園児たちが沖縄の伝統芸能を披露してくれました。園児たちは本大会に合わせ、毎日、お稽古を行ってくれたそうです。沖縄の伝統芸能である獅子舞演舞では、可愛らしくも躍動感あふれる演舞を見せ、会場は大きな拍手と笑顔で満たされました。20名の園児が披露してくれたエイサーは、古く4~500年以前より、亡きご先祖様を送りだす踊りでもあったそうです。一所懸命に掛け声をかけながら、三線や太鼓の音に合わせ踊る園児の姿を見ると、思わず笑顔になってしまいました。最後に「彼岸御和讃」の歌唱が披露されると自然と手拍子が起こり、会場はほっこりと暖かな空気に包まれました。


清興二幕として、梅花流特派師範による「平和祈念御和讃」「三宝讃歌」のお唱えが披露されました。総勢39名の特派師範による、圧巻の奉詠が響き渡りました。
【第四部 閉会式】
詠讃師・齋藤師範による「坐禅御詠歌(浄心)」の独詠にて、会場内が静寂に包まれる中、参加者一同が心静かに椅子坐禅を行いました。
その後、副大会長の髙橋英寛伝道部長より閉会の言葉として、本大会開催に際しての感謝の言葉が述べられ、また次回、令和9年に予定される梅花流創立75周年の記念大会での再会を願いあいさつが述べられました。

【フィナーレ】
最後は、恒例となっている「まごころに生きる」を参加者全員で合唱し、戦没者を供養し、平和を願う本大会は大円成し閉幕しました。
