【シャンティ国際ボランティア会(SVA)だより】令和6年能登半島地震―被災地で見たこと、感じたこと
昨年1月1日に発生した能登半島地震を受け、SVAは、被災直後から輪島市門前町で支援活動を行ってきました。SVAの能登での活動については、過去の「SVAたより」をご覧いただくこととして、ここでは私が何度か被災地を訪れ、そこで見たこと、感じたことについてお伝えします。
初めて被災地に入ったのは、昨年2月中旬のことです。平成19年の能登半島地震のとき、私は曹洞宗宗務庁福祉課の職員として災害支援に携わっており、そんな思いからの被災地入りでもありました。
辛うじて道路は応急処置されていたものの、崩れた建物などはほぼ手付かずの状況で、街並みは地震の日のままのようでした。この状況は、公費解体が本格的に始まる秋ごろまで続くこととなります。水道は使えず、生活用水は近くの湧水を汲んで使っていました。下水道が通じてトイレが普通に使えるようになったのは、半年も過ぎたころです。あまりの被害の大きさ、そして復旧の遅れに心が痛みました。
SVAは、輪島市から「禅の里交流館」を借りることができ、1階に事務機能、支援物資置き場、交流スペースを設け、2階を生活拠点にしていました。事務所には、常に人が出入りして、被災された地域の方々、外部からボランティアに駆けつけた曹洞宗青年会、NPO団体や個人、学生さまざまな人が行き交っていました。SVAの僧侶スタッフの中井康博さんは1月から被災地を離れることなく、1年以上にわたって、そこでの生活を続けていました。ほかのSVA職員も、同様に日中はさまざまな支援活動を行い、夜遅くまでSVA東京事務所、関係団体との調整など休む間もなく働いていました。

SVAの職員が長期にわたり被災地に定住し、共に生活することで、地域の方々との関係が深まりました。そして協働した活動へとつながっていくことになりました。地元の住民グループ「門前みんなのごはん」と協働して、門前の料理人さんと一緒に、被災者のニーズを取り入れた食事を作り、自主避難所、在宅避難者宅、福祉避難所に届けました。また、町の中心部までのアクセスが難しい地区の方々の声を受けて、地元のタクシー会社と協働して、入浴・買い物支援車の運行を実施しました。SVAの活動は、地域の人々を巻き込んだものが多く、行政ではできない、細かなニーズを受けての活動が持ち味かと思います。
あるとき、避難所での活動を終えて帰ろうとしていたら高齢の男性に呼び止められ、二人きりになり「あなたたちのお陰で本当に助かった。心から感謝している。お礼を言いたかった」と言われたことがあります。これまでSVAの活動をしてくれた多くの方への励ましの言葉と受け取りましたが、能登の人々の温かさを感じるともに、さらにできる限りの支援を継続していかなければならないと感じました。
さて、過疎化、高齢化が進む能登ですが、今、若い人たちが中心となり新たな試みが行われています。被災者でありながら、SVAに協力してくれた谷遼典さんは、能登に1チーム3人で行うバスケットボール3×3(スリーエックススリー)の女子のプロチームを作り、能登を元気づけようと活動しています。同じく、禅の里交流館の管理部長の宮下杏里さんは、(一社)NOTOTO.の一員として門前町の商店街にカフェを併設したコインランドリーを作り、働く場の創出と地域の人々が気軽に集まれる場を生み出そうとしています。
それぞれの人が、それぞれの立場で、能登の復興に向けて頑張っています。私たちもできる限りの応援をして、能登の復興に力添えできればと考えています。
シャンティ国際ボランティア会 理事 関根隆紀
シャンティ国際ボランティア会
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