【シャンティ国際ボランティア会(SVA)だより】ミャンマー事務所開設10周年を迎えて

2025.06.19

ミャンマーでは2025年2月1日、政変から4年が経過し、その前日の1月31日には政変に伴って発令した非常事態宣言を半年間延長するとの発表がありました。延長の理由については自由で公正な選挙のためには、安定と平和が必要であるためとのことでしたが、内戦が続く中、この延長がさらなる状況悪化につながるのではないかと大きな懸念がありました。ミャンマーの人権団体によると政変以降、6,500人以上の人々の命が奪われ、また国連人道問題調整事務所(OCHA)によれば、国内避難民は約350万人となっており、今年2025年には450万人を超えるとの予測を発表しました。戦闘が悪化する地域からヤンゴンに避難してくる数が急増することで、住宅賃料が高騰するなど、ヤンゴン市民にも影響が及んでいます。

また経済状況も悪化を続け、世界食糧計画(WFP)によると「ミャンマーのほぼ全土で内戦が続き、治安の不安定化により物資の流通が制限され、生活必需品が高騰している。加えて経済の停滞や自然災害のリスクもあり、2025年は飢餓の危機が一層深刻化するだろう」と述べています。

こうした中で3月28 日、ミャンマー中部のマンダレー近郊を震源として地震が発生し、4月9日時点で約4,300人が亡くなり、200人以上の人が依然行方不明となっています。マンダレーはミャンマー第二の都市として多くの仏教寺院が立ち並ぶ街で有名ですが、今回の地震で多くの寺院が被害を受けました。紛争下で起きた大規模自然災害により、今後の人道支援の状況が悪化することが懸念されます。

昨年2024年2月には徴兵制が導入され、国外に出る若者が後を絶ちません。また本来対象ではない子どもたちも徴兵されている状況が伝えられ、今年に入ってからは女子も対象となるとの発表がありました。この制度による人材流出は深刻な課題で、将来の国の復興・再建を考えたときに人材不足がどのような影響を与えるのか心配でなりません。

僧侶学校での移動図書館活動

さて2014年、SVAはミャンマーに事務所を開設し、教育文化支援事業から開始した活動は昨年2024年に設立10年を迎えました。NGOとして新たな国で活動を始めるにあたり、目指す支援が現地で必ずしもすべて歓迎されるとは限りません。ミャンマーでの活動開始においても、その意味でまずはその国や人々、歴史や文化などを理解し、共に活動を作り上げていく覚悟が重要でした。政変以降、NGOはさまざまな制約の下での活動を余儀なくされていますが、SVAは活動継続のための手続きを踏みながらできる支援を実施しています。過去に図書館を併設した校舎建設を支援した僧院学校に移動図書館活動を届け、子どもたちに絵本の読み聞かせを行うこともあります。こうして活動を継続できているのは共に歩んでくれているミャンマー人職員の存在のおかげです。

一方で、彼らの安全を第一に考えて活動に取り組むことが求められるため、慎重な判断が必要となり、時に想いと現実の狭間で悩むことも多い状況ですが、教育支援を止めないというスタッフたちの強い意志により一歩ずつ進んでいると思います。人道支援の継続も必須であり、厳しい状況が続いていますが、10周年の節目にスタッフたちと話したことは、中長期視点でミャンマーに向き合い、人づくりに力を入れた教育支援活動の継続の重要性です。この10年間で培った強みと、弱みをしっかりと分析し、ミャンマーの今後の5年、10年につなげていくこと、より良い教育事業を目指すこと、常に行動し変革につなげることなど、気持ちを新たにしました。

これからしばらくは今まで以上に困難が待ち受けていると思いますが、10年間で蒔いた種が消えてしまうことはないと信じています。子どもたちにとって学びは生きる力になり、そして生きる力が未来を築く、そしてその未来がミャンマーに平和をもたらすと願っています。私たちはすべての子どもたちに教育を届けることをミャンマー事務所として目指していきたいと思っています。

シャンティ国際ボランティア会 ミャンマー事務所所長兼事業部門シニアマネージャー 中原亜紀 記

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