【シャンティ国際ボランティア会(SVA)だより】ポーランド・ウクライナ避難民支援

2025.07.18

ロシアがウクライナに侵攻してから3年半が過ぎました。報道によれば全面的停戦に向けてさまざまな動きがあるようですが、その間にも戦争により多くの人の命が奪われていることに心が痛みます。一日も早い停戦を祈るばかりです。

SVAでは、3年前、ウクライナから隣国ポーランド、モルドバに避難した方々、ウクライナ国内に避難した方々に対し現地のNGOと連携して緊急の物資配布支援、子どもたちへの学習支援、成人への職業訓練を行ってきました。また、昨年よりポーランド国内に避難したウクライナの方々への生涯学習の場、地元の方々と交流できる社会統合センターの建設事業(日本外務省資金支援でNGOと連携する事業)を進めてきました。今年に入り建物が完成することを受け、地元への贈呈式を行うこととなりました。

そして今年3月10日、私は贈呈式出席のためにポーランドに渡りました。成田空港からオランダ・アムステルダム経由でチェコ・プラハに入り、翌朝、プラハから車で国境を越えてポーランドに入るというルートで向かいました。目的地のルバフカという市へは、首都ワルシャワから特急列車で移動するよりチェコ国境を越えた方が近いという判断からです。ルバフカ市は、人口約8,000人という小さな町。ロシア侵攻後、ウクライナからポーランド各地に家族、親族を頼って避難してきた方、また戦渦により家を失い、異国の地で定住を決断された方など、避難状況はそれぞれ異なっています。

日本のお土産をルバフカ副市長へ手渡す筆者(中央)

私がポーランドに調査に入った3年前、政府は戦争勃発からわずか1ヵ月で「ウクライナ国民支援法」を可決し、国民も積極的に避難民の受け入れに協力をしていました。最近では戦争の長期化により支援疲れの声も聞かれていましたが、訪れたルバフカ市内では、ウクライナの方々も支援を受けるだけでなく、大人は経済的自立に向け仕事に励み、子どもたちは将来の希望に向け学校に通っているとのことでした。式典当日、ルバフカ市長はじめポーランド共和国国会議員、各行政機関、日本大使館関係者等の出席もあり、賑やかに社会統合センターの贈呈式が行われました。

私は、贈呈式の挨拶の中でウクライナの民話『ミトン』注1(日本では『てぶくろ』というタイトルの絵本)を紹介しました。冬の森の中、あるおじいさんが落とした手袋にいろいろな動物たちが住むという内容で、式の挨拶には「この本が伝えたいこと。相手を受け入れる思いやりの温かさを強調し、また、違いを乗り越えてお互いを受け入れる優しさが表れています。ミトンのように社会統合センターが誰でも受け入れる施設になることを願います」と添えました。

今回、直接ウクライナから避難した子どもたちの声を聞くことはできませんでしたが、式典後のレセプションで、地元行政の方からの「ウクライナは歴史的にポーランドの影響を強く受け、語彙の共通点も多いため、避難してきた子どもたちは言葉を覚えるのが早く、地元の子どもたちとも仲良くやっていますよ」というコメントに少し安堵しました。それは、戦禍を逃れてこの地で暮らす子どもたちに、少しずつ温かい光が差しているようにも思えたからです。

※注1 『てぶくろ』のあらすじ:雪が降る森の中で、とあるおじいさんが片方の手袋を落としてしまいます。その手袋の中に、ネズミがやってきて「あたたかくて気持ちいい」と入り、住み込んでしまいました。これがきっかけとなり、カエルやウサギ、キツネやクマなど、あらゆる動物が手袋の中に次々と入っていったため、手袋はぎゅうぎゅう詰めとなりました。しまいには破けそうになりましたが、そこへ、手袋の持ち主であるおじいさんが、手袋を探しに戻ってきました。そのため、手袋の中にいた動物たちは、慌てて逃げ出しました。

シャンティ国際ボランティア会副会長 茅野俊幸

シャンティ国際ボランティア会
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