【シャンティ国際ボランティア会(SVA)たより】走れ東北! 移動図書館―東日本大震災から15年
あれから15年―。SVAは、2011年、東日本大震災の発災直後から現地入りし、2017年まで6年間、被災地の支援活動に取り組んだ。SVAが初めて国内で図書館活動を行ったのはこのときである。
図書館活動は、SVAが40年以上にわたりアジア諸国で取り組んできたもので、人間には身体の栄養ばかりでなく、心の栄養も必要であり、それをもたらす場として図書館がいかに重要であるか、活動を通じて揺るがぬ確信を得ている。
国内で初めての挑戦
東日本大震災の発災後ほぼ1ヵ月のころ、被災した皆さんの心のケアのためには、図書館活動が必要ではないかと考え、現地入りして図書館の被災状況を調査したが、ほぼ壊滅状態となっており、図書館の復興などは一番後回しになることが予想された。一方で現地の図書館員は活動再開を切望していた。そこで2011年7月、SVAとしては国内で初の図書館活動に踏み出した。岩手県陸前高田市を皮切りに、宮城、福島へと広げ、2017年の7月まで続けた。
アジアでの図書館活動は、困難な状況にある「子どもたち」が対象で、専門家の助力を得て「おはなし」や「絵本」を大切にした活動を展開している。そして識字率や就学率の向上を重視している点も特徴である。これに対し、東北での図書館活動では「立ち読み、お茶のみ、おたのしみ」というスローガンを掲げ、移動図書館車に本を積み、仮設住宅を巡回する移動図書館活動を実施した。仮設住宅の皆さんが自由に本を手にとり、日々の楽しみや励みになり、お茶を飲みながら心の交流の場になればと願ったからである。SVAのこれまでの図書館活動にはなかった方法である。
当初、主な利用者として子どもたちを想定していたのだが、いざ、ふたを開けてみると、むしろ中高年世代の方が多かった。比較的、仮設住宅に住む子どもたちの数が少なかったためでもある。「おはなし」や伝統文化の面にも配慮した。
「移動図書館は生きる希望でした」―一通のお手紙

2017年3月、宮城県亘理郡山元町で最後の巡回の日。一人の若い母親が私たちにお手紙をくださった。そこには移動図書館への熱い思いが綴られていた。次がその一部抜粋である。
「何もかも失った。希望がまだ見えないころ、気持ちの切り替えもできなかったころ、この移動図書館のおかげで、明るい、心待ちにする気持ちがもてました。それまでは『ああ、今日も一日終わった』と、今日を乗り越えることだけで、『明日』は、私の中に存在しませんでした。でも、『移動図書館が来る』と、カレンダーをもらってからは、『この日が楽しみ』と、思える気持ちが再びもてるようになったんです。うれしかった! 本が読めることはもちろん、リクエストにも答えてくれて、その上、皆さんとお話しをするとホッとするという三拍子! 仮設住宅を出てからも、その楽しみを失うことはありませんでした。(中略)皆さんと会えなくなるのがさびしいです。楽しいひとときをありがとうございました。すくわれました。一生忘れないと思います。本当に本当にありがとうございました」
このお手紙は私たちの宝ものである。私たちの活動に賛同してくださった図書館学の故小林卓先生(当時、実践女子大学准教授)によると、古代ギリシャの都市テーベにあった図書館の入り口には「魂の治療所(心の薬局)」という銘刻が掲げられ、今でもスイスのザンクト・ガレン修道院の図書館にこの言葉が掲げられているという。東北での活動を通して、私たちは「魂の治療所(心の薬局)」としての図書館の原点を発見したのだと思う。現在、能登半島地震の被災地でも図書館活動を行っている。本稿を目にされるころには、いよいよ移動図書館車が配備され、各地を巡回していることだろう。
シャンティ国際ボランティア会専門アドバイザー 大菅俊幸
シャンティ国際ボランティア会
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