【シャンティ国際ボランティア会(SVA)たより】メーソットへの訪問を通して〜難民キャンプ・難民子ども文化祭〜

2026.06.16

2025年11月、バンコクから国内線を乗り継ぎ長い陸路を経て、タイ・ミャンマーの国境地帯の都市メーソットに到着した。メーソットといえば、国際的な特殊詐欺の拠点としても一躍有名になった場所である。軍の検問所で通行許可をもらい、何度か検問を受けながらメーソットに入る。市井の人々の暮らしはのんびりとしていて、ショッピングモールには制服姿の女子高生たちがスイーツを楽しみながら、スマホでTikTokの動画を撮影していた。市中は厳しい検問を抜けてきたとは思えない、ありふれた日常に包まれていた。

しかし、そこからほど近く、徒歩で簡単に渡ることができる小川一本を隔てた対岸の数メートル先はもうミャンマーである。国境というにはあまりに簡素で、拍子抜けしてしまうほどの距離。対岸のミャンマーでは長年にわたる紛争や軍事衝突により、多くの人々が近隣国のタイやバングラデシュ、インドなどに難民として亡命し、祖国を追われて苦しい生活を余儀なくされている。

今回訪れたタイ・ミャンマー国境地帯の難民キャンプには、およそ9万人もの難民が暮らすといわれているが、国籍を持たず、正式に認定されていない難民までは把握できないとのことである。1984年に難民キャンプが設置され、SVAは2000年から活動を開始し、現在は7ヵ所の難民キャンプで15館の図書館が運営されている。

このキャンプ内で生まれ育った人々も多く、生まれてから一度もキャンプから出たことがないという人々もいる。そのような若者たちに祖国に戻りたいかと質問すると、ほとんどの人々が「帰りたくない」と言う。その理由を問えば「襲撃や略奪がいつ来るか分からない。親から聞かされたような恐ろしい思いはしたくない」という言葉が続く。「祖国に戻ることが幸せ」という単純な話ではなく、故郷を知らず難民にすら認定されない人々のアイデンティティや祖国の厳しい現状、まだ現地に残る人々への思いや葛藤など、複雑かつ困難な課題が幾重にも堆積している。そんな鬱屈してしまうような気持ちを一気に吹き飛ばしてくれたものがある。それが「難民子ども文化祭」の主役である子どもたちだった。ミャンマーには135を超える少数民族があると言われ、ここ難民キャンプにも言語や文化などルーツの違う少数民族が共に生活している。

難民子ども文化祭のステージ

夜のステージではキャンプに暮らす14の民族がそれぞれの民族衣装を身に纏い、長い練習を重ねた独自の舞踊を披露する。30名近い大所帯の民族から、わずか数名のマイノリティの民族まで、与えられた時間のステージを心から楽しんでいるように見えた。広場いっぱいに集まった観衆も多種多様な少数民族出身の難民たちであり、自分たちの民族だけでなく、すべてのステージに歓声と拍手を送っている姿には圧倒されるばかりだった。

私たち日本からの参加者も浴衣や法被の衣装を揃え、現地の図書館ボランティアの青年たちと共にステージの上で炭坑節と阿波踊りを披露した。「共に生き、共に学ぶ」、そのすべてがキャンプの中にあふれていると感じた。

その難民キャンプも次なる試練の渦中にある。トランプ政権の方針により、米国からの支援がストップし、全体の半数以上を占めていた予算がゼロになってしまう。また、タイ国内の労働者不足の問題から、政府が難民登録者への就労を認めるようになるなど、時代や政治という外的要因によって否応なく翻弄されてしまっている。そのような時代であり、環境だからこそ、次世代が自立していくための人道支援というものが求められている。

難民キャンプへの引き続きのご支援を何卒よろしくお願いいたします。

シャンティ国際ボランティア会常務理事 横山俊顕

シャンティ国際ボランティア会
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