ソナエルプロジェクト座談会

2024.03.15

曹洞宗SDGs推進委員会から提案している「ソナエルプロジェクト」という取り組みがあります。この活動をより良いものとし、宗門全体に広げるため、プロジェクトのモニターを募集したところ、複数の宗侶から応募がありました。今回は、モニターとして活動いただいた藤田さんと、この取り組みの原点である、お供え物セット『えこう』を運用している天台宗正光寺住職の西村さん、曹洞宗SDGs推進委員が座談会を行い、このプロジェクトの可能性について語り合いました。

―本日はお忙しい中、お時間をいただきありがとうございます。一昨年の10月27日に、天台宗正光寺住職の西村慈祐さんが行っている「えこう」という取り組みを取材させていただき、それをもとに曹洞宗SDGs推進委員会にて「ソナエルプロジェクト」という取り組みを開始しました。『曹洞宗報』や曹洞禅ネットで取材報告をしつつ、プロジェクトのモニターを募集します!と、呼びかけたところ、長野県検校庵副住職の藤田清隆さんをはじめ、複数の宗侶が手を挙げてくださいました。本日は、実際に取り組みに参加されてのお話をお聞きしたいと思います。

藤田師 ソナエルプロジェクトに興味を持つきっかけとなったのは、曹洞禅ネットに掲載された正光寺さまへの取材記事(令和5年2月10日掲載)です。記事を読んでこれだ!と思いました。私は副住職という立場なので自分で何かを決めていくということは難しいし、普段は勤めているので具体的に動けない。だから社会のために何かしたいけど、何もできないというモヤモヤがあった。しかし、この仕組みならば、お施主さまに理解してもらえれば誰でも簡単にできるじゃないかと、すごい仕組みを思いつく人がいるなと感動しました。やりたいと思ったときには既に、自分の頭の中でコツコツと考え始めていました。

検校庵 藤田清隆師

―モニター募集に手を挙げてくださった理由について教えてください。

藤田師 その当時は自分ひとりでやろうと思っていました。しかし、準備を進める中で勤務先の会計士さんにこのことを話したら、収益事業と判断されないようによく考えて進めた方が良いよと言われ、どうしたものかと困っていました。そのタイミングでソナエルプロジェクトのモニター募集を目にして、参加すればその辺の細かいところも聞けるんじゃないかと思ったのが理由です。その後、西村さんにその辺りの事情を教えていただき、取り組みを始めることができました。

―検校庵さまにおけるソナエルプロジェクトの活動の中では、何をお供えして、どこに届けているのでしょうか。

藤田師 うちではお米をお供えしています。曹洞禅ネットの記事を読んで、お米よりもおかずが必要とされていることは分かっていたんですけど、お施主さまからしたら「レトルトカレーをお供え物とします」といきなり言われると、多少なりとも抵抗感があるんじゃないかと思ったんですよ。

―確かにそうですね。お米の方が受け入れられやすそうですね。

藤田師 そうなんです。まずはお米から始めて、それ以降のことは半年間の動きと評判を見て決めようということでスタートしました。寄贈先は地元の社会福祉協議会(以下、「社協」という)です。実際に社協に届けて話を伺ったら、案の定、「お米だけでなくおかずもあると助かります」と言われました。今後は、「おかずが切実な需要なんです」とお施主さまにお伝えしながら、周りの反応も見つつ、段階的に変えていきたいと思っています。

―現在のお米の仕入れ先は、以前からお付き合いのあったお米屋さんでしたか。

正光寺 西村慈祐師

藤田師 実は全然知らないお米屋さんだったのですが、たまたまお米屋さんのお隣が曹洞宗寺院で、どういうお米屋さんか聞いたら「すごく信心深く、いつも棚経で回っているけどいい人たちだよ」と教えてくれたんです。なので、あまり不安なく頼みに行けました。ソナエルプロジェクトについてお話したら、2つ返事でご協力いただけることになって本当によかったです。

西村師 おお。いいですね。

藤田師 ソナエルプロジェクトに参加して実際に活動を始めてみると、法事の際のお供物に限らなくたって、実はなんでもいいということに気づき、面白いなと感じました。

西村師 そうなんですよ!

藤田師 ですよね。今度、施食会に参加される方に、特に新盆を迎える方には、お供物というよりはご自身の布施行として、お米や缶詰などの食品を持ち寄ってもらおうと思っています。お盆の機会を使ってお寺でフードドライブをやろうと。これは布施行ですからとお伝えして、ご自身の修行として持ってきてもらいたいんです。本堂に箱を設置しておいて終わったら社協に届ける。取り組みの可能性はいくらでもありますよね。

検校庵の「えこう米」

西村師 うちも地元の新聞なんかで取り上げていただいたりしていく中で、取り組みに対する理解や正光寺のイメージが、だいぶ地元で定着してきたように感じます。そんな中、先日嬉しいことがありました。正光寺の「えこう」は、元々3000円のセットと5000円の2種類のセットの用意があったのですが、しばらくしてから一般の寄付向けに2000円のセットを加えました。するとちょこちょこと、法事以外の方が寄付をしてくれるようになったんです。

藤田師 なるほど。

西村師 あと、初めてのことだったんですけど、先日、四十九日をやった施主家の高校生のお孫さんが、「えこう」セットに感銘を受けたと言って、自分のお小遣いから6000円分えこうを利用してくれたんですよ。嬉しいなぁと思いましたね。こんなことは初めてですし、滅多にないことだと思いますけど、広く知っていただいた結果だと思うので、やってきてよかったなと思います。

藤田師 それはすごいですね。

西村師 この取り組みに対する批判的な声があることも知っていますが、こうした思ってもみない反応があるとやりがいを感じます。良い情報の共有はどんどんやっていきたいですね。

正光寺の「えこうセット」

藤田師 私も勇気をもってモニター参加してみて、いろんなことに気がつけました。今は長野のお寺で副住職をしていますけど、私の出身は福島県。よその地域から入ったので、地元の人とのつながりはありませんでしたが、このソナエルプロジェクトは地域に関わる手段として非常にいいなと感じます。長野県の南信州地域で使われる方言なのですが、「あるを尽くす」という言葉があって、宴会の席で中締めになると「え~、宴もたけなわですが……それではあるを尽くしていただいて」など、「目の前に並んでいる料理を残さず、きれいに食べきって宴会を締めよう」という意味で使われています。その言葉には「そのときの全力を尽くす」という意味も含まれていると聞いたことがあります。それは目の前の食事がどのように作られ、どうやって準備されたのかなどを想像し、目の前にあるものへつくしていく姿勢のことだと思うんです。そうした文化が根付く地域だからこそ、お供え物一つとって考えてみても、地域への循環を想像できるから理解されやすいのではないかと考えています。

―私たちが西村さんに取材して感じた一番の良さは、地域に根差しに行かざるを得ないということでした。ソナエルプロジェクトを始めると、集まったお供物を必ずどこかに持って行かねばなりません。そうするとお持ちした先で「おかずになるものをください」と言われたりする。行かないと、現場では何に困り何を求めているか分からないですよね。「うちは米もおかずもあるんですけど手が足りないんです」と言われたならば、人手を増やすためにやるべき選択肢が増える。そういうのが回向、まわるということだと思うんです。回したほうがいいものを回すというのが仏教の教えと繋がっていると考えています。

藤田師 たしかに。私の場合、お持ちする社協の事務所が2階なんですけど、お米を20キロくらい抱えて上がっていくのは体力的にちょっとしんどい。でも抱えながら「これが功徳か」って思ったり(笑)。買いに行くときもそうですけど、届けに行くときも自分が回向の一部になっている実感がある。受け渡したときの喜ばれるお顔を見られること、法事でお施主さまにお願いしますと言われること、右を向いても左を向いても喜びを感じられるのはすごいなと思います。仕組みさえ準備できれば、あとは和尚が動くだけ。それがものすごくいい。もっと取り組むお寺さんが増えたらいいと思いますね。

西村師 様々な団体と繋がって思うのは、お寺ができることは何だろうと自分でずっと考えていることも大事だけど、お寺にこういうことをお願いしてみたいという外からのリクエストは、実はすごくあるということです。可能性も含めて。つながりが広がれば広がるほど、それをすごく感じます。うちのお寺は境内が広くないけど、やっぱりお寺は一般の事業所に比べればスペースもあるし、建物も使える。お寺が持っている潜在的な可能性というものが、すごくあるなと感じます。その中で、住職としての自分のアイデンティティってなんだろうなと考えたことがあります。住職っていろいろ捉え方がありますから。私はこれまでなかった「お寺を使って地域を回す人」という役割が自分の中で腑に落ちたんですよね。それを自分のアイデンティティにするようにしています。そうであれば、すごく何でもできる。「これやりすぎかな……」と不安に思うことがあっても、自信をもって活動できるようになったというのがありますね。あと以前、曹洞宗の研修会にお招きいただいたときにも話したのですが、とにかく自分が一番楽しむということを大事にしてます。いろいろやっていると疲れてしまうから。自分が楽しんでなおかつ、まわりも楽しめてみんなが喜んでもらえればいい。これまでは自分が楽しんじゃうと不謹慎で、ちゃんとやりなさいと言われてたかもしれないけど、今はまず自分が楽しむでいいんだと思うようにしています。

―そういう意味では、ソナエルプロジェクトは始める際にお金をかけるものではないし、和尚に時間と労力は多少かかりますが、楽しもうと思えればやりやすい取り組みになる気がします。藤田さんと西村さんのおかげでますます広めたくなってきました(笑) 私たちも、ソナエルプロジェクトを楽しみながらやっていきたいと思います。西村さん、藤田さん、本日はありがとうございました。

(聞き手/曹洞宗SDGs推進委員会乾 郁雄・本多 清寛)

〈編集後記〉
西村さんが様々な活動に取り組むにあたり、大切にしているのは「目先の利益を追わない」ことだそうです。もちろん檀信徒の皆さんの支えがあるからこそ言えることではありますが、お寺の活動を長い目で見ることができれば、お寺と関わる人とのご縁が広がり、そのご縁がいろいろな形で檀信徒の皆さんやお寺そのものに還元されていきます。

お寺という場が様々なことに活かされることになれば、地域の方々ともっとつながることができるはずです。現在、ほとんどの寺院は法事とお葬式で納められるお布施で護持されていますが、つながり方が多様化することで護持の方法も多様化すると考えられます。善いつながりは本当の意味でお寺を保持し、檀信徒の皆さまの心を護り、本尊さまの威光を増加させていくことになるのではないでしょうか。

西村さんの「お寺という存在を、自分自身が納得できるものにしていきたい」という葛藤や、藤田さんが感じている「何もできないというモヤモヤ」は、これからの活動の原動力となって、今後も様々な方とつながりながら、お寺の存在を輝かせていくのだと思いました。

プロフィール
天台宗正光寺住職 西村慈祐師 回向の理念をもとにいろいろなことにチャレンジしていきます。

詳しくはホームページをご覧ください。
https://www.facebook.com/suzumeshokoji
https://www.instagram.com/suzume.shokoji/

 

長野県検校庵副住職 藤田清隆師

ご法事の際にお供えする「えこう米」、長期保存可能なおかずと組み合わせた「えこうセット」、施食会に併せて「オボンフードドライブ」などの検校庵の活動について、詳しくはホームページをご覧ください。
https://けんぎょうあん.com/entry44.html